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ビッグイシュー・サポートライブ「りんりんふぇす山谷」が4月27日(日)開催。寺尾紗穂+ソケリッサ、坂口恭平らが出演
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イラストレーター・本秀康さんによる「りんりんふぇす」のメインビジュアル。中央でギターを弾くのはイメージキャラクターのりんりんくん

音楽を通じて、孤立している人たちの存在を知る

何かと慌ただしいこの季節には、自分の周り以外のことを考える余裕がなくなってしまいがちです。でも、そんな季節だからこそ、少し足を止めて周囲や遠くを見渡してみる時間が必要なのではないでしょうか。2025年4月27日(日)、シンガーソングライターで文筆家の寺尾紗穂さんを発起人とした、雑誌『ビッグイシュー』を応援する音楽イベント「りんりんふぇす山谷」vol.12が東京・山谷の玉姫公園にて開催されます。

雑誌『ビッグイシュー』は、ホームレス状態にある人たちが販売人となって雑誌を販売することで雑誌の価格の半分以上を報酬として受け取ることができ、彼らが生活を立て直すための手段となるものです。

2010年にスタートして以来、様々なアーティストによる公演が行われてきた「りんりんふぇす」。今年は、路上生活経験者たちで構成されたダンスカンパニー・新人Hソケリッサ!と寺尾さんとの共演に始まり、建築家であり、作家、画家、音楽家でもある坂口恭平さんや、シンガーソングライターのよしだよしこさん、モンゴルのエスノエレクトロニックバンド・Delkhii (デルヒー)、陰絵師・音楽家の川村亘平斎さんによる影絵芝居がステージを彩ります。

※出演者のDelkhiiは諸般の事情のため、出演キャンセルとなりました。それに伴い、冬にわかれての出演が決まりました。(2025.4.17追記)

隣にいる人たちとの輪をつくる

元日雇い労働者で画家の坂本久治さんとの出会いにインスピレーションを受けて作られた歌「アジアの汗」。ミュージックビデオには、坂本さんの描いた数々の絵画が登場する

雑誌『ビッグイシュー』をより広く、多くの人々に知ってもらうことで、ホームレス状態にある人たちの存在や彼らの抱える問題を少しでも身近に感じてもらうことを目的にスタートした「りんりんフェス」。“りんりん”という名称には、“隣”の人と “輪”になろうというメッセージが込められています。

発起人である寺尾さんが「りんりんふぇす」を始めようと考えたそもそものきっかけには、ある男性との出会いがありました。当時学生だった寺尾さんは、山谷の夏祭りにて、元日雇い労働者で絵描きの坂本久治さんと出会います。坂本さんとの出会いを通じて、路上での生活を余儀なくされる人たちについてもっと知りたいと思い、『ビッグイシュー』を手に取りました。

さらに2010年には、坂本さんとの出会いと、出会いの5年後に訪れた彼の死をもとにして「アジアの汗」という歌が作られました。この歌のミュージックビデオを制作する際に、寺尾さんは〈NPO法人自立生活サポートセンター・もやい〉を訪れ、創設者の稲葉剛さんと出会います。『ビッグイシュー』を広める音楽イベントを継続的に開催したいと考えていた寺尾さんは、稲葉さんから『ビッグイシュー』と浄土宗の若手僧侶らによる仏教系ボランティア団体〈ひとさじの会〉を紹介してもらい、2011年には青山にある浄土宗の寺院〈梅窓院〉にて「りんりんふぇす」の開催に至ります。

その後、青山での開催は10年間続き、コロナ禍での中止などの紆余曲折を経て、昨年2024年には山谷・玉姫公園に会場を移して再開されました。玉姫公園で行われるのは今年が2回目となりますが、今後は、寺尾さんと坂本さんとの出会いの場となったこの公園で10回開催することを目標に掲げています。

山谷という街を舞台に開催される、12回目のりんりんふぇす

明治通りの泪橋交差点を中心に、台東・荒川の両区にまたがって広がる簡易宿所(ドヤ)の密集地域が山谷地域と呼ばれます。高度経済成長期には、日雇い労働者の人々で活気に満ちていた山谷ですが、不況や産業構造の変化に伴って日雇い労働市場が縮小した現在、高齢者となった彼らの多くが、生活保護を受給しながらドヤで暮らしています。さらに、少なからずの人たちがそれすら叶わず、路上生活を余儀なくされています。今回の会場となる玉姫公園は、そんな人たちにとって心身ともに拠り所となっています。

イベントでは、炊き出しとして、在日ベトナム仏教の尼僧さんと信者の方々によって焼きフォーや温かいコーヒーが振る舞われるほか、『ビッグイシュー』の最新号・バックナンバー、アーティストおよび協力団体のグッズ、フランクフルトやパン、アフリカ料理といったフードの販売も行われます。

また、今回の開催から入場料は「自由価格」となり、払う金額を自分たちで決めるかたちになります。野外での開催であると同時にイベントでは傘の使用が禁止されているため、レジャーシートのほか、雨天に備えてレインコートなどの雨具を持参することが推奨されています。

【写真】りんりんふぇすのすてーじで、てらおさほさんがライブをおこなっているようす
昨年、山谷で開催された第11回のりんりんふぇすの様子

希望を失わないためにつながり続ける

公演の合間には、地元の人たちを交えてのカラオケタイムが行われるほか、寺尾さん、稲葉さん、認定NPO法人〈山友会〉副代表・油井和徳さん、〈ひとさじの会〉事務局長で浄土宗光照院住職・吉水岳彦さんがパネラーを務める座談会も行われます。ゲストには、写真家で山谷の映画喫茶「泪橋ホール」店長・多田裕美子さん、画家の弓指寛治さんらを迎え、「わたしが見た山谷」というテーマでトークを繰り広げます。

ホームレス状態になる経緯は、人それぞれです。ある人は仕事を失って。ある人は借金や奨学金等、債務の問題で。自身の抱える病気や障害によって。あるいは家族との離別や介護離職が原因で。災害に被災して、という方もいらっしゃいます。

何がきっかけになるのかは違っていても、共通しているのは、問題が起こったその時に、頼ったり、相談できたりする人や場所、または機会がなかった、ということです。人は仕事と住まいを失うだけでは「ホームレス」になりません。人とのつながりや希望を失って孤立した時、hopelessになりhomelessになると、私たちは考えています。

〈ビッグイシュー基金〉のサイトには、このような記述があります。ホームレスや貧困にまつわる問題は一朝一夕に解決できるものではありません。それでも、一人ひとりが小さなつながりをつくることがこの複雑な問題を解きほぐすための一歩となります。このイベントに足を運んで、隣にいる人たちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?