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ろう者・難聴者のための2カ月の俳優講座『デフアクターズ・コース2022』開催
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イラスト。10月〜11月の集中講座。主催:文化庁/トット基金、協力:映画美学校 アクターズ・コース
各分野で活躍するろう者・難聴者を講師に迎え、『デフアクターズ・コース2022』が開講

ろう者・難聴者のための俳優養成講座が2022年10月開講

ろう者の家族を持つ聴者の高校生を主人公に描き、第94回アカデミー賞を3部門受賞した映画『コーダ あいのうた』(2021年)、耳が聞こえないヒーローが活躍する『エターナルズ』(2021年)など、近年ろう者・難聴者の俳優による演技の評価が高まりつつあります。

しかし、ろう・難聴のある当事者が演劇を学ぶ機会は少なく、学ぶために必要な情報サポートにかかる費用も個人が負担しなければならないなど、ハードルの高い状況が続いています。

そのような現状を受け、〈育成×手話×芸術プロジェクト〉は〈映画美学校 アクターズ・コース〉と協力し、2022年10月から11月にかけて集中講座『デフアクターズ・コース2022』を開講。8月29日にオンライン説明会を開催、9月16日まで受講生を募集しています。

講師7人の写真
聴者講師として登壇するのは、映画美学校 アクターズコース講師の近藤強(つよし)さん【上段左】、兵藤公美さん【下段左】、深田晃司(こうじ)さん【上段左から2番目】。ろう者講師には、今井彰人さん【上段左から3番目】、今井ミカさん【下段中央】、雫境(だけい)さん【上段右】、江副悟史(えぞえ さとし)さん【下段右】が招かれています

2カ月集中で演技を学ぶ『デフアクターズ・コース2022』

『デフアクターズ・コース2022』は、ろう者・難聴者を対象にした実践的な講座。2022年10月4日から11月18日まで、週2〜3日のペースで1回2時間30分、全20コマで構成されます。授業は全て手話、もしくは手話通訳つきの講義で行われるため、必要なサポートにかかる費用を個人負担する必要はありません。

コースの説明動画

講師をさまざまな分野で活躍するプロが担当。演技の基本と技術、考え方など俳優としての最低限身につけておきたい事柄を学ぶほか、ろう者・難聴者ならではの視覚やリズム、手話の表現を生かした身体の使い方や表情づくり、日本語から日本手話への翻訳なども学びます。

各分野で活躍する講師陣

講師には、聴者から「第79回ヴェネィア国際映画祭」コンペティション部門選出、また2022年9月全国公開予定の映画『LOVE LIFE』の監督である深田晃司さんをはじめ、劇団〈青年団〉で活躍する近藤強さんや兵藤公美さんが登場。

また、ろう者講師として、ろうとLGBTQをテーマにした映画『虹色の朝が来るまで』の監督である今井ミカさん、日本ろう者劇団公演やNHK Eテレ『みんなの手話』のスキットドラマに出演するなど俳優として活躍する今井彰人さんが招かれています。

「『ろう者の役はろう者が演じる』。これからはそれが当たり前の社会になっていくでしょう。デフアクターズ・コースはそのための重要な、何よりとても楽しい第一歩となるはずです」(映画監督/深田晃司さん)

台本を読む深田さんの写真
本講座で「演技とは何かを考えながら、創作を通じて、カメラの前で演じることを体験できれば」と考えているという深田さん

「ろう文化の生活に根付いている身体行動、例えば『視線の合わせ方などを演技で再現するには?』など、ろう者ならではの身体とその使い方、反応について客観的に観察しながら皆さんに助言していきます」(俳優/今井彰人さん)

今井彰人さんからのメッセージ

ろう者・難聴者の表現者を育成する〈育成×手話×芸術プロジェクト〉

盛りだくさんの内容となる『デフアクターズ・コース2022』。本講座は、〈社会福祉法人トット基金〉の運営する〈育成×手話×芸術プロジェクト〉の一環として開催されます。

〈育成×手話×芸術プロジェクト〉は、ろう者・難聴者の表現者、また彼らの表現活動に関心のある方に学びの場を提供すること、演劇・映画・美術それぞれの部門で芸術文化に関わる人材を育成することを目的に、2018年度にスタートしました。これまで、演劇・美術・映画の各分野の実践者を招くワークショップや作品制作、ろう者と聴者が語り合うためのプログラム『アートを通して考える』などを開催してきています。

さまざまな実践の積み重ねの上に、いよいよ開講する本講座。企画した映画作家の牧原依里さん(「東京国際ろう映画祭」代表)は、「​​ろう者・難聴者が持つ表現力に注目した、ろう者と聴者協働の長期講座は今までになかった」と説明し、次のように思いを語ります。

「俳優としての『演技』とともに、ろう者・難聴者が『自身の身体性』を知覚して『手話での演技』をブラッシュアップできるようにしたいと思っています。そして、ろう者・難聴者ならではの演技表現をみんなで議論しながら共有していくことも目標の一つとしています」(〈育成×手話×芸術プロジェクト〉牧原依里さん)

ろう・難聴のある俳優を、各芸術分野とつなぐ意味も持つ『デフアクターズ・コース2022』。8月29日にはオンライン説明会も開催されます。この機会に、夢に向かって一歩を踏み出しませんか。