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「社会的孤立」とは?協力型ゲーム『コミュニティコーピング』で地域の困りごとを知ろう
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オンラインばんのボードとカード
「オンライン版」のプレイ人数は4名(「リアル版」は4~6名)。プレイ時間の目安は1~2時間

「社会的孤立」を知る、協力型ボードゲーム『コミュニティコーピング』

近年、単身世帯や老老世帯などの増加に伴って、地域のなかでつながりを持たない「社会的孤立」の問題が認識されるようになってきました。「社会的孤立」の状態にあると必要な時に必要な支援が届きづらく、困りごとを一人で抱えた結果、ひきこもりや孤独死などに至ってしまう場合もあります。

今回ご紹介する『コミュニティコーピング』は、そうした社会の置かれている状況を知り、一人ひとりができることを学べる協力型ボードゲームとして、2020年10月に誕生しました。開発したのは、相続などさまざまな相談事業を営んできた〈一般社団法人コレカラ・サポート〉です。

プレイヤーはまちの住民のキャラクターを担い、それぞれの得意なことを活かしながら地域に暮らす人びとの話を聞き、問題の解決に導きます。ゲームを通して、他者の困りごとの整理の仕方や読み解き方を学ぶだけではなく、問題を包括的に把握したのちに必要な人や地域資源につなげる「社会的処方」の考え方を知ることができます。

リアルばんのゲームちゅう、カードをめくろうとするようす
最初にPCブラウザを使用するオンライン版をリリースした後、クラウドファンディングで資金を集め、2021年7月にリアル版のボードゲームを制作

『コミュニティコーピング』は自治体や学校教育のワークショップや研修の一環としても採用され、すでに338名(2021年10月末時点)の方がオンライン版・リアル版でプレイしています。

直近だと、2021年12月11日(土)に東京都の文京区民センターで「リアル版体験会」、12月17日(金)に「オンライン版体験会」が開催予定。また、ゲームのファシリテーターを担うための「認定ファシリテーター養成講座」も2022年1月15日(土)に行われます。こうした体験会や養成講座は、以降も定期的に開催される予定です。

困りごとをひとりで抱えてしまう状態「社会的孤立」

家族や人間関係のこと、健康のこと、お金の問題、住まいや生活の悩み……。私たちは一人ひとり、さまざまな「困りごと」を抱えながら生きています。

特に現代は利便性の高いサービスが多く普及しており、人との日常的なつながりがなくても生活できるケースが増えました。しかし、苦しみや不安を誰にも相談できず抱えたままにしてしまう「社会的孤立」状態に陥ることも増え、昨今大きな問題となってきています。

そうした状況を解決するアプローチのひとつに「社会的処方」があります。社会的処方とは、困りごとを抱えた人に対して「地域の人とのつながり」を処方する、ひとりで悩まなくてすむための仕組みづくりのこと。

この仕組みを構築していく際に大切となるのが、地域のなかで誰が何を得意としているのかを知っている「リンクワーカー」と呼ばれる人びとです。人々の間に立ち、専門家へとつなげていく役割を持つリンクワーカーを増やそうと、〈コレカラ・サポート〉は『コミュニティコーピング』を開発。ゲームを通して、リンクワーカーを担える人がすでに地域にたくさんいること、自分自身も「地域に目を向けるとリンクワーカーになれる」と気づくことなどを狙いにしています。

プレイヤーカード。せわずきなおばちゃん、けんしゅうちゅうのいだいせい、カフェのマスター、ほけんがいこういん、こじんけいえいのりはつてん、せいかつしえんコーディネーター、じもとのそばや、じちかいのかいちょうの8にん
ゲーム『コミュニティコーピング』内で各プレイヤーが演じることのできる、地域の住民

クリア率は「約1割」。自分と現実社会との接点をつくるゲーム

ゲームは、2021年のとある地域を舞台にスタート。地域内の6つの地区で毎年発生し続ける「困りごと」を、プレイヤーが住民の一人として対処し続けます。「困りごと」を抱えた住民が一定数を越えない状態をキープしたまま、2030年を迎えることができればクリアです。

