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小噺やピアノ演奏、哲学講演から”老い”の面白さを探求するイベント「老人性アメイジング!」vol.2を開催
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【画像】イベントチラシ。老人性アメイジング vol.2 寿ぎと分解
会場:東京大学 駒場 I キャンパス/主催:公益財団法人せたがや文化財団 生活工房

“老いと死”のイメージを更新する「老人性アメイジング!vol.2 寿ぎと分解」開催

「足が思うように動かない」「物ごとを覚えにくくなった」など、年を重ねるにつれて心身が変化すると、それまで慣れ親しんできた社会のルールや生活環境に適応しづらくなることがあります。高齢化率がまもなく30%を超えるこの社会で、そうした“老い”に対する、漠然とした不安を抱える人も多いのではないでしょうか。

​​“老い”や“死”は、生きていれば誰にでも平等に訪れるもの。しかし、現代の日本では必要以上にネガティブなものになっているのかもしれません。

そうしたイメージを前向きに更新するイベント「老人性アメイジング!vol.2 寿ぎと分解」が、2025年2月9日(日)と3月22日(土)に開催されます。東京・世田谷区の文化施設〈生活工房〉が主催するこのイベントでは、介護の小噺やピアノ演奏、哲学の講演など、多彩なコンテンツを通じて、「老いと死」のイメージを積極的に更新します。

【写真】ステージの上でクラシック楽器を手にする笑顔の4人と、その横に座る村瀬さん。奥にベートーヴェンの肖像画
前年度のイベント「老人性アメイジング!寿ぐ老いとベートーヴェン」の様子

お年寄りの姿を豊かなものと捉える「老人性アメイジング」

本イベントのタイトルにもある「老人性アメイジング」という言葉を提唱したのは、福岡市にある介護施設〈宅老所よりあい〉代表の村瀬孝生さんです。

村瀬さんが高齢者一人ひとりに寄り添う中で生まれたこの言葉には、老いの世界を生きるお年寄りたちの真面目で滑稽な姿を「豊かなもの」として、積極的に捉え直す思いが込められています。

【写真】トークイベントで、著書を前に話す村瀬さん
〈宅老所よりあい〉〈第2宅老所よりあい〉〈特別養護老人ホーム よりあいの森〉統括所長の村瀬孝雄さん

現代の高齢者のうち、約8人に1人の割合で発症している認知症では、「記憶障害」や、時間と空間のわからなくなる「見当識障害」など、認知機能の低下によってさまざまな症状が現れます。しかし、介護施設で認知症のある方たちと接する中で、村瀬さんはこれを「既成の時間や空間の認知から解放され、生身の実感から世界を捉えている」と捉えます。

若い頃のように仕事ができなくなったり、年を重ね一人での生活が難しくなったりしたとき、矯正や治療によって“普通”に戻ろうとするこれまでのアプローチにも限界が見え始めた現代。そんな中で、小噺・ピアノ演奏・哲学の講演・トークなど多彩なコンテンツを通じて“老い”への固定観念を解きほぐし、新たな人間観を考えていくために企画されたのが「老人性アメイジング!」です。

【写真】ステージの上で3人がトークをしている様子。左に村瀬さん、中央に伊藤亜紗さん

2024年の第1回は「寿ぐ老いとベートーヴェン」というテーマで開催されました。介護現場でのユーモラスな実話を交えながら、美学者の伊藤亜紗さんなどを交えたトークや参加者同士の対話を実施。そして、国内外の第一線で活躍するクァルテット・エクセルシオの生演奏と共に、ベートーヴェンが晩年に作曲した弦楽四重奏曲の魅力を紐解きつつ、作品の魅力や老いがもたらす豊かさを探求しました。

第1回の開催様子は、〈生活工房〉公式サイトにて記録動画が公開されています。興味のある方は、ぜひご覧ください。

「寿ぎと分解」をテーマにvol.2を開催

2025年は2月9日(日)、3月22日(土)の2日間、東京大学駒場Ⅰキャンパスにて「老人性アメイジング!vol.2 寿ぎと分解」が開催されます。

初日は「老いと寿ぎ」というテーマで、村瀬さんによる介護小噺と、坂本彩さん・坂本リサさんによるピアノ演奏を実施。西洋音楽の歴史を人の成り行きと見立てつつ、既存の音楽観を解きほぐし、老いゆくことの悲喜交々や不可思議さが寿がれるあり方を探ります。

【写真】グランドピアノの前に座る2人の女性
坂本彩さん・坂本リサさん(ピアニスト)

2日目は「死と分解」というテーマで、村瀬さんと、『分解の哲学』などの著者である藤原辰史さんがゲストに登壇。村瀬さんの老いに対するスタンスは、自然循環に基づいた死生観がベースになっているといいます。当日は、それを分解という視点から紐解き、“老いと死”のイメージを捉えなおします。

2日間の進行は、〈一般社団法人大牟田未来共創センター〉の理事である山内泰さんが担当します。

【写真】生い茂る植物の前に佇む男性
京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史さん。歴史学者。研究テーマは食と農の現代史
【写真】テーブルに手をつく男性の横顔
進行を務める山内泰さん。〈一般社団法人大牟田未来共創センター〉理事

本イベントは、介護小噺や演奏、哲学を通じて、自分が老いる姿を想像するのがまだ難しい世代にも、老いが身近に感じられるよう企画されています。既存の人間観への拘りを解きほぐし、より包括的で自由な人間像を模索してみる経験は、年を取ることに対する漠然とした不安や恐怖が和らぐきっかけになるかもしれません。興味のある方は、ぜひご参加ください。