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外国人住民の“困りごと”を気軽にサポート! 単発支援のマッチング「スポットおとなりさん」
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【イラスト】単発支援のマッチング「スポットおとなりさん」のキービジュアル。さまざまな容姿の人が、書類や申請などの困りごとを言葉にしている

医療、教育、行政手続きなどをサポートする〈アジア人文文化交流促進協会〉の新プログラム

日本で生まれ育った私たちにとっては簡単なことでも、海外から移住してきた人々にとっては大きなハードルになることがあります。例えば、ちょっとした電話での問い合わせや、書類手続きなど。母国語ではない言語で対応しようとすると、翻訳アプリがあっても内容を正しく理解できず、想定以上に時間がかかったり、結局解決できなかったりすることもよくあります。

2025年2月、〈特定非営利活動法人アジア人文文化交流促進協会(Japan Intercultural Intelligence)〉は、外国人住民の日常の困りごとを地域のボランティアが支援する新事業「スポットおとなりさん(SOFP)」を東京都で開始しました。外国人住民にとって時間や労力のかかる医療、教育、行政の手続きなどの日常生活の支援を、地域ボランティアが単発でサポートできるしくみです。

それぞれの文化を大切にしながら困りごとを解消する「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム」

2010年10月に設立された〈アジア人文文化交流促進協会〉は、多様性を活かした「文化共生」の実現を目指す団体です。異なる文化を尊重し合いながら、共に生きることで、誰もが暮らしやすい社会を築くことを目指し、外国にルーツのある方の「暮らしの相談」や「就職支援」「難民・避難民支援」などを実施しています。

2020年には、半年間のコミュニケーションサポートプログラム「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム(OFP)」を開始。このプログラムには、子育て家庭や会社員、妊婦、留学生、ALT(外国語指導助手)、難民・避難民など、多様な外国人住民が参加しています。日本人ボランティアとの交流を重ね、累計申込者数は1,400人を超えました。

同団体がOFPを立ち上げたきっかけは、外国人住民向けに勉強会や相談会を開催するなかで、困りごとの90%以上が、実は「園や学校からの配布プリントが読めなくて困っている」といった専門的な知識を必要としない内容であること、日本でのルーツがあれば日常生活の経験で対応できると分かったことでした。

さらに、決まった時間や場所で行われる相談会では、「必要なときにすぐ相談できない」という課題も浮かび上がりました。こうした背景を踏まえ、外国人住民と日本人ボランティアをコーディネーターのサポートのもとマッチングし、日本の生活について学んだり、地域活動やイベントに参加したりしながら、6カ月間にわたり一対一の交流を深めるプログラムが生まれました。

【イラスト】OFPのしくみ。ボランティアのおとなりさん、外国人参加者、コーディネーターの3者が相互に関係を結ぶ

参加者からは、「文化を紹介し合えるのが楽しい! 日本の生活や言語についても親切に教えてもらえるので、とても助かっています」「弁当の中身が宗教上食べられるか分からないときに、気軽に質問できたので助かりました」といった声が寄せられています。

現在、首都圏を中心に、外国人ママや社会人、留学生、難民・避難民など40カ国以上の外国人住民が参加しており、500人以上の「おとなりさん」ボランティアが活動しています。

【写真】巣鴨の商店街の前で笑顔で立つ、国籍の異なる老若男女。

日本での生活にスムーズに馴染むよう短期と長期で支援を実施

一方で、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、〈アジア人文文化交流促進協会〉ではウクライナ避難民に対して、行政手続きや書類記入、来日後の住環境の整備、子どもの入学や医療などの“スポット”での支援を行う機会が増えてきました。すると、これは難民・避難民だけ必要なことではなく、他の外国人住民にも同様の支援が必要であることが明らかになり、今回SOFPを正式なサポート活動として開始することになりました。

SOFPの仕組みは、外国人利用者がコーディネーターに依頼し、どのような支援をボランティアに希望するかを伝えるところから始まります。その後、保育園の申込書類の記入、物件探し、園や学校の面談への同行など、さまざまなサポートが提供されます。

また、OFPと同様に、専任のコーディネーターや専門家がネットワークしてサポートしています。「おとなりさん」だけでは対応が難しい問題や専門知識が求められる場合は、コーディネーターが「おとなりさん」に代わって課題を引き受け、必要に応じて専門家チームと連携できる仕組みになっています。

【イラスト】SOFPのしくみ。利用者とおとなりさんの間にコーディネーターが入り、単発アクションを支援する

OFPは、長期的かつ継続的な支援を通じて、日本の生活や文化、習慣に慣れ、自信を持ってもらうことを目的としています。

一方、新たに始まったSOFPは単発的な支援を行い、生活インフラ、医療、教育、福祉など、日常生活に欠かせない分野でのサポートをします。開始にあたり、2024年12月に〈アジア人文文化交流促進協会〉が実施した応援寄付キャンペーンでは、54名から約100万円の寄付が集まりました。

【イラスト】スポットおとなりさんとOFPの違い。前者は短期で単発的な支援であるのに対し、後者は長期で継続的な支援になっていることがわかるようになっている

OFPは、外国人住民が日本での生活に慣れるだけでなく、日本人住民との信頼関係を築くきっかけにもなります。とはいえ、日本人ボランティアとして6カ月間活動を続けることに不安を感じる方も場合もあるでしょう。

そのような方は、まずはスポットの支援が可能なSOFPから始めてみてはいかがでしょうか。単発的な関わりの中から、まちの見え方が少しずつ変わっていくかもしれません。

日本に暮らす外国人住民が増えていますが、外国人同士だけで助け合って暮らせればいいという考えではなく、外国人住民にとっても開かれる日本社会を実現することを〈アジア人文文化交流促進協会〉は大切にしています。そのためにも、外国人住民が日本人と気軽に関わり合える環境を整備し、様々な機会を通して楽しい関係を一緒に築き、協力して社会を作り、共に暮らしていくことを理想に掲げて活動に取り組んでいます。

今後は、OFPとスポットおとなりさんの活動をさらに広げるためにも、自治体や企業、教育機関との連携を強化していく予定です。