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国内10例目の「コミュニティフリッジ」誕生。子どもの居場所を支える〈キリンこども応援団〉が、24時間受け取れる食料品・日用品の支援へ
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「コミュニティフリッジ泉佐野」のロゴ画像

大阪に3か所目! 広がる公共の冷蔵庫「コミュニティフリッジ」

生活に困難を抱える人たちが、食料品・日用品などを無料で受け取れる「公共冷蔵庫」をご存じでしょうか。もともとドイツ、スペイン、イギリスなど、欧州を中心に広がりを見せている活動で、英語で「コミュニティ・フリッジ」とも呼ばれています。

近年、日本でも取り組む企業やNPOが現れており、2020年11月には岡山県岡山市に「北長瀬コミュニティフリッジ」が誕生。個人や企業から寄付された支援物資を、必要とする人がスマートフォンアプリを使い、自由に取りに行ける仕組みが展開されています。

全国各地で導入事例が増えるなか、2023年9月、大阪府泉佐野市にも〈特定非営利活動法人 キリンこども応援団〉の運営による「コミュニティフリッジ泉佐野」が誕生しました。

市の所有地に設置された庫内には、企業、商店、個人から提供されたさまざまな品(9月10日時点での寄付は98種)が順に並べられ、利用登録者は24時間都合のよいタイミングで受け取りに行くことができます。駐車場直結のため、時間や人目を気にすることなく利用できるという配慮もなされています。

コンテナハウスといった形の「コミュニティフリッジ泉佐野」の外観
泉佐野市社会福祉センターの敷地内に設置された、新しいコミュニティフリッジ

米、野菜、調味料、洗剤、トイレットペーパーや生理用品まで

「コミュニティフリッジ泉佐野」を利用できるのは、同市内在住で児童扶養手当を受給する世帯や、さまざまな事情により食事に困っている世帯など。登録者にはスマートフォン上で電子ロックが渡され、自由に入庫することが可能です。

棚に並ぶのは、米、パン、野菜、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、油や醤油などの調味料、冷凍食品、レトルト食品、缶詰、お菓子などさまざま。また、トイレットペーパー、シャンプー、洗濯洗剤、生理用品、文房具などの日用品も日によって並びます。

さまざまな食料品が並ぶ「コミュニティフリッジ泉佐野」の庫内
庫内の様子。食料支援だけでなく、まだ食べられるのに捨てられてしまうフードロス問題への寄与も期待されています

「フードプレゼンター」と呼ばれる寄付・提供者も登録制になっており、寄付された食料品はオンラインのデータベースで管理。その物資が誰からのもので、いつまでに消費しなければならないかなどを確認しながら、適切な支援を安全に提供できる体制がとられています。

また、直接的な物資提供だけでなく、寄付金の受け付けや、「スマートサプライ」を利用したインターネットによる支援も導入。同市在住でなくとも、多様な方法でコミュニティフリッジにかかわれる仕組みが整っています。

「コミュニティフリッジ泉佐野」の運営モデルの図。フードバンク泉佐野の寄付食材を活用し、コミュニティフリッジが支援を必要とする人と物資をつなぐ

これらの運営モデルは、冒頭でも触れた岡山県岡山市の「北長瀬コミュニティフリッジ」を運営する、〈一般社団法人 北長瀬エリアマネジメント〉が構築したノウハウに基づいて展開されています。

同法人は、2020年に「北長瀬コミュニティフリッジ」を開設以降、東京都板橋区、埼玉県草加市、山口県防府市などにもネットワークを広げてきました。「コミュニティフリッジ泉佐野」はその運営モデルを採用する、国内で10か所目、大阪府内で3か所目のスポットになります。

「子どもがすごく喜んでいます」「楽しみが増えました」さまざまな声も

「コミュニティフリッジ泉佐野」を立ち上げた〈キリンこども応援団〉は、泉佐野市において「子ども第三の居場所」を運営するNPO法人。2021年10月に設立され、子ども食堂やフリースクールなどを展開しながら、支援が必要な子育て世帯に毎月食材を配布するフードパントリー事業も行ってきました。

しかし従来の体制では、「食料を配布できる頻度が月1回」「受け取り日時と場所が限られている」「食料品目を各家庭の状況に合わせられない」「支援できる数が150世帯のみ」など、さまざまな課題がありました。また、コロナ禍や物価高騰の影響などにより、食事に困る子育て世帯の増加も懸念となっていました。

子どもたちや保護者との顔が見える関係性を重視しつつも、より柔軟な支援のあり方を検討するなか、出会ったのがコミュニティフリッジの取り組みです。〈北長瀬エリアマネジメント〉、泉佐野市ほか、さまざまな支援者や寄付者の協力を得て、2023年9月1日に「コミュニティフリッジ泉佐野」の開所に至りました。

買い物かごにさまざまな食料品や日用品をつめた人の写真

スタートに先立ち、利用希望者からの問い合わせも多かったという本事業。開始から10日時点ですでに23世帯が登録し、さらに問い合わせも増えています。また、実際の利用者からは「すばらしい体験だった」など、喜びや感謝の声も多く届いているようです。

・いつもなら買わない、少し贅沢な飲むヨーグルトや焼き鳥缶やシリアルバーなど、ありがたい限りです。子どももすごく喜んでいます。また利用させて頂きます。

・子どもが〈キリンこども応援団〉のロゴを見て、「あ! 知ってる!」「子ども食堂の人たちがやってくれてるんや」と、とても喜んでいました。本当にありがとうございます。

・パンがおいしかったので、またきてしまいました。楽しみが増えました。

(利用者から届いた声より)

「困ったときはお互いさま」を合言葉に、地域で子育てを支援しながら、子どもたちのおなかも満たし、夢を諦めないで済む社会づくりを目指す〈キリンこども応援団〉。将来的に、コミュニティフリッジなどでつながった子どもたちを対象とした学習支援や、さまざまな体験機会の提供も検討しています。

行政からの委託ではなく、自主事業として展開している「コミュニティフリッジ泉佐野」。運営継続のためには多くの方の理解や支援が必要だといいます。物資や支援金の寄付を通じて、子どもたちの未来を応援してみませんか?