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オノマトペで社会が変わる!? 『言語の本質』著者が監修した体験型展示「オノマトペ処方展」2024年7月15日まで開催中
展覧会情報
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オノマトペの可能性に光を当てる展覧会
大好きな人や物を目の前にしたとき、どんな言葉で自分の気持ちを表現するでしょう。ドキドキ? うっとり? それともキュン? じゃあ、お腹が痛いことを伝えるときはどうでしょうか。シクシク、キリキリ、チクチク、あるいはグルグル、といった言葉が思い浮かぶかもしれません。
これらはすべて「オノマトペ」。日常生活のなかで、誰もが何気なく使っているこの言葉の可能性にスポットライトを当てた展覧会「オノマトペ処方展ー社会を良くすることば、お出しします。」が、2024年7月15日(月・祝)まで〈ITOCHU SDGs STUDIO〉(東京都港区)で開催中です。
全体監修を務めるのは、オノマトペをテーマにした著書『言語の本質ーことばはどう生まれ、進化したか』で新書大賞2024のグランプリを受賞した、今井むつみさんと秋田喜美さん。本展では、日常の様々なシーンでのオノマトペの実用性を体験できるブースと、オノマトペの知見をより深められるブースを通し、幅広い視点でオノマトペの可能性を楽しみながら学ぶことができます。
オノマトペとは?
オノマトペとは、「ワンワン」「ガタガタ」「ザーザー」といった、動物の鳴き声や物理的な音を表現した擬音語と、「キラキラ」「ワクワク」「フワフワ」といった、実際には音のしない状態や心情を表現した擬態語を総称した言葉です。日本は世界の中でもオノマトペが特に多いと言われ、『日本語オノマトペ辞典』(小学館)には4500語が収録されています。
子どもに関わる現場では当たり前に使われてきた一方、これまで幼稚な言葉とみなす人も多かったオノマトペ。ですが、直感的に感情や感覚を表現でき、他者と情報共有しやすいという特徴から、その実用性が注目されています。例えば医療現場で患者が医者に痛みを伝える手段や、聴覚に不自由を感じる人がスポーツ観戦をより楽しめる手段として導入されるなど、社会の様々な場面で活用され始めています。
今回の「オノマトペ処方展」は、こうしたオノマトペの実用的な可能性に光を当て、考え直すきっかけを提供する企画です。「処方展」の名前の通り、様々なお悩みにオノマトペが「薬」として処方されます。ここからは実際に訪れて体験した内容とともに、展示を紹介します。
「オノマトペ処方展」6つの体験コーナー
・体験ブース① さわるかぐマトペ
そもそもオノマトペってなんでしょう?こんなお悩み相談から展示は始まります。その処方は「何も考えずに触って嗅いでみること」。ビンの中に入っている様々な手触りや匂いのものを、触ったり嗅いだりしながら、五感を使ってオノマトペを体験してみましょう。
・体験ブース② パパマママトペ
オノマトペは、言語能力が発達しきっていない子どもにも伝わりやすい言葉です。このコーナーでは親子で過ごす場面のお悩みについて、どのようにオノマトペを使ってわかりやすく意図を伝えることができるかが紹介されています。
・体験ブース③ カラダマトペ
痛みや症状を伝える際にもオノマトペは役に立ち、医療現場での活用が進んでいます。違和感のある身体の部位にオノマトペをかけ合わせることで、病気を特定できる可能性を提案します。本コーナーは、〈「医療×やさしい日本語」ラボ〉で医療機関における「やさしい日本語」の導入を進めてきた武田裕子さんと岩田一成さんの監修です。
・体験ブース④ スポマトペ
運動中にオノマトペを声に出してみると、持っている力を最大限に引き出せることがあります。このコーナーでは、ジャンプ、長座体前屈、握力の3つの身体測定で、オノマトペの効果を試すことができます。
・体験ブース⑤ 新薬マトペ
オノマトペには表現を柔らかくし、コミュニケーションを円滑にする効果もあります。友人関係や、ビジネス、SNSなどの場面を想定しながら、コミュニケーションに効くかもしれないオノマトペを「新薬」として提案しています。
・体験ブース⑥ わたしの処方せん
オノマトペのスタンプを使って、心の中を表現することができます。今の自分の感覚にぴったりなオノマトペや、こんな状態になりたいなというオノマトペ。好きなオノマトペを自分自身に処方してみましょう。
