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異なる「ルーツ」持つ人たちの15の対話から構成。書籍『あなたのルーツを教えて下さい』が発売
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書籍『あなたのルーツを教えて下さい』発売
2022年2月、書籍『あなたのルーツを教えて下さい』が〈左右社〉から発売されました。著者は安田菜津紀さん。入管問題やヘイトデモなど、日本社会に存在する分断について考えるために、「ルーツ」に焦点をあてた15の対話が収録されています。
15人のルーツと向き合ったルポルタージュ
本書はフォトジャーナリストである安田菜津紀さんが、一人ひとりのアイデンティティと向き合い、それぞれのルーツについてたどった渾身のルポタージュです。ベトナムから難民として逃れ命がけの旅をした人、出身国の異なる人が集う多文化な街を守ろうと声をあげてきた人、15年かけて日本で寿司屋を開いたミャンマー生まれの人など、さまざまなルーツを持ちながら日本社会で生きる人々の姿を捉えた15章から成ります。
そもそも、安田さんが本書を執筆することになったきっかけは、安田さんの父親が在日韓国人だったことから。しかも、安田さんは父親が亡くなった中学2年生まで、その事実を知らなかったといいます。また、「どう受け止めていいか分からず、ただただ自分のアイデンティティの前で立ち止まってしまった」とも。
安田さんは、本書のはじめに収録されている「なぜ、父は自身の『ルーツ』を隠してきたのか?」で、このように語ります。
「私は長らく自分のルーツについて、表立って語ることがありませんでした。それは、『自分に差別の矛先を向けられたくない』という思いからというよりも、自分の一端に“当事者性”があるとするまで、差別への感度が鈍いまま、無自覚だった自分への後ろめたさからでした」
本書では、安田さん自身が己のルーツやアイデンティティを考えるところから出発し、取材をした人々のさまざまな人生の軌跡が綴られていきます。
「異なる『ルーツ』を持つ人たちが、どう同じ場を分かち合っていくのか。その模索のはじまりは、人との手触りのある対話です。コロナ禍で、人が集ったり、たわいもない会話を楽しんだりするひと時はぐっと減ってはいるものの、それに近い感覚を、どうメディアを通して築いていくことができるのか、ずっと考え、一冊の本を編むことを思い立ちました」
言論サイト「論座」の連載が書籍化、書き下ろしも2本収録
本書は、〈朝日新聞社〉の言論サイト「論座」にて2020年4月より連載している記事を元に書籍化されました。また、今回新たに2本の書き下ろしを収録しています。
書き下ろし1本目は、2021年3月、名古屋入管内で亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんについて。なぜ彼女は命を奪われなければならなかったのか。彼女が生きてきた証をたどろうと、故郷スリランカでの取材を敢行。スリランカの実家を訪れ、ご家族にも生前の話を聞きながら、入管問題について考えます。
2本目は、ヘイトに抗い、「ともに」を掲げ続けてきた川崎・桜本にある多文化共生施設〈ふれあい館〉への取材した内容です。〈ふれあい館〉で開かれている「ウリマダン」は、教育を受ける機会を逸して、日本語の読み書きができず孤立しがちだった在日一世のために開かれた識字学習の場が前身。
今では、高齢化した在日二世、戦後に韓国から渡ってきたニューカマー、南米にルーツのある高齢者など、さまざまなルーツをもつ人々の拠点になっていて、ヘイトとも闘ってきました。それぞれのルーツを持つことで受けてきた差別や偏見。それらを当事者の語りから描き、ヘイトデモやヘイトスピーチについて考えていきます。
ルーツから考える、本当の豊かさとは?
自身のルーツを開示するところからはじまり、さまざまなルーツを持つ15人に取材したエピソードからなる本書。取材を通して安田さんは「ルーツを隠さなければならない社会は、決して『豊か』とは言えない」と感じたといいます。
「社会的マイノリティに対して、『認める』『配慮する』などの言葉が用いられることがありますが、そんな上から目線の言葉以前に、この社会はすでに多様です。その色彩の豊かさを、この本から感じてもらえれば本望です」と安田さん。
本書を通して「ルーツとは何か」を紐解きながら、異なるルーツを持つ人たちが共に生きる社会について考えてませんか?
information
書籍『あなたのルーツを教えて下さい』
著者:安田菜津紀
出版社:左右社
発売日:2022年2月5日
価格:1,980円 (税込)
Webサイト:書籍ページ、朝日新聞「論座」連載ページ
お問合せ:左右社
info@sayusha.com(担当 筒井)
<著者情報>
安田菜津紀(やすだ・なつき)
1987年、神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『それでも、海へ 陸前高田に生きる』(ポプラ社)、『写真で伝える仕事 ―世界の子どもたちと向き合って―』(日本写真企画)他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。