福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

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こここなイッピン

アイマスク&ぬいぐるみ〈Tòhe〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

ベトナム・ハノイの特別支援学校や児童養護施設などでアートクラスを開催し、子どもたちの豊かな創造性をプロダクトに落とし込む〈Tòhe(トーへ)〉。世界各国の企業や団体が注目する、同ブランドの活動や取り組みをご紹介します。

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子どもたちの遊び心を育み、生かす、「100% playful」なアイテム

【画像】目のイラストが描かれたアイマスクがたくさん並ぶ

目の疲れを癒したり、リラックス効果が得られたりと、目を労わってくれる「アイマスク」。旅の必需品とするだけでなく、近年はPCやスマホで目を酷使することも多いことから、日常的に愛用する人もいるのだとか。

そんなアイマスクラバーにご紹介したい〈Tòhe(トーへ)〉のアイマスク。自身がつけてリラックスするだけでなく、周りの人をもほっこりさせてしまう、ユーモラスなデザインが魅力です。

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描いたまんまのタッチが生きた、カラフルなアイマスク。つければ謎のキャラクターに変身したような楽しさも⁉

このアイマスクは、ベトナム・ハノイに創設された社会的企業〈Tòhe〉にて製作されています。児童養護施設、孤児院、特別支援学校などを利用する子どもたちにアートクラスを提供し、そこで生まれた作品をさまざまなプロダクトの彩りとして採用しています。

〈Tòhe〉のものづくりのコンセプトは「100% playful」、つまり「遊び心」。その思いが生かされたもうひとつのイッピンが、こちら。

飛び出た目の部分も、足先も、綿がみっちり詰まった、まるでクッションのようなぬいぐるみ。実際に手に取ると、作画時のタッチや、塗りきれなかった白い部分が味わい深い!

子どもが描いたカエルのイラストを布にプリントし、綿をみっちり詰め込んだぬいぐるみ! 表と裏で表情が違うのもポイントです。

ベトナムの日常や文化が感じられるアイテムたち

ところで、アイテムの色味にどこか日本とは異なるカラフルさを感じませんか? これらの色は“ベトナム・カルチャー”といってもいいかもしれません。

同国で一般的な絵の具セットを購入すると、ショッキングピンク、レモンイエロー、ビビッドなブルーやグリーン、ライトパープルなど、絶妙な発色の絵の具が基本色として入っているのだそう。〈Tòhe〉のアイテムの原画も、まさにその絵の具で描かれています。鮮やかさを好むというベトナムならではの色彩感覚が表れています。

また、カエルというモチーフにも“ベトナム・カルチャー”が感じられます。たとえば、日本においてぬいぐるみの定番といえば、ネコ、イヌ、ウサギ、クマなど。一方のベトナムは、ニワトリ、ウマ、カエル、カタツムリなどが定番。身近な動物たちの違いがぬいぐるみから感じられて、おもしろい!

ピカソでさえ描けない、子どもたちの創造性を生かす

これらのアイテムを制作している〈Tòhe〉は、ベトナムでクリエイターとして活動するングエンさん、ンガンさん夫妻によって2006年に創設されました。

日本における特別支援学校や児童養護施設のような場所でアートを教えるボランティア活動を行っていたというおふたり。その時間のなかで強く感じたのは、たとえ困難があっても、子どもたちの精神と想像力を妨げることはできないということ。

また、スペインのピカソ美術館を訪れた際、「ラファエロのように描くには4年かかったが、子どものように描くには一生かかる」というピカソの言葉に触れた夫妻。子どもたちの作品の素直さ、創造性、魅力を取り込んだ製品をつくり、その売り上げの5%をアーティストである子どもたちに還元していくアイデアを思いつきます。

ほどよいクッション性があるアイマスク。ゴム部分まで手づくり!

〈Tòhe〉を立ち上げ、ベトナム国内の児童養護に関わる施設や孤児院、障害のある子どもが通う学校などを定期的に訪ね、イラスト、ペイント、造形、染物など、子どもたちの年齢や特性に合わせたアートクラスを実施。現在はその実施回数も増え、夫妻だけでなく、社員やボランティアを迎えて行っています。

そうしたなかで生まれた作品を、テキスタイルにして製品化したり、「トーへバンク」というプログラムで原画を販売。その売り上げから年に2回、子どもたちへの還元が行われています。

さまざまな社会参加を促す〈Tòhe〉の取り組み

子どもたちとのかかわりはアートクラスだけではありません。大きな公園を貸切って、体を動かすアクティビティや、子どもたちの作品展示をするなど、障害の有無は関係なく参加できるイベントなどを開催。

また、創作活動への意欲が高い子どものアートスキルをサポートしながら、〈Tòhe〉のスタッフとして雇用する動きも少しずつ生まれているといいます。

さらには、アイテムの縫製作業を担う女性を多く雇用し、働く場を提供しているほか、アイテムに使う素材には環境へ配慮したものや、余剰品の活用など、サスティナブルな観点のものづくりも行われています。

近年は、ユニセフ、スターバックス、エアアジアなど、〈Tòhe〉の活動に関心を持つ企業や団体も増加。各社の商品やノベルティに子どもたちのアート作品が採用されています。社会的ブランドとして世界に名を馳せる日も遠くないかもしれません。

〈Tòhe〉の活動を日本に伝える〈magic tunnel〉

さて、〈Tòhe〉の商品や活動を知って、「ほしい! でも、どこで買えるの?」と思った方もいるのでは? 日本では〈magic tunnel(マジック・トンネル)〉が正規代理店として、同ブランドのアイテムを輸入しています。

〈magic tunnel〉代表・江幡紗恵さんは、2016年に家族とベトナムを旅行していた際、たまたま直営店を見つけて入り、店員と話すなかで〈Tòhe〉の取り組みを知ります。帰国後、個人的に輸入をスタートさせましたが、〈Tòhe〉側からの申し出で正規代理店となることに。コロナ禍以前は毎年ベトナムへ渡り、現地を視察したり、日本のニーズやサイズ感を伝えたりするなど、ブランドと深いかかわりを持ってきました。

現在は〈magic tunnel〉のECサイトでの販売、国内の雑貨店へ卸しを行っているほか、〈Tòhe〉としての百貨店催事、マルシェ、イベントなどへ出店することも。

また、地域子育て支援拠点事業や、子ども第3の居場所を運営している江幡さんは、ベトナムや〈Tòhe〉の取り組みを日本の子どもたちに伝える活動も行っています。

イベントへの出店や、新商品の更新など、〈magic tunnel〉のECサイトSNSで発信していくとのこと。気になった方は、ぜひチェックしてみてくださいね!