「オノマトペ処方展」学びのコーナー
・学びのブース① 学びマトペ
本展を監修した今井むつみさん(慶應義塾大学 教授)と秋田喜美さん(名古屋大学大学院 准教授)の対談コーナーです。オノマトペとは何か、子どもの言語習得とオノマトペの関係性、人間の言語習得の特徴、オノマトペの気になるテーマなどがテキストで掲載されています。体験ブースで触れてきたオノマトペについて、より理解が深まります。
・学びのブース② 事例マトペ
オノマトペを活用して、実際に開発されている装置やアプリケーションが紹介されているコーナー。記事の冒頭で紹介した「エキマトペ」のほか、スポーツの場面で競技の音をリアルタイムでオノマトペに変換しモニターに表示するシステム「ミルオト」も展示されています。
また会場には、聴覚障害のある人に向けて開発された擬音可視化アプリ「オノマトレンズ built with google」も。楽器を鳴らしたり、拍手やくしゃみをしたりすることで、音を文字にして画面に表示することができます。
「オノマトペ処方展」では、日常の擬音を可視化するアプリケーション「オノマトレンズ」を展示中です。
Dentsu Lab Tokyo のメンバー村上が開発に携わっています。
プロジェクトサイト↓https://t.co/ZJTNtQDRgI pic.twitter.com/AgTzPgQ3xX
— Dentsu Lab Tokyo (@d_labtokyo) April 15, 2024
誰にでも伝わりやすく、人間にしか生み出すことができない言葉
本展を開催する〈ITOCHU SDGs STUDIO〉は、〈伊藤忠商事株式会社〉が2021年から運営するSDGsの情報発信拠点です。これまでも「こどもの視展」など、社会の見え方が変わるような展示をいくつも行ってきました。
今回の展覧会の企画は、書籍『言語の本質』への着目がきっかけ。秋田さんの言語学的な視点と、今井さんの認知科学や発達心理学の視点が重なりあう本書の中で、オノマトペが言語の「発達」に果たす役割に言及されていることが、本展へとつながりました。
「誰にでも伝わりやすい言葉、ユニバーサル言語という特徴に着目し、本展示はオノマトペが日常生活のコミュニケーションをより良くしたり、社会課題の解決につながったりする可能性を紹介しています。」(伊藤忠商事 広報部 菰田有花さん)
子どもにも伝わりやすい言語であるために、幼稚な言葉と思われがちなオノマトペですが、実は人間にしか作り出せない言葉でもあるということが、書籍でも、また展示の中でも明かされています。
例えば「学びマトペ」の対談で今井さんは、子どもがショベルカーの動きを「ばよっばよっばよっ」と表現していたことに触れながら、AIに同じお題を出すと「ガラガラ、ドシャーン」など、既存の表現を組み合わせたオノマトペしかつくれなかったと語ります。
“子どもは、言語学者のように、オノマトペの持つ音と、意味の抽象的なつながりを直感的にわかっていて、新しい言葉を生み出せてしまうんです。これは、子どもの身体に音が接地しているためだと思います。この力はAIにはない、人間特有のものではないでしょうか。”
コミュニケーションを円滑にしたり、身体の違和感を伝えたり、力を引き出すことができたり。「オノマトペ処方展」はオノマトペの様々な活用方法を、大人から子どもまで、楽しみながら体験できる展示です。
〈ITOCHU SDGs STUDIO〉公式インスタグラムをフォローした方には、オノマトペが書かれたステッカーのプレゼントもあり、隣接する「星のキッチン」では、本展とコラボしたオリジナルドリンクも販売されています。ぜひ、家族や友人と足を運んで、オノマトペの可能性にワクワクしてみませんか?
Information
「オノマトペ処方展」
Webサイト:ITOCHU SDGs STUDIO
公式インスタグラム:@itochu_sdgs_studio
期間:2024年4月1日(月)〜7月15日(月・祝)
会場:ITOCHU SDGs STUDIO GALLERY
(東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1)
営業時間:11:00-18:00
休館日:月曜日(※月曜日が休日の場合、翌営業日が休館)
料金:入場無料
主催:ITOCHU SDGs STUDIO
全体監修:今井むつみ、秋田喜美
医学監修:武田裕子、岩田一成