福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

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こここなイッピン

シルクスクリーン Tシャツ&ソックス〈LIVE WORKS〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

〈Good Job!センター香芝〉の新しい仕事づくりのなかで生まれたシルクスクリーンブランド〈LIVE WORKS〉。ポップでかわいいTシャツ&ソックスがつくられる現場はとてもユニーク。大事にしている「ライブ感」とは!?

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ひらめき、リズム、空気感……ものづくりの中心にあるもの、それは「即興性」

大きな丸、点の集合、アルファベットらしきもの、何かのパーツのような図――。さまざまな形と色とが重なったり、並んだり、ポツンと存在していたり。制約など何もないかのような奔放さと、それでいて不思議な統一感のある、複雑なレイアウト。

今回のイッピンは、シルクスクリーンの技法を使ってさまざまな模様をプリントしたTシャツ&ソックスです。

制作・販売を行うのは、障害のある人とともに、アート・デザイン・ビジネスの分野を越え、社会に新しい仕事をつくり出すことを目指す、奈良県香芝市にある障害福祉サービス事業所〈Good Job!センター香芝〉。その活動のなかで、シルクスクリーンによるものづくりを行うのが〈LIVE WORKS〉です。

商品はすべて手作業で刷られており、図案の組み合わせも、配置も、ひとつとして同じものはない1点もの。

ソックスは、両足一組ではなく、片足ずつ販売されています。好みの図柄のソックスを自由に組み合わせることで、その人だけのオリジナル靴下が完成するという設計。ちょっと新しくて、おもしろい!

写真の商品は2022年のワークショップで制作されたTシャツ

〈BOB ho-ho〉と協働!「ワークショップ」という手法による新しい「仕事」づくり

皆で刷って、皆で楽しむ―― その場で生まれるライブ感を仕事(ワーク)にしようと、2017年に立ち上がった〈LIVE WORKS〉。このブランドから生まれる商品は、年に1回、3日間かけて行われる「ワークショップ」で制作されています。

そのワークショップを牽引するのは、静岡県浜松市を拠点に活動するワークショップユニット〈BOB ho-ho(ボブホーホー)〉。

〈Good Job!センター香芝〉の母体である福祉施設〈たんぽぽの家〉は、以前から〈BOB ho-ho〉とのつながりがあり、大きなパネル作品をつくるシルクスクリーンワークショップを行うなど、度々関わりがありました。

2016年に〈Good Job!センター香芝〉が新設され、新たな仕事づくりを検討しているなかで、かつて行った〈BOB ho-ho〉とのシルクスクリーンワークショップを、メンバーの「仕事」として成り立たせることはできないかというアイデアが持ち上がります。

奈良県香芝市の隣に位置する広陵町は靴下の一大生産地。〈LIVE WORKS〉のオリジナルでつくられたベースソックスにプリントが施されています

翌年、同センターと〈BOB ho-ho〉の協働による、Tシャツやトートバッグなどにプリントを施すシルクスクリーンワークショップを開催。そこで生まれた100点ほどの作品を、〈LIVE WORKS〉と名づけたブランドの商品として販売することになりました。

以降、ワークショップは毎年行われ、2023年1月には7回目を実施。Tシャツやソックスだけでなく、モンペ、レインブーツ、木製スツールなど、毎年新しいアイテム制作にもチャレンジしています。

ルールも制約もなし。その場でしか生まれ得ない「生」のもの

1年に1度しか行われない〈LIVE WORKS〉のものづくり。スタッフも、ワークショップを主導する〈BOB ho-ho〉も、この日のために入念な準備を整え、当日に臨みます。

ワークショップがスタートすると、まず100種類ほど用意された小さなシルクスクリーンの版型と、100色ほど用意されたインクを、皆がそれぞれにチョイス。準備が整ったら、テーブルに並べられたTシャツなどに自由にプリントを施していきます。

丁寧にインクを刷り込む人、ササッと塗り込む人、用意されたすべての商品に図柄を入れていく人、じっくり吟味して「これだ!」というものにだけ刷り込む人。そこにはルールも制約もありません。

