福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

はなたばがとうめいのガラスのかびんにはいっていいる

こここなイッピン

季節のブーケ〈アプローズ南青山〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

今回のイッピンは、〈アプローズ南青山〉が営むフラワーショップ〈BISTARAI BISTARAI(ビスターレ・ビスターレ)〉の「季節のブーケ」。ゆっくり時間をかけてつくり、受けとった人もゆっくり楽しめる花束をご紹介します。

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ゆっくり楽しむ。小さな森のようなブーケを贈り物に。

はなたばがふたつ、とうめいのガラスのかびんにはいっていいる

表情豊かなグリーンに囲まれ、色鮮やかな花と実が引き立つ。

その日受け取ったのは、十種類以上の植物が寄せられ、見る角度によって表情をがらりと変える、小さな森のようなブーケでした。

遠目には大ぶりの花が鮮やかに主張し、近づくと小花の可愛らしさが目に留まります。グリーンを基調にしているので、全体的にシックで都会的な印象。家の中のどこに飾っても映えそうなところが素敵です。どの花を正面に飾ろうかな、どんな花瓶に生けようかなと楽しい気分になります。

乾燥に強い南半球原産のネイティブフラワーをたくさん盛り込んでいるので、ドライフラワーにして長く楽しむこともできます。

グリーンを基調とした季節のブーケ。まるで小さな森のよう

就労支援施設としてのフラワーショップ

ご紹介したブーケは、店舗を持たないアトリエスタイルのフラワーショップ〈BISTARAI BISTARAI(ビスターレ・ビスターレ)〉の「季節のブーケ」です。今回は春の植物を使って、母の日ギフトをイメージしてアレンジいただきました。

このフラワーショップを運営しているのは、〈アプローズ南青山〉という福祉施設(就労継続支援B型)。知的障害や精神障害、発達障害のある人が自分のリズムを大切にしながら働く、日本初のウェルフェアトレード(注)・フラワーショップとして2014年にスタートしました。

「お花屋さん」と聞くと、美しい花に囲まれた楽しい仕事といったイメージもありますが、実際はそんなに簡単なものではありません。フラワーアレンジは仕事の一部で、水や土、花というナマモノを扱い、下準備や掃除などの雑務もたくさんあります。植物に関する知識も欠かせません。

アプローズ南青山では、市場や花店でキャリアを積んだ“花のプロ”が職員として在籍し、障害のあるメンバーがそれぞれのペースで働けるよう、一緒に仕事をつくっています。

注:“Welfware=社会貢献”と“Fair trade=公正な取引”を掛け合わせた造語で、社会的弱者と言われている人たちの作る製品などを適正価格で購入することによる社会的支援活動のこと。

今回のテーマは「母の日ギフト」。さりげなくカーネーションが。お洒落なお母さんに喜ばれそう

ゆっくりゆっくり。人も品質も大切にお花を届けたい

ショップ名の「BISTARAI」とは”ゆっくり”という意味のネパール語です。その名のとおり、アプローズ南青山で大切にしているのは人に合わせたペース配分。

3〜4カ月かけて基礎的な所作から本格的なフラワーアレンジメントを習得したのち、ブーケやアレンジメントをつくる仕事に就きます。オーダー内容にもよりますが、ひとつのアレンジメントにかける時間は約2時間になることも。そのゆっくりとしたつくりかたが、他のフラワーショップとは違うそう。静かな空間でメンバー同士助け合い、コミュニケーションを取りながら、日々集って働く穏やかなお店です。

もうひとつ大切にしているのは品質。「『福祉施設の商品だから』ではなく『素敵なブーケだから』買ってもらうことが大事なんです。なので、つくりかたは働く人に合わせて調整していますが、出来上がったお花は他のお店に負けないものを目指しています」と、語るのは、チーフデザイナーの岸本琢さん。

グリーンを基調としているのは、より季節が感じられるから。ネイティブフラワーを取り入れるのは、長く楽しめるから。つくる人もゆっくり、受け取った人もゆっくり。

人と離れ、家で過ごすことが多い昨今だからこそ、時間がたっぷり詰まった季節のブーケを贈り物にしてみるのはいかがですか。3300円から購入できるブーケのほか、各種アレンジメントや定期便などのサービスも展開しています。