福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

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こここなイッピン

アクリルシリーズ〈NEWSED〉&〈地域作業所hana〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

端材・廃材を活用したものづくりを行うブランドと、一人ひとりに合う仕事をつくり出す福祉施設の協働から生まれるアップサイクル・プロダクト。今やロングセラーとなったこの商品は、それぞれどのような役割のなかで制作されているのでしょうか?

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アクリル端材と古新聞のアップサイクルから生まれる、アクセサリー&キーホルダー

幾何学的な形状とポップなカラーリングのアクセサリーに、アルファベットや数字をランダムな色柄で組み合わせたキーホルダー。身に着ければ、小さいながらも存在感たっぷりのワンポイントになる、アクリル樹脂製のプロダクトです。

そして、それらを取りつけている“台紙”にも注目を。英字新聞を手作業で切り抜いてラミネート加工した、同じものは2つとないオリジナル。プロダクトの魅力を引き立たせる脇役的存在ですが、この台紙のありなしで商品の印象をガラッと変えてしまう、重要なパーツです。

左から「Re:Acryl pierce」「Acryl Tag Plate」「Re:Acryl badge」

今回のイッピンは、アップサイクルブランド〈NEWSED(ニューズド)〉と、千葉県木更津市にある就労継続支援B型事業所〈地域作業所hana〉の2社が協働して手掛ける「アクリルシリーズ」。約10年前から販売が開始され、現在はミュージアムショップやデザイン雑貨店などで取り扱われるロングセラー商品です。

〈NEWSED〉と〈hana〉、それぞれの役割と理念とは?

アクリルシリーズの本体を制作しているのは〈NEWSED〉。多種多様な産業から出る端材・廃材を活用し、未来につながる新しい関係性・価値につなげていくものづくりを行うブランドです。

今回紹介するイッピンも、工場などから出るアクリル端材でつくられています。色、柄、プロダクトの形状、英数字など、その組み合わせによってパターンは無限大。ほぼ“1点もの”の商品から自分好みの図案を探す楽しさも、アクリルシリーズの特徴です。

アクリル端材3種類を組み合わせてつくられるピアス・バッヂのシリーズ「Re:Acryl」

一方の〈地域作業所hana〉は、アクリルシリーズをセットする台紙の制作からパッキングまで、包装にかかわる作業全般を担っています。

〈特定非営利活動法人コミュニティワークス〉を母体に2006年に設立された〈hana〉。仕事に人を当てはめるのではなく、一人ひとりの特性に合う仕事をつくり出し、メンバーの自信や誇りにつながるサポートを行うのが同施設の理念。

英字新聞を活用したエコバックづくり、トップパティシエ監修による菓子製造、縫製、企業からの受注作業など、同施設の活動はさまざまなジャンルに及びます。

Win-Winで成り立つ2社の協働

2社が出会ったのは約10年前。当時、大学の図書館などから寄付される英字新聞でエコバックづくりを進めていた〈hana〉。「NEWS PAPER PRODUCTS」と銘打ち、テスト販売を始めた頃、とある縁で〈NEWSED〉と出会います。

新聞のアップサイクル品というユニークさに共感した〈NEWSED〉は、エコバッグの販売・営業・プロモーションを申し出、〈hana〉はより品質の高い商品の量産に集中する機会を得ました。

「Re:Acryl badge」の裏側のピンの接着作業なども〈hana〉で担当しています

そのような関係性を築くなかで〈NEWSED〉は、同社が手掛けるさまざまな商品のパッケージを英字新聞のアップサイクル品にしたいこと、それらを〈hana〉に制作して欲しいことを打診。そこで生まれたもののひとつが、アクリルシリーズの台紙でした。

以降〈hana〉では、エコバッグづくりで出た英字新聞の端材を規定のサイズにカットし、ラミネート加工して台紙を制作。さらに、ピアスやキーホルダーを通す穴を台紙にあけ、商品のセット、ブランドシールや解説シールの貼りつけ、袋詰めといった作業も、施設に通所する全メンバーが自分の得意やできることで分担しながら行っています。

施設の全メンバーがなにかしらの作業で携われるように、工程を細分化するなど工夫してつくられている台紙。半身麻痺がある人も補助具を使いながらパンチング作業などを担当

全国のセレクトショップなどでも取り扱われ、コンスタントに売れる人気商品のため、台紙づくりに時期に応じた作業の変化はありません。安定的に取り組める仕事があることは〈hana〉のメンバーの熟練度を高め、またその環境はメンバーの心の安定ややりがいにも繋がっています。

さらに、自分たちが関わった商品がショップなどに並べられ、手にする人を目の当たりにすることで、仕事に対する誇りを感じているというメンバーたち。

〈NEWSED〉との協働作業は〈hana〉を代表する仕事となり、メンバーの心地いい居場所づくりとしての機能を果たしています。

〈NEWSED〉でも、ブランドミッションとして「多くの身近な素材が廃棄物になっている事実」を発信しています。無駄を出さない消費、日々のちょっとした工夫。それらをともに考えるアプローチのひとつとして、役目を終えた英字新聞を活用したパッケージに可能性を感じ、採用しています。

それぞれの理念とできることを掛け合わせ、協働する〈NEWSED〉と〈hana〉。アクリルシリーズは、そのような2社のWin-Winな関わりのなかで制作されています。

〈NEWSED〉のオンラインストアのほか、〈hana〉と同じ木更津市内の小高い丘の上にある〈ナチュラルカフェ+ショップ hanahaco〉でも販売されているアクリルシリーズ。自分の感性にぴったりはまる色柄や形のプロダクトを探してみてはいかがでしょうか?

また〈hanahaco〉は、地場野菜やフェアトレードの食材を使った口コミでも大評判のカフェメニューを展開し、週末は多くの人が訪れる人気店。ストーリーのある雑貨や食器など、こだわりのセレクト品も並びます。お近くの方はぜひ足を運んでみてくださいね!