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“もの語り”をテーマにした展覧会、「ナラティブの修復」が〈せんだいメディアテーク〉で1月9日まで開催中
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のはらに、なにもかかれていない、かんばんがたてられている。かんばんのじょうほうに、てんらんかいのタイトル。
2022年1月9日まで〈せんだいメディアテーク〉で開催中の「ナラティブの修復」

仙台・宮城ゆかりのアーティスト10組による展覧会

ナラティブ(もの語り)をテーマにした展覧会が、開館20周年を迎えた〈せんだいメディアテーク〉(宮城県仙台市)で開催されています。本展の参加作家は、東日本大震災以降に〈せんだいメディアテーク〉とさまざまに協働してきた10組の作家たちです。

古くは民話に例をみることができるナラティブですが、本展では、今日わたしたちがアートと呼ぶ表現もその一形態として捉えます。アートを、個々の出来事や体験を他者へ開いていくさまざまな「語りの術」と捉えたとき、アーティストたちはそれぞれの観点からどのような表現を見せてくれるのでしょうか。

「ナラティブの修復」展のおすすめ作品をご紹介

ここでは、10組の参加作家の中から、3組の作品をご紹介します。

「まちがい劇場」 工藤夏海

工藤夏海さんは、2017年から小さな手作りの人形を用いた即興人形劇「まちがい劇場」をはじめました。見るよりも、参加することに主眼を置いた人形劇では、人形劇未経験者との即興のやり取りが行われます。人形を介することで可能になる対話の魅力や、人形劇が人に及ぼす影響について工藤さんは考え続けています。

今回は、これまでに制作した人形たちを集わせて物語を構成するとともに、即興人形劇を発表します。果たして、どのような即興劇が生まれるのでしょうか。

セーターをきた、しろいねこのにんぎょう。まえにはしんぶん。そして「むしょくそうだんじょ」というふだがでている
「まちがい劇場」の役者である、人形たちが並びます

「11歳だったわたしは」 小森はるか+瀬尾夏美

2011年3月、東日本大震災の災害ボランティアとしてともに東北沿岸へ向かったことをきっかけに、ユニットとしての活動を開始した、映像作家の小森はるかさんと画家・文筆家の瀬尾夏美さん。2012年より3年間、岩手県陸前高田市に住まいを移し、被災した土地と人に寄り添いながら記録する活動を続けてきました。現在は拠点を宮城県仙台市に移し、それぞれの表現手法を活かしながら、風景と人々の言葉の記録を、展示や上映、書籍によって発表しています。

今回は、震災に関する多数の聞き取りの中で気付いた、“11歳という時期が人生に与える影響力”に着目し、幅広い年齢層の人に11歳の記憶を尋ねます。個人の語りを通じて、地域や日本社会の年代記を浮かび上がらせようとする試みです。

みぎておくにえいぞう、てまえにはテキストのてんじがならんでいる
様々な年齢層の人が「11歳」の時期を回想する展示、「11歳だったわたしは」

「追廻住宅記録/最後の家(仮)」 佐々瞬

宮城県生まれのアーティスト、佐々瞬さんは、東日本大震災後、半壊した宮城県沿岸部・新浜の住宅を借り受け、アーティストや建築家らを招聘するプライベートなレジデンスプログラムを企画してきました。

地域社会や共同体のあり方に焦点を当てる佐々さんが、今回の展示でリサーチに取り組んだのは、宮城県仙台市の追廻(おいまわし)地区。戦後、空襲で焼け出された市民らのための仮設住宅が立ち並んだこの地区は、その後公園計画をめぐり、長いこと住民と市の対立が続きました。現在は公園として整備されようとしているこの土地の記憶を伝え、保存するための資料館のプランを展示します。

ひだりてまえに、リサーチしたとちのえいぞうがうつしだされている
追廻地区の土地の記憶を訪ねる「追廻住宅記録/最後の家(仮)」

より多くの方が展示を楽しめるよう、手話で語る映像も

その他にも、ドローイングや写真、歌、など、様々な手法や観点で表現された10組の「ナラティブ」 が会場に集います。

また、より多くの方が楽しめるように、開催概要と展示作家の言葉については、手話動画が制作されています。(開催概要は事前に見ることができますが、展示作家の言葉は、会場内のQRコードより閲覧できます。)

しゅわどうががさいせいされる、QRコード
手話動画は、来場時に配布される資料、または会場内に設置されているQRコードから閲覧が可能です

東日本大震災から10年というこのタイミングで、表現者たちが土地の記憶に思いをはせながら、過去・現在・未来の社会を見据えて形に表した展覧会。アーティストの表現を通し、社会に生きるさまざまな人の“もの語り”に耳を澄ませに会場を訪れてみませんか 。