1枚のTシャツに5人しか版を入れないものもあれば、30人がプリントしたものも。刷り上がりのタイミングも、その場にいる誰もが自由に決められます。完成とされたものを再び誰かが持ち出して、追加でプリントすることも

〈LIVE WORKS〉のものづくりの中心にあるもの、それは「即興性」です。メンバー、スタッフ、そして〈BOB ho-ho〉が、その場に在る空気感、リズム、それぞれの直感に従い、版にインクを引いていきます。

無地だったTシャツにみるみる図柄が置かれ、色が重なり、形になっていく。それは例えば、誰かの音出しから始まり、さまざまな楽器が次々に加わって、音の層を成し、それぞれのアレンジを肯定しながらアドリブを楽しむジャムセッションのような、その場でしか生まれ得ない「生」のもの。

その場にいる人の瞬間的なひらめきや感性が、予期しない図柄や色の重なりとなり、作品となっていく。そういったライブ感をこのワークショップでは重要視しています。

5回目となる、2021年のワークショップの様子。コロナ禍にあった同年は、感染症対策の観点から、浜松の〈BOB ho-ho〉と〈Good Job!センター香芝〉がそれぞれにプリントした商品を交換し、版を重ねるという制作方法をとりました

そして、大切にしている思いがもうひとつ。

シルクスクリーンの図柄はすべて〈BOB ho-ho〉が制作しています。絵を得意とするメンバーがいるなかで、それらの人の絵や図を版に採用しないのは、この活動に「誰のものでもない」というテーマが置かれているから。

メンバーの得意なこと、好きなことを仕事にしたものづくりは〈Good Job!センター香芝〉の活動のなかで日常的に行われています。一方で、例えば、絵が描ける・描けないを超えて、ただ刷ることを楽しみ、誰かの得意が突出しない、皆が公平に関われるものづくりがあってもいいのではないか。そんな思いが〈LIVE WORKS〉の活動には込められているのです。

こちらは「Agingシリーズ」と名づけられた商品。購入者が決まらなかったTシャツは、翌年のワークショップでさらに版が重ねられ、プリントの積層を楽しむシリーズとして販売されます。プリントのズレや擦れは、ライブ感たっぷりの場から生まれた作品の特徴のひとつ

購入者も、〈LIVE WORKS〉のライブに参加するメンバー

〈LIVE WORKS〉が立ち上がって7年目。地元・奈良の企業やクリエイターとのコラボレーションも少しずつ進められてきました。

2023年には、兵庫県に本社を構える大手通信販売会社〈フェリシモ〉から打診があり、これまで3日間だったワークショップを4日間に増やし、スカーフ、ハンカチ、トートバッグにシルクスクリーンを施すなど、制作商品の種類も数も大きく超えるものづくりを行いました。

今後も、皆で刷って、皆で楽しむ、というコンセプトに共感してくれる企業や人との協働を積極的に行っていき、いずれは海外での展開にも挑戦したいと考えている〈LIVE WORKS〉。

現在の商品取り扱い店は、〈GOOD JOB STORE〉と、大阪・天満橋にある〈夜長堂〉のみ。毎年完成した新作はほぼすべて〈夜長堂〉に納品され、「LIVE WORKS展」という形で販売されます。商品がずらりと並ぶ会場には、ワークショップ時の臨場感や、ライブ性のようなものが立ち現れるのだとか。

さまざまな商品のなかから「これが好き!」と誰かが購入するまでを、ワークショップの延長線上と捉えている〈LIVE WORKS〉。購入者も、ワークショップやライブに参加するひとりのメンバーなのです。

ワークショップ初年度より、Tシャツには通し番号がつけられており、番号から制作年数がわかります。なんと現在は1000番越え! このラベルづくりもメンバーの仕事のひとつ

2023年5月13日(土)~29日(月)には〈夜長堂〉にて「LIVE WORKS展」が予定されています。また6月には〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉で毎年行われる「T-SHIRT COLLECTION」にも〈LIVE WORKS〉のTシャツが並ぶ予定です。

図柄の少ないシンプルなもの、プリントがたっぷり重ねられたもの、あなたはどんな商品に心動かされるでしょうか?