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知的障害のある人の日常音を届ける。〈ヘラルボニー〉のサウンドプロジェクト「ROUTINE RECORDS」の展示が〈金沢21世紀美術館〉にて開催中
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〈ヘラルボニー〉の新プロジェクト「ROUTINE RECORDS」が〈金沢21世紀美術館〉に登場
知的障害のある人々の日常音を「音楽」を通じて社会へ届け、体験者に認識の変化を促す新感覚のサウンドプロジェクト「ROUTINE RECORDS(ルーティン・レコーズ)」の展示「lab.5 ROUTINE RECORDS」が、〈金沢21世紀美術館〉にて2022年10月から始まりました。
主催は福祉実験ユニット〈ヘラルボニー〉。本企画展は、〈金沢21世紀美術館〉の「〈lab.〉シリーズ」の第5弾として2023年3月21日まで開催されます。
知的障害のある人の日常の音を音楽へ
本企画展を主催する〈ヘラルボニー〉は、「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット。福祉施設に在籍する知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、福祉を起点に新しい文化創造を目指して、ファッションアイテムやインテリアなどのアートプロダクトの制作・販売、建物や電車をラッピングし街を彩るアートプロジェクトなどを展開しています。
そんな彼らが新たに立ち上げたプロジェクトが「ROUTINE RECORDS」。知的障害のある人々の日常音を社会へ届けることを目指しています。
〈ヘラルボニー〉を手がける松田崇弥さん、松田文登さんの4歳上のお兄さんである翔太さんは、知的障害を伴う自閉症があります。「ん〜」「さんね」「な〜い」「し〜んかんせ〜ん」など翔太さんが発する言葉が今回のプロジェクトのヒントになったと二人は話します。
「自宅で聞こえてくる謎で愛おしい環境音は、外出先では奇異の目に晒される音に変貌を遂げる。これは兄だけに限った言動ではない。知的障害のある人の、自閉症のある人の、不思議な行動特性でもあるのだ」(松田崇弥さん、松田文登さん)
〈金沢21世紀美術館〉の「〈lab.〉シリーズ」の第5弾として登場
「lab.5 ROUTINE RECORDS」は、〈ヘラルボニー〉にとって、初めての北陸地方での活動であり、初の美術館展示になります。
会場では音楽の視聴コーナーや、鑑賞者がルーティンによって生まれた音をリミックスし、新しい音楽を制作できるDJブースなどを設け、聴取した音が音楽となる創造的なプロセスを多角的に体験することが可能です。
こうしたプロセスも公開する試みは、2017年から〈金沢21世紀美術館〉が実施してきた〈lab.〉シリーズによるものです。
〈lab.〉シリーズは、〈金沢21世紀美術館〉デザインギャラリーを作品展示の場所としてだけでなく、調査・研究・実験の場として開きつつ、そのプロセスをプレゼンテーションすることを目的にしたもの。「lab.5 ROUTINE RECORDS」では、金沢市内の特別支援学校や福祉施設、他県の福祉施設に通う知的障害のある人にも協力いただき、彼らのルーティンから生まれる音を丁寧に紡ぎ、音楽として届けます。
知的障害のある人の日常から生まれた音体験できる3つの仕掛け
本展は3つの要素から構成され、鑑賞者は会場を一周することで知的障害のある人の日常から生まれる様々な音や環境について知ることができます。
一つ目の要素は「音の生まれる環境について」。繰り返し行動をする人の日常で生まれた「音」や「言葉」として聞くことができるコーナーを設けています。
二つ目が「ルーティン音から生まれた楽曲や映像の視聴ブース」です。各地から集められたルーティン音をもとに、プロの音楽家が楽曲を制作。それらを映像とともに視聴できるブースもあります。
三つ目は会場中央に設置された「DJブース」。音楽を構成するルーティン音が生まれた背景や特徴、制作された音楽の視覚体験が可能で、鑑賞者自身が様々なルーティン音を組み合わせて、自由に作曲できる場所が設けられています。
〈京都ふしみ学園 アトリエやっほぅ!!〉の利用者・勝山雄一朗さんは、椅子に座りながら身体を前後に揺らすルーティンがあります。パイプ椅子が床に擦れ、大きな音が鳴る様子を収めたものが「ROUTINE #001 SWING ON CHAIR」として紹介されています。
〈lab.〉シリーズは過去4回開催されてきました。最先端の死の研究所とコラボして宗教や民族や家族を超える新たな追悼の形を問うたlab.3「DeathLAB:死を民主化せよ」、都市や景観デザインの手法「Space Syntax(スペースシンタックス)」によって空間レイアウトと私たちの行動との関係を探ったlab.4など、美術館の新たな可能性を切り拓いています。
会期最終日の3月21日は「世界ダウン症の日」、手話通訳を取り入れたクロージング・パフォーマンス&トークも予定されています。特設サイトでも会場で展示される音源の一部を公開しているとのこと。会場で、ご自宅で、この機会に新しい音楽体験をしませんか。
information
lab.5 ROUTINE RECORDS
会期:2022年10月1日(土)〜2023年3月21日(火・祝)
休場日:月曜日(ただし10月31日、1月2日、1月9日は開場)、11月1日(火)、12月29日(木)~1月1日(日)、1月4日(水)、1月10日(火)
開場時間 :10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
会場:金沢21世紀美術館 デザインギャラリー(〒920-8509 石川県金沢市広坂1丁目2−1)
料金:無料
主催:金沢21世紀美術館(公益財団法人金沢芸術創造財団)
助成:文化庁 令和4年度文化芸術振興費補助金(Innovate MUSEUM事業)
Information
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Profile
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へラルボニー
株式会社
「異彩を、 放て。」をミッションに掲げる、福祉実験ユニット。日本全国の主に知的な障害のある福祉施設、作家と契約を結び、2,000点を超える高解像度アートデータの著作権管理を軸とするライセンスビジネスをはじめ、作品をファッションやインテリアなどのプロダクトに落とし込む、アートライフスタイルブランド「HERALBONY」の運営や、建設現場の仮囲いに作品を転用する「全日本仮囲いアートミュージアム」など、福祉領域の拡張を見据えた多様な事業を展開しています。これらの社会実装を通じて「障害」のイメージ変容と、福祉を起点とした新たな文化の創造を目指します。社名である「ヘラルボニー」は、知的障害のある両代表の兄・松⽥翔太が7歳の頃⾃由帳に記した謎の⾔葉です。「⼀⾒意味がないと思われるものを世の中に新しい価値として創出したい」という意味を込めています。