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全国の福祉施設のお菓子づくりをサポートする〈sweet heart project〉
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全国の「福祉のお菓子」を支援する〈sweet heart project〉

贈られてきたお菓子や、たまたま購入したお菓子がおいしくて、製造元を調べたら福祉施設だった。そんな経験を持つ人もいるのでは?

素朴だけれど、丁寧につくられたのがヒシヒシと伝わってきて、やさしさとおいしさが口の中に広がって。食べ終わる頃には「見かけたら迷わず買う!」とファンになっていたり。

かつては、屋外イベント、公共施設の販売ブース、バザーなどで売られていた「福祉のお菓子」。近年はオンラインで販売を行う施設もあれば、航空会社の機内販売、百貨店に卸す施設もあり、高級スーパーのロングセラー商品になったお菓子もあります。それだけ高品質な福祉のお菓子が、全国各地で生み出されています。

今回ご紹介する〈sweet heart project〉は、お菓子づくりを事業とする福祉施設と連携し、オンライン販売や全国の企業向け販売を行うプロジェクト。ただ販売するだけではありません。パティシエによるお菓子のプロデュースや、原材料の共同購入、障害のある人が描いたアート作品をパッケージに起用するなど、さまざまなサポートを目的としています。

クッキーとコーヒーを詰め合わせたギフトボックスの写真。お菓子のパッケージには、障害のある人が描いたチンパンジー、トラ、シマウマなどの動物のアート作品が起用されている
プロジェクトに賛同するアートプロデューサーに協力を得て、障害のある人が描いたアート作品を商品のパッケージに起用

お菓子の食べ比べセットのほか、サブスクのコースも!

〈sweet heart project〉と連携している福祉事業所は、焼き菓子、焙煎にこだわったコーヒーなどを手がける約30施設(2022年6月現在)。

オンラインショップでは、施設ごとのお菓子の詰め合わせのほか、毎月お菓子が送られてくるサブスクリプションコースや、さまざまな施設のお菓子が一箱に詰め合わされ、食べ比べを楽しめる「SHPセレクション」が販売されています。

さまざまクッキーとコーヒーを詰め合わせたギフトボックスの写真。
お菓子とコーヒーがセットになった「SHPセレクション」。厚みのあるクッキー、薄手のクッキー、小麦の味わいを大切にしたもの、バターの風味が際立つもの、少し塩味がきいたものなど、同じクッキーでも施設によって味わいも食感もまったく違っておもしろい!

そして、お菓子タイムには飲み物も欠かせません。「SHPセレクション」には、徹底した品質管理が行われる希少なスペシャルティコーヒーの生豆を、障害のある人が選別して焙煎する神奈川県鎌倉市の〈りっしん洞〉、「僕らは耳で焙煎をする」をキャッチフレーズに、視覚障害のある人がコーヒー豆のハゼ音を聞き分けて焙煎する埼玉県上尾市の〈領家グリーンゲイブルズ〉のコーヒーがセットになっているものもあります。

〈sweet heart project〉を立ち上げた理由とは?

〈sweet heart project〉の実行委員長を務める東光篤子さんがこのプロジェクトを立ち上げたのは、2020年。

小規模の障害者支援施設を中心に助成事業を行う〈社会福祉法人 木下財団〉に勤務する東光さんは、さまざまな福祉施設への訪問や、関係者から話を聞くなかで、個々の施設だけでは解決できない課題が多くあることを実感してきました。

また、同法人の調査によると、助成先の福祉施設の約20%がお菓子づくりを行っていて、さらに各施設が感じている課題には共通点が多いこともわかりました。

その課題とは、おいしいお菓子はつくれるけれど、それ以上に商品力を高めることが難しかったり、販路が限られていたり、という悩み。そもそも、モノがあふれる現代社会においては、ブランディングやマーケティングにも注力しなければ、その存在や価値は知られづらい状況にあります。

そのような悩みを持つ施設をサポートし、福祉施設のお菓子のすばらしさを広め、施設の自立を支援したいと考えていた東光さん。そんな折に新型コロナウイルス感染症が蔓延。福祉施設からは、イベントなどに依存していたお菓子の販売が激減し、工賃の捻出が難しいといった切実な声が寄せられるようになっていました。

東光さんはいよいよ〈sweet heart project〉実行委員会の立ち上げを決意。

仲間を募ると、さまざまな分野の専門家が手を挙げます。「こんなことができる」といった提案やアドバイスを参考にしながら、プロジェクトがスタートしました。

トップパティシエをはじめとした、