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インクルーシブな学びを美術館でひらく「“分けない”アートの学び展」が群馬県富岡市で11月1日まで開催中
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展覧会のチラシ
2026年9月5日(土)〜11月1日(日)まで、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(群馬県富岡市)で開催されています

誰もが表現し、感じ、共に学ぶ公共の場をつくる

年齢や性別、障害の有無などに関わらず、さまざまな人が等しく機会を与えられ、参加できる社会を目指す「インクルーシブ」という概念。広く浸透しつつありますが、実際に違いによって分けられることなく、ともに学び、体験できる場をつくるために、私たちにはどんなことができるのでしょうか?

インクルーシブな場をつくることを目指した展覧会「“分けない”アートの学び展 アートインクルージョンの練習問題」が2026年9月5日(土)から11月1日(日)まで、〈富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館〉(群馬県富岡市)で開催されています。

本展は、美術教育研究者、美術教員、アーティストが集まり、インクルーシブな学びを、美術館という場で開くことを試みるイベントです。「あそびと学び」「表現と鑑賞」「障害のある人とない人」「アートとサイエンス」といった境界を分けずに、誰もが表現し、感じ、共に学ぶ公共の場をつくることを目指し、展示やワークショップのほか、シンポジウムや講演会なども開催されます。

子どもたちが牛のイラストが描かれた帽子をかぶって遊んでいる
《mou mou ushi ★ san》ぐんびけん

「分けない」をコンセプトにした展覧会

本展を企画する「アートの学び展実行委員会」は、図工美術教育者や研究者、アーティスト、学芸員、エデュケーターなど、さまざまな立場で「アートの学び」に関わってきた人々で構成されたチームです。

発起人である、群馬大学名誉教授・跡見学園女子大学教授の茂木一司さんの「アートは共生社会構築の基礎になるべきだ」という思いを、美術館という場で展覧会としてつくる試みとしてスタートしました。

「美術教育」ではなく「アートの学び」としたのは、もはや学校の中だけで美術を学ぶことは難しいと茂木さん自身が感じているから。教育だけではなく、医療、ビジネスの現場、ケアやコミュニケーションの力でアートによるインクルージョンを体験し、子どもたちが将来の文化の担い手として育つことを期待して、今回の企画が立ち上がりました。

男性二人が設営風景を前に、こちらを向いて並んで立っている
元美育文化誌編集長の穴澤秀隆さん(左)と発起人の茂木一司さん(右)

展覧会のコンセプトは「分けない」。アートによるインクルージョンの力で、個人と社会をつなぎ直す練習をすることを企画の中心に据え、表現する人と鑑賞する人、障害のある人とない人、アートとサイエンス、といった境界を分けずに、誰もが表現し、共に学ぶ場を目指します。

美術教育の歴史から遊びまで、3部で構成された展覧会

本展は3部で構成されています。

第1部は、現在のアート教育がいつどうしてできたかを戦後の歴史から見直す「自由と創造のアート教育史」です。見本を模写する絵画学習法(臨画)から始まり、戦後の民間美術教育運動を経て、「造形遊び」が登場した歴史。さらに子ども主体の探究的な学習法に変わっていこうとしている近年の実践も紹介しながら、アートの学びのこれからを考えるヒントを得ます。

作品や書籍が並んだ展示風景
「自由と創造のアート教育史」の展示風景。歴史の解説とともに、子どもの作品や書籍も並びます

小学校教員を務めながら〈カマクラ図工室〉主宰する高松智行さんによる《呼吸する教室》では、横須賀市立明浜小学校の通級指導教室「ことばの教室」の実践をもとにした環境を、美術館に再構成します。「できる/できない」や適応を急ぐ価値観から距離を起き、子どもたちがアートによって回復していく実践を、ぜひ体感してみてください。

教室の机とイスや習字、制作物などが並べられた展示風景
《呼吸する教室》の展示風景。子どもたちの書き殴りの習字や、過ごす中で生まれた造形物によって教室が再現されます

その他にも、幼児から高齢者まで身体を使って遊べる体験型メディアアート作品、目の見えない人や見えにくい人と一緒にアニメーション制作を楽しめる装置、千葉盲学校の児童生徒がつくった粘土作品の展示、福祉事業所によるワークショップなども開催されます。

スクリーンにハート型が映り、その前に車椅子に座った人と、立っている人が向き合っている
古川聖《Bubbles》では、いろいろな絵でメディアアートのインスタレーションを楽しむことができます

第2部は「福沢一郎のつくりかた・まなびかた」として、会場である〈富岡市立美術博物館〉にコレクションされている福沢一郎作品にスポットライトを当てます。富岡市出身で、日本におけるシュールレアリスムの紹介者として文化勲章を受賞した画家の福沢一郎さん。福沢一郎作品へのオマージュとして制作された開発好明さんの絵画展示や、子どもたちが描いたコラージュ絵画の展示などを行います。

イラストが壁一面に貼られている展示の様子
「福沢一郎のつくりかた・まなびかた」の展示風景

第3部「アートのアソビ場」では、学校連携プログラムに多く関わる作家・塩川岳さんによる、繭をモチーフにした作品「繭型エアドーム」と、ビー玉を上から転がして遊ぶ「サイクル」が出展。その他にも、図工美術科教育の教材開発などを通した実践を研究する群馬大学の卒業生グループ「ぐんびけん」によるワークショップなど、遊びを体験できるコーナーです。

ドームの中で子どもたちが両手を挙げて走っている様子
塩川岳《繭型エアドーム》 中に入って遊ぶことができる
左:郡司明子/椎橋げんき《色の森》毛糸玉を投げたり、からげたりして遊ぶ 右:クワクボリョウタ《色の鋳型いがた》光の三原色の混色を使った遊びで、積み木の影の重なりが不思議な世界をつくる

展示期間中の週末には、「アートの学び」をテーマにしたワークショップや座談会、シンポジウムなども多数開催されます。イベントはいずれも参加無料ですが、観覧券が必要。また、ほとんどすべてのイベントで事前申込みが必要なため、申込みフォームをご確認ください。

観覧するだけではなく、鑑賞者自身も参加し、共に考える展覧会。この展覧会こそが「分けない」インクルーシブな場をつくる練習となっているようです。ぜひ美術館を訪れ、アートの学びに触れながら「分けない」場を共につくってみませんか?