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美術家・西尾美也と大阪・西成の女性たちとの共同プロジェクト〈NISHINARI YOSHIO〉写真展。仙台にて1月15日まで開催
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NISHINARI YOSHIO写真展「最後のファッション」パンフレット画像

“予期せぬズレ”をひとつのコンセプトとする、ファッションブランドの写真展

大阪・西成発のファッションブランド〈NISHINARI YOSHIO〉は、美術家・西尾美也(にしお よしなり)さんと、大阪府西成区にある創造活動拠点〈kioku 手芸館 たんす〉に集まる高齢女性たちとの共同制作により、2018年に立ち上がったブランドです。

この新進気鋭ブランドのコレクション写真展「最後のファッション」が、宮城県仙台市のアートギャラリー〈TURN ANOTHER ROUND〉にて開催されます。

会期は、2022年12月19日(月)~2023年1月15日(日)。〈NISHINARI YOSHIO〉の服が購入できるポップアップショップがオープンするほか、オリジナルウェアの制作ワークショップも予定されています。

赤く色づいた植物のなかに横たわる、〈NISHINARI YOSHIO〉の服に身を包んだ年配男性の写真
photo:Keiichi Sakakura

ワークショップのなかで誕生した〈NISHINARI YOSHIO〉

都市部にほど近く、下町風情が残る西成区。近年は都市型のリゾートが開発され、人気観光スポットとして訪日客が多く訪れるなど、環境は大きく様変わりし始めているものの、大阪市内では高齢者単身世帯数が突出して高い地域です。

そんな西成区山王にある、元タンス店を活用した創造活動拠点〈kioku 手芸館 たんす〉に集まる女性たちとともに、〈NISHINARI YOSHIO〉の服は制作されています。

同ブランドの主宰である西尾美也さんは、装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働による表現活動を国内外で展開してきた美術家。

これまでに、世界各都市で見ず知らずの通行人と衣服を交換する「Self Select」や、数十年前の家族写真を同じ場所・装い・メンバーで再現制作する「家族の制服」など、装いに関するプロジェクトをさまざまに行ってきました。

その西尾さんと、〈たんす〉に通う女性たちの交流がスタートしたのは2016年。服づくりのワークショップを約1年間行なうなかで〈NISHINARI YOSHIO〉のコンセプトが立ち上がり、2018年に西尾さんと女性たちとの共同制作によるファッションブランドが誕生しました。

〈NISHINARI YOSHIO〉の服に身を包み、椅子に座ってこちらを見る初老男性
photo:Keiichi Sakakura

誰かへの思いやりが内在する服

〈NISHINARI YOSHIO〉の服は、制作メンバーが西成に暮らす身近な人を想定し、「その人のためのジャケットやパンツをつくるとしたら」というお題のもとつくられています。

例えば、毎日焼き鳥を焼く知人のやけどを心配する女性は、腕を守ってあげたいと袖部分にパッチワークを縫いつけた服をデザイン。

その作品をプロトタイプとし、〈たんす〉に集まる不要になった生地を活用しながら、1 点ごとに布違いで服を量産していくのが同ブランドの制作プロセス。つまりは、西成に暮らす女性たちの、誰かへの思いやりやエピソードが〈NISHINARI YOSHIO〉の服には内在しているのです。

〈NISHINARI YOSHIO〉の服に身を包み、椅子る初老女性
photo:Keiichi Sakakura

また、女性たちによる予想を裏切るアレンジや発想の飛躍、西尾さんが考えるイメージとの齟齬など、“予期せぬズレ”をコンセプトのひとつとして、作業着=日常を生きるための服を提案するのが、同ブランドの特徴となっています。

本展について

写真展「最後のファッション」は、〈NISHINARI YOSHIO〉のコレクションに身を包む人々を、服づくりの拠点である西成で撮影した写真展となっています。

本展を主催するのは、美術や映像文化の活動拠点〈せんだいメディアテーク〉(宮城県仙台市)が2016年に発足したプロジェクト「アートノード」。コロナ禍などの影響を受けている仙台市中心市街地において、文化面での交流を促進すべく「ARCADE(アーケード)」と題した活動の一環として開催されます。

〈NISHINARI YOSHIO〉の赤い服に身を包み、遠くを眺めるモデル女性
photo:Keiichi Sakakura

2023年1月7日(土)には、西尾さんと、〈せんだいメディアテーク〉の館長であり哲学者の鷲田清一さんが、「いのちの世話と最後の3着」をテーマに語り合うトークイベントが行なわれます(申し込み受付終了)。

また、会期中には服づくりワークショップ「先代の柄を縫う」も開催予定。〈NISHINARI YOSHIO〉が展開する商品の中には、昔からあるもの=「先代」をテーマにした服も。それらのオリジナル図案を活用し、「仙台」の参加者が持参する服に、アップリケや刺繍を施し、新たな価値を与えるオリジナルウェアを制作するというプログラムです。

さらには、写真展と同期間、〈NISHINARI YOSHIO〉のポップアップショップもオープン。実際に服に触れ、購入できる、貴重な機会をお見逃しなく。

ブランドの服に内在する物語や、意図された肯定的な“ズレ”をさまざまに楽しみながら、大阪・西成という地域にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。