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170点以上の作品が集結。日比野克彦さんの大規模個展が7月19日より水戸芸術館で開催
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日比野さんの作品が配置された上にタイトルと開催日などの情報が掲載された画像

社会との連携、世界との関わりを重視してきたアーティスト・日比野克彦さんの歩みを紹介

1982年に「日本グラフィック展」でグランプリを受賞以来、作品制作にとどまらず、さまざまなアートプロジェクトや活動を牽引しながら、アーティストとして常に第一線で活躍してきた日比野克彦さん。

そんな日比野さんの活動の変遷をたどる展覧会「日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」が、2025年7月19日(土)から10月5日(日)まで、〈水戸芸術館現代美術ギャラリー〉にて開催されます。

本展は、アーティスト、アートプロジェクトの監修者、美術館の館長、大学長など、さまざまな分野を横断してきた日比野さんの、幼少期から現在に至るまでの60年以上の活動にせまる、これまでにない展覧会です。

170点以上の作品を展示するほか、日比野さんのプロジェクトの醍醐味を伝える絵本や、人物像にまつわるエピソードを漫画化したものなど、関係者の声やエピソードを同時に紹介します。

開催に寄せて日比野さんは、「社会との連携、世界との関わりが、アートの一番生き生きとしたところ。ぜひ見に来るというより、体験しにきてほしい」と呼びかけます。

船の形の作品
日比野克彦「種は船・明後日丸」(2007/2025)

アーティスト・館長・学長。さまざまな顔をもつ日比野克彦さんとは

1958年に岐阜で生まれた日比野さんは、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程デザイン専攻に在学していた1980年代前半に、段ボールを素材にした作品で話題となり、立て続けに公募展の大賞を受賞しました。

90年代には1995年にはヴェネチア・ビエンナーレに参加するなど、国内外の展覧会に出品するほか、舞台美術や芸術祭のプロデュースなど、多岐に渡って活動します。

2000年代には、各地で地域の参加者と地域の特性、関係性に着目したアートプロジェクトやワークショップを数多く展開。2015年からは、障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えたさまざまな人々の出会いによる相互作用を表現として生み出すアートプロジェクト「TURN」を監修。2017年から「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成するプロジェクト「Diversity on the Arts Projects(通称:DOOR)」を監修しています。

また、日比野さんが総合監修を務める、ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」プロジェクトがスタート。2025年11月に上演されます。

現在、東京藝術大学の学長、岐阜県美術館の館長、熊本市現代美術館の館長などを務める日比野さん。アーティストとしてだけではなく、アートと社会をつなぐ多角的な視点から、さまざまな分野を横断して活動してきました。

水色の線が描かれたキャンバス、左上には黒い線で描かれた船も見える
日比野克彦「わたしはちきゅうのこだま」(2020)より 写真提供:HIBINO SPECIAL

幼少期から現在まで、60年以上の歩みをたどる展覧会

本展は、こうした活動のすべてを「日比野克彦の芸術実践」として捉え、少年時代から現在まで60年以上の足跡をたどる展覧会です。

展覧会のタイトル「ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」とは、日比野さんが幼少期に橋の上に立ち「人間ってひとりなんだ」と意識した体験がもとになっているそう。ひとりで「なにか他者に伝えたい」と表現行為を始めたところから、他者と一緒になって活動していく「だれかと舟で繰り出す」までの経緯が展示されます。

まずは日比野さんの生い立ちにさかのぼり、幼い頃に遊んだ積み木の色、橋の上で実感したひとりであること、自分らしい表現が開花した小中学生時代など、さまざまなエピソードを通して、日比野さんの原点を知ります。

段ボールで作られたオートバイの作品
日比野克彦「オートバイ」(1984) 撮影:竹内裕二 

また本展によせて、日比野さんの代表的なアートプロジェクトである新潟・莇平での「明後日朝顔プロジェクト」、岐阜・長良川での「こよみのよぶね」を絵本作家・イラストレーターの大橋慶子さんが絵本化しました。さらに、約20年の関わりがある〈岐阜県美術館〉と〈熊本市現代美術館〉での日比野さんにまつわる出来事を漫画家の宇佐江みつこさんが4コマ〜8コマの漫画に描き下ろしてユーモラスに紹介。絵本や漫画を通して、日比野さんのプロジェクトや人柄に迫ります。

たくさんの朝顔のツルに囲まれている建物の写真
「明後日新聞社文化事業部」(2003-) 2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL

この他にも、日比野さんの活動変遷を展示と連動して俯瞰することができる、エピソードに重点を置いた年譜なども制作。視覚的にも楽しめる要素や、関係者によるコメントなども取り入れながら、日比野さんの「手つき」や「ふるまい」などの特性を浮かび上がらせていきます。

トークイベント、ワークショップ、鑑賞ツアーも多数開催!

会期中は、トークイベント、ワークショップ、鑑賞ツアーなど多数のイベントが企画されています。

展覧会初日の7月19日(土)14:00〜15:30には、日比野さんを迎えて、アーティスト・トークを開催。また、8月31日(日)14:00〜16:00には、日比野さん、〈東京藝術大学未来創造継承センター〉特任准教授・副センター長の田口智子さん、水戸芸術館現代美術センター芸術監督の竹久侑さんの3者で、東京藝術大学による「日比野克彦を保存する」プロジェクトと本展覧会に共通する、日比野さんについて語り伝える方法に着目したトークを行います。

7月20日(日)14:00〜16:00に開催されるワークショップ「on the bridge」では、橋の作品を作成します。10月4日(土)には、ミニサッカーの大会HIBINO CUPを実施。段ボールなどでゴールとボールをつくり、Tシャツに絵柄を描いてユニフォームを仕立て、ミニサッカーで競います。

8月2日(土)3日(日)に行われる、「視覚に障害がある人との鑑賞ツアー『session!』」では、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんをナビゲーターに、見える人と見えない人が会話しながら展覧会を鑑賞します。

その他にも、日比野さんによる公開制作や、市民ボランティアによるギャラリートーク、就学前のお子さんと保護者の方に向けた鑑賞ツアーなども開催。ぜひウェブサイトをチェックしてみてください。

奥行きのある、横長の橋の絵の作品
日比野克彦「私が初めて立ち止まったのは萱場の橋の上でした」(2002) 写真提供:HIBINO SPECIAL

170点以上の作品や、周辺にいる人たちの声から、作品やプロジェクトが生み出される背景までを体験できる展覧会。日比野さんの歩みを知ることで、アートを通して社会を眺める視点や、アートと社会を連携させるヒントなどを持ち帰ることもできそうです。ぜひ水戸へ足を運んでみませんか。