リアルばんゲームのボードのうえにカードがならんでいるようす
プレイヤーのターンが1周すると1年が過ぎる設定。プレイヤーは毎年1回、A〜F地区のいずれかの「住民カード」をランダムに引く。住民の悩みを解決に導きながら、年度の終わりにどの地区にも4枚以上の住民カードがない状態を目指す

プレイヤーがゲーム中行えるアクションは3種類。住民の「困りごと」の話を聞いて、何に悩んでいるのかを明らかにする「COPING(コーピング)」、相談できる専門家に会いに行く「つながり」、明らかになった悩みを各専門家に解決してもらう「処方」です。

プレイヤーは住民の抱える「種類」や「深度」の違う悩み、突然発生する「イベント」などに向き合いながら、領域の違う専門家それぞれの得意を活かすような支援を行っていきます。

オンラインばんをプレイしているさいちゅうのようす。ウェブブラウザのなかのボードと、カメラごしのプレイヤーのかおがうつっている
〈こここ〉編集部メンバーでオンライン版を体験したところ、2026年でゲームオーバー。〈コレカラ・サポート〉の千葉晃一さんによれば、現実社会を投影して難易度は高く設定されており、「クリアできるケースは1割ほど」とのこと

ゲームは終了後の振り返りまでがセット。用意された質問カードをめくりながら、「この状態はどんな現実を意味するか」「自分たちに何ができそうか」などの感想をシェアしていきます。

〈こここ〉編集部のメンバー間でも、「声をかけたり気にかけたりが解決の第一歩なら、本当は地域のなかで誰もが動くことができるかも」「一人ひとりの得意なこと、スキルや専門性など、お互いに理解しておくのが大切」「複雑な悩みは、全体の崩壊を防ぐ視点だと後回しにされてしまうことがあるが、それでいいのか」といった議論がなされました。

ファシリテーションを務めてくださった〈コレカラ・サポート〉の代表理事・千葉晃一さんは、「大切なのはクリアではなく、ゲーム体験で得た気づきを次(実社会)に活かすこと」と説明。まずはこれからの社会で起き得る事態を知ることが、社会を変えるきっかけになると考え、ゲームの普及に取り組んでいるのだそうです。

「楽しい」や「嬉しい」から、問題解決のヒントを学ぶ

〈コレカラ・サポート〉は、ファイナンシャル・プランナーとして活動していた千葉さんが、東日本大震災を経て、高齢者から色々な悩みの相談を受けることになったことをきっかけに設立。人と人が支え合う社会の実現を目指し、相談支援事業、空き家を活用したコミュニティスペースの運営などを行ってきました。

これまでの経験から、人が動く原動力には「楽しい」や「嬉しい」といったポジティブな感情が大切と感じていたそうです。高齢化社会が進むなかで、「社会的孤立」を解決するヒントを学べるツールとして『コミュニティコーピング』を開発しました。

じゅうみんカードのはらださん、50だいだんせい、おかねレベル1のなやみ、もとかいけいし
ゲームの登場人物は、〈コレカラ・サポート〉が出会ってきた専門家や地域の人がモデル。知らない住民ではなく、ひとりの「誰か」であることを意識しやすいよう、住民や専門家すべてに名前が表記されている(画像は〈こここ〉編集部でプレイしたときのもの。この『原田さん』のように自らの悩みが解決された後、専門家としても活動してくれる場合もある)

『コミュニティコーピング』には「現実の世界でもつながりをつくるきっかけとなってほしい」という想いが込められており、月々開催される「オンライン版体験会」「リアル版体験会」でゲームを体験できるほか、ゲームを広める「認定ファシリテーター養成講座」も受けることができます。

認定ファシリテーターは、自らの住んでいる地域で、地域資源や専門職の重要性、それをつなぐ役割の必要性を広め、「社会的処方」を実践するきっかけを生む存在。一見シリアスな問題について、きっかけは何であれ関心を持つ人を増やせたら、と〈コレカラ・サポート〉では考えています。

そうした広がりも意識しながら、一度体験会でボードゲームを楽しんでみるのはいかがでしょうか。