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多様な人の自由な表現が一堂に会する「ポコラート全国公募展 vol.10」。12月10〜25日、東京・千代田区〈3331 Arts Chiyoda〉にて開催
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「ポコラート全国公募展vol.10」のポスター

自由な表現の場「ポコラート」の全国公募展

年齢、性別、経験、障害の有無を問わず、創作活動を行うすべての人が、自由な表現の場をつくることを目指した全国公募展「ポコラート全国公募展 vol.10」が、3年ぶりに開催されます。

場所は、東京都千代田区に位置するアートセンター〈3331 Arts Chiyoda(アーツ千代田 3331)〉。会期は、2022年12月10日(土)~25日(日)です。

期間中は、作品制作者によるトークイベントや審査員が作品を語り合う審査員トーク、作品の説明を受けながら展示を回る鑑賞ツアーなど、創造性とエネルギーに満ちあふれた作品を深く味わうためのイベントも開催予定です。

選出された作品が並ぶ、ギャラリー内の様子
平面作品、立体作品、映像作品、ドローイング、漫画や文芸作品など、作家たちの自由で独創的なエネルギーに満ちあふれた作品が展示会場を埋めつくします。写真は2019年の「ポコラート全国公募展 vol.9」展示の様子

「ポコラート全国公募展」とは?

「ポコラート(POCORART)」とは、Place of “Core+Relation ART” の造語で、「障害の有無にかかわらず、人々が出会い、相互に影響し合う場」であり、その「場」をつくっていく行為を示す名称です。

2010年、千代田区の旧・練成中学校を改修したアートスペース〈3331 Arts Chiyoda〉の立ち上げと同時に、その取り組みが始まりました。

そして、〈3331 Arts Chiyoda〉と千代田区が共同主催となり、2011年にスタートしたプログラムが「ポコラート全国公募展」。作品の公募を通じて、人と人、人と作品、異なる感性が出会い、「人間」や「アート」について対話する場を目指しています。

当初は障害のある人のみを応募対象としていましたが、あらゆる人がともに成長できるオープンな出会いの場にするべく、2年目からは対象者を限らず、幅広く応募を呼びかけています。

「ポコラート世界展『偶然と、必然と、』」のポスター画像
2021年に開催された「ポコラート世界展『偶然と、必然と、』」

2021年には、ポコラート事業10周年を記念し、世界22か国の作家50名の作品を展示した「ポコラート世界展『偶然と、必然と、』」が開催され、〈こここ〉のニュース&トピックスでもご紹介しています。

119点もの作品を展示・発表する「vol.10」

コロナ禍により、2019年以来3年ぶりの実施となる「ポコラート全国公募展 vol.10」。

今回も、平面、立体、映像、ドローイング、漫画、文芸などの「作品部門」と、身体や音を使う表現や行為の蓄積など、形にならないさまざまな表現を展示・発表する「形にならない表現部門」の、ふたつの部門で作品を募集しました。

集まった作品数は、計602点。応募者の年齢は8歳から84歳まで、居住地は北海道から沖縄までと、幅広い層からの応募がありました。

7名の審査員による選考と、2022年10月に行われた応募作品一挙公開での来場者投票によって作品が選出され、「作品部門」から113点、「形にならない表現部門」から6企画、計119作品が本展において展示・発表されます。

vol.10の審査員である画家のO JUN(おー じゅん)さんが、作品を選出する様子
2022年10月に行われた審査員による選考会の様子。作品応募者は、福祉施設に通所する人、仕事の傍ら創作活動を行う人、定年退職後に芸術家を志した人など、バックグラウンドもさまざま

各賞も用意されており、審査員による【審査員特別賞】、千代田区長による【千代田区長賞】、来場者投票による【オーディエンス賞】を選出します。2023年初頭には、受賞者のグループ展も開催予定です。

過去には、本公募への出品をきっかけに若手作家の登竜門というべき芸術賞に入選したアーティストも。本展は、新人作家の才能発掘の場という役割も担っています。

本年度の審査員は? コメントも要チェック

審査員の面々も豪華な「ポコラート全国公募展」。本年度は、画家のO JUN(おー じゅん)さん、アーティスト・東京藝術大学学長の日比野克彦(ひびの かつひこ)さん、秋田公立美術大学教授・キュレーター・臨床心理士の西原 珉(にしはら みん)さんなどが審査員として迎えられています。さらに、2021年から千代田区長を勤める樋口高顕(ひぐち たかあき)さんも審査員のひとり。

花、人、物、そのいずれでもないもの。私たちが絵に描いたり造形するものは、私たち自身を繰り返しなぞる対象世界だ。これは愛なのか、それとも業なのか。審査会場を埋め尽くす表現を前にして、その発動を見る思いがした。それを見続けることも同じエネルギーが必要だ。私たちも作品から問われている。
―O JUN(画家)

 

自分にとっては6年ぶりとなるポコラートの審査。歴史も流行も関係ない作品なので、選ぶ側の目、基準、論理、感覚、愛(あるいは厳しさ)が試されるなあと、改めて感じた。そんな中、なぜだか今回はテキスト系の作品が気になったのだが、そうしたジャンルも受けとめるポコラートという場の大切さを、ひしひしと感じた。
―保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター)

 

「形にならない表現部門」では、人にとって表現とは何なのかという極めて大きな問いが、常に自分自身に突きつけられている様に感じる。
無為の行為から、自覚的・意図的な表現に至るまでの微妙なグラデーションを丁寧に辿ることによって、その答えが見つかることもあれば、並走しているもう一つの眼差しの存在こそが、それを表現たりえさせていることの大切さにも気付かされるのだ。
―大月ヒロ子(IDEA,INC.代表取締役)

作品をより堪能するためのイベントも見逃せない!

さらに会期中は、本公募の意義や「ポコラート」の魅力に深く触れる、さまざまなイベントも行われます。

12月10日(土)には、入選者の声が直接聞ける「アーティスト・トーク」を開催。作品制作者や関係者とともにギャラリー内を巡り、作品への思い、制作背景などに触れていきます。

作品の前で、制作者と手話通訳者が、観客に解説する様子
過去の「アーティスト・トーク」の様子

12月11日(日)には、審査員6名が本展の入選作品について語る「審査員トーク ポコラート会議」を行います。さらに、「Place of “Core+Relation ART”(POCORART)」はどんな場であったのか、これまでの10回の開催を振り返り、今後の在り方についても議論を交わします。

過去の「審査員トーク ポコラート会議」の様子
過去の「審査員トーク ポコラート会議」の様子。今回は、O JUNさん、日比野克彦さん、保坂健二朗さん、大月ヒロ子さん、西原珉さん、中村政人さんが登壇

また、鑑賞者それぞれの見方・感じ方を自由に伝えあう「ポコラート鑑賞ツアー」も開催予定。スタッフの案内で会場を巡り、参加者同士でおしゃべりしながら作品を楽しみます。開催日などの詳細は、公式サイトやSNSでチェックを。

今回がラストとなる、〈3331 Arts Chiyoda〉での「ポコラート全国公募展」

旧・練成中学校の建物をトレードマークに、あらゆる人の表現に寄り添い、アート企画や活動を行ってきた〈3331 Arts Chiyoda〉。千代田区の文化芸術施策の一環としてスタートし、同施設内で13年運営してきましたが、建物の老朽化に伴う大規模改修工事が決定となり、2023年3月31日(金)をもって千代田区と契約満了となることが発表されました。

これまで同施設内で行われてきた「ポコラート全国公募展」も、本会場で行われるのは実質今回が最後となります。

ぜひ本展に足を運び、〈3331 Arts Chiyoda〉の会場に並ぶ創造性あふれる多彩な表現を感じてみてください。