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〈国立ハンセン病資料館〉にて、自助具・義肢・補助具を紹介する企画展「生活のデザイン」が開催中。会期は8月31日まで
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〈国立ハンセン病資料館〉にて企画展「生活のデザイン」が開催中です

「生活のデザイン」展が開催中

〈国立ハンセン病資料館〉(東京都東村山市)にて、企画展「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」が開催中です。

2022年3月から始まった会期は、8月31日まで。7月〜8月はワークショップやギャラリートーク、講演会などもたくさん実施されます。

正しい知識や歴史を伝える〈国立ハンセン病資料館〉

ハンセン病は、「らい菌」による慢性の細菌感染症です。1873年にらい菌を発見したノルウェーのアルマウェル・ハンセン医師の名前をとり、ハンセン病と名付けられました。

感染力は弱く、治療法が確立してからは完治する病気ですが、これまでハンセン病は「治らない」「恐ろしい」といった誤解を受けてきました。ハンセン病の症状として、初期は皮膚に斑紋が現れたり、末梢神経障害を起こしたりします。治療をせずに放置すると、顔面や手足に変形を起こすなど、後遺症を残すこともあります。そのため外見と感染に対する恐れから、患者は長く差別の対象になってきました。また日本ではハンセン病患者に対する誤った強制隔離政策によって、患者、回復者は遠く離れた島や施設に隔離され、社会の差別や恐怖感をいっそう強めきた歴史があります。

こうした背景から、〈国立ハンセン病資料館〉は、ハンセン病問題に対する正しい知識の普及啓発を行うことで、偏見・差別の解消や患者・元患者とその家族の名誉回復を図ることを目的に1993年に設立されました。

同館では、日本のハンセン病問題の歴史やかつての強制隔離下での過酷な生活と人権侵害、ならびにその中を生き抜いたハンセン病患者、回復者の体験についての情報を示し、ハンセン病問題について正しい知識を学び、考える機会を提供しています。

療養所で囲碁を打つ
療養所で囲碁を打つ入所者の様子

ハンセン病患者の暮らしを形作ってきた道具を展示

日本には、かつてハンセン病患者や回復者を隔離するための施設として設けられた「ハンセン病療養所」があります。「らい予防法」(注)の廃止後はハンセン病患者や回復者の方の医療と生活の場に目的は移り変わってきましたが、今も全国14カ所の療養所があり、202251日現在で929の方が暮らしています。

注:1907年に始まった国によるハンセン病患者隔離は、1931年の「癩予防法」により全ての患者を強制的に生涯にわたって隔離する絶対隔離として定められた。その「癩予防法」を継承・徹底させた「らい予防法」が1953年に成立。1996年の廃止まで、絶対隔離政策が続けられた。

企画展「生活のデザイン」は、ハンセン病療養所の入所者が生活動作の不自由がありながらも、その人らしく暮らすために生み出してきた数々の道具が展示されています。

展示会場
展示会場

知覚神経や運動神経の麻痺をかかえながら、日常生活における仕事を担ってきた入所者を支えたブリキの義足や取手付きの鉋(かんな)が展示されており、その苦労や工夫が伺えます。

ブリキの義足
ブリキの義足

また、1950年代後半以降、作業療法士や義肢装具士が着任してからは、障害のある手足をサポートしつつ、その人らしい暮らしをその人の手でかなえるための道具が作られてきました。

カラフルな自助具つきスプーン、陶芸や音楽活動などの生きがいづくりにかかわる自助具などは、まさに、一人ひとりの「生活のデザイン」と呼ぶにふさわしい道具です。

社会復帰のみが更生ではない。歩けないものが歩き、箒を持たなかつた者が箒を持ち、フオークを持てなかつた者がフオークを持つことが更生である。自主自由とはかかることを意味しなければならない。(田代馨「不自由者の自主性ということ」 『多磨』第41巻 第11号、1960年11月)

ワークショップやギャラリートークも同時開催

企画展に合わせて、さまざまなイベントも開催されています。

「ワークショップ 『ブリキの義足』を作ってみよう」では、かつてハンセン病患者が発明し、製作・使用してきたブリキの義足を身近な材料で実際に作り、道具に込められた工夫への理解を深めます。

また、担当学芸員が一つひとつの道具の背景にふれながら展示をご案内する「ギャラリートーク」は、対面とオンラインがあり、自宅からも参加可能です。

オーダーシューズ
機能と愛らしさを兼ね備えたオーダーシューズ

さらには、講演会「生活のデザインができるまで-願いをかたちにする人びと-」も開催。〈国立療養所多磨全生園〉の義肢装具士に、義足や補装具の作り手としての体験談や想いを伺います。

 

イベントフライヤー
イベントフライヤー

「限られた場での生活であっても、身の回りの小さな自由までは奪われまいとする意志をうかがうことができます。本展ではその姿を、自助具、義肢、補装具の数々と、その使い手の映像や写真、語りなどを通してお伝えします。ハンセン病問題への理解を深めると共に、障害とともに生きる人びとが自らの可能性を追求してきた歩みへの関心を高めていただければ幸いです」(国立ハンセン病資料館)

道具が生み出された背景にある暮らしや思いを想像しながら、ハンセン病問題への理解を深めに展示やイベントに参加してみませんか。