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〈港まちポットラックビル〉(愛知県名古屋市)にて写真家・長島有里枝さんが他者と自身のケアについて考えるプロジェクト「ケアの学校」を開催中。3月18日(土)まで
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黄色いカーテンの前で、背中を向けて黄金色に染めた髪をひとつにまとめえた後ろ姿の写真。左側には、プロジェクトのタイトルと展示期間が書かれている
長島有里枝さんによる「ケアの学校」が3月18日まで〈港まちポットラックビル〉で開催中です。画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

会場をスタジオとして公開しながら、「ケア」について学び合うプロジェクト

愛知県名古屋市の〈港まちポットラックビル〉で、写真家・アーティストの長島有里枝さんと「ケア」について学び合うプロジェクト「ケアの学校」が3月18日(土)まで開催中です。

会期中は、会場を長島さんのスタジオとして公開。さらにトークやダンス、お茶会などさまざまなイベントが開催されています。3月11日(土)は、長島さんが歌い、写真家のホンマタカシさんがピアノ伴奏をする「発表会」が行われます。

〈MAT, Nagoya〉とは

今回のプロジェクトは、〈Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]〉の展示シリーズの一つです。〈MAT, Nagoya〉は名古屋の港まちをフィールドにしたアートプロジェクトのこと。名古屋港エリアでまちづくりを推進する「港まちづくり協議会」が母体となって活動し、今回展示が行われる〈港まちポットラックビル〉を拠点に、現代美術の展示などさまざまなプロジェクトを展開しています。

対話や交流を通してケアについて考える

アーティスト/写真家の長島有里枝さんは、これまで家族や他者との関係性をテーマにした写真や、女性のライフコースに焦点を当てたインスタレーション、エッセイ・小説などの作品を発表し、フェミニズム的な視座から創作活動に取り組んできました。

今回のプロジェクトでは、長島さんが〈港まちポットラックビル〉に滞在し、会場を自身のスタジオとして公開。これまでの表現に加えて、編み物やダンス、歌など新たな表現にも取り組みます。

部屋の中で、手に黒い部品を持って、そちらを見ている長島さんの後ろ姿
〈港まちポットラックビル〉につくられた、長島さんの暗室。画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

デビュー以来30年、社会に対する個人的な思いや自分にとって切実な問題を起点として制作活動を行ってきた長島さん。近年は、新型コロナウイルスの流行や、戦争、激動する世界情勢に加え、身近な人や娘のように思っていた犬のパンクとの別離などが起こり、大切なものを失うなかで、「好きな場所で、好きなとき、好きなことができれば」というシンプルな自分自身の望みに気が付きます。

ホームタウンを離れ、名古屋の地で長島さんが取り組みたいと思ったのは、ずっと大好きだったことをしながら、その場に居合わせた人と「ケア」について考えること。暗室作業、編みもの、お絵描き、子どもの世話、読書会、お菓子作り、ダンスや歌の練習をしながら滞在する長島さんと、訪れた人が対話や交流を通してケアについて考え、学ぶ場をつくります。

バレエの練習に使うバーを片手で持って、もう一方の手で、かかとをおしりの方に当ててストレッチしている長島さんと、参加者
バレエのレッスンをするタイミングで訪れたお客さんを誘って練習する長島さん(左)。画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]
編みものをしている手芸部の方たちの手元
「港まち手芸部」の活動。長島さんも、自身のおばあさんが長島さんのためにあみかけていたセーターの数々を完成させようと取り組んでいます。画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

会期中、さまざまなイベントが開催

会期中は、トークイベントや、フリーマーケット、ダンス、寄席、読書会などのイベントも行われています。

3月11日(土)は、長島さんによる声楽の「発表会」が開催。披露される曲は、映画 『眺めのいい部屋』の挿入歌として知られるジャコモ・プッチーニ作曲のアリア『わたしのお父さん』です。

50代を前にして、バレエや声楽などの身体表現に取り組み始めた長島さんは、本プロジェクト期間中に、専門的なレッスンを受けました。今回はデビュー当時から長島さんの活動を見続けている、ホンマタカシさんがゲストとしてピアノ伴奏を務めます。

その他にも、3月3日(金)にはアーティスト/ドラァグクイーンとして活動するモチェ・レ・サンドリヨンさんをゲストに迎えた「ドラァグクイーン・メイクでおしゃべり」、3月4日(土)にはランドスケープコーディネーター/画家のジュン・サンさんとの子ども食堂「カレーをフォークで食べて、マンガを読む会」も予定されます。イベントの詳細は、MAT, NagoyaのウェブサイトやSNSをご確認ください。

今回のステートメントに、長島さんはこう記しています。

“ケアとは誰かを気にかけること。誰かとはなにより自分自身のこと。わからないことはわからないままでいいし、感情や身体のコンディションが整わないなら休んでもいい。相手との距離を縮めることだけを目指すのではなく、遠いまま放っておくことも大切な気がする。なにかに没頭する時間が、自分を労る。没頭するわたしの隣に没頭するあなたがいる。他愛もないことや、真面目なことをお喋りしながら過ごす時間はきっと、未来に世界そのものを「制作」する力を持つはずです。”

(※一部抜粋)

ぜひ、会場を訪れ、長島さんの表現に触れ、ともに時間を過ごしてみませんか。