福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

こここなイッピン

季節の水耕野菜〈クラリスファーム〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

今回のイッピンは、有機栽培の野菜を手がける〈クラリスファーム〉の「水耕葉物野菜」。シャキシャキ食感と味の濃さが評判で、農園のある埼玉県や群馬県を飛びこえて、東京都でも販路拡大中。そんなクラリスファームは、近年ヨーロッパを中心に拡大をみせる「ソーシャル・ファーム(社会的企業)」のひとつです。

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農業を通して、社会との“つながり”を創出!
多種多様な人がともに働く、これからの農業のあり方

ピリッと辛みのきいたルッコラや、サラダに彩りを添えるスイスチャード、みずみずしいカラシ菜に、えぐみの少ないサラダホウレン草。「味が濃くておいしい!」と評判の水耕野菜シリーズを栽培しているのは、埼玉県熊谷市と群馬県高崎市で農園を営む〈クラリスファーム〉。

このクラリスファームでは、特徴的な理念を掲げています。それは、諸事情により働きづらさを抱える人、労働市場で就労の機会を得ることが困難な人が、孤立することなく、社会の一員として活躍できる場を提供すること。

こういった取り組みは「ソーシャル・ファーム=社会的企業」と呼ばれ、1970年代にイタリアで始まり、ヨーロッパ各国で拡大中。近年は世界的にも注目を集め始めています。

クラリスファームで働くメンバーは、障害のある人、高齢の人、家庭の事情で短時間しか働けない人、引きこもり経験のある人、アルコール依存症の人、刑務所を出所した人と、さまざまな背景をもつ人たち。ファームが運営するグループホームには、18~70歳までのメンバー約30人が大家族のように暮らし、日中はほかの就労者とともに農作業に汗を流します。

パッケージのイラストは、クラリスファームのメンバーによるもの。デザインは、ソーシャルコーディネーター・デザイナーとして活動する奥村奈央子さんが手がけています

クラリスファームの母体である〈埼玉福興株式会社〉は、1993年に知的障害のある人の生活寮の運営をスタートしました。農場経営の経験はなかったものの、無農薬栽培や水耕栽培に可能性を感じ、2004年には農業を事業の中核に。現在は、玉ネギ、ネギ、白菜、ホウレン草などの有機野菜を中心に栽培・出荷しています。

農園の仕事は、種植え、雑草抜き、剪定、間引き、土づくり、収穫、出荷時の袋詰めとさまざま。その量は膨大で、ときに同じ作業が何時間と続くことも。メンバーの個性や特性に合わせて、できることを分担する。それがクラリスファームの働き方です。

障害のある人や、さまざまな事情を抱えた人が、農業を通じて自立できる環境を創出するだけでなく、多種多様な人が同じフィールドでともに人生を歩む仕組みを創造することが、クラリスファームが目指していることです。「福祉のなかに農業」がある現状を、「農業のなかに福祉」があるという未来に転換するべく、日々活動しています。

農場見学も積極的に受け入れ中! 新しい農業のあり方に関心がある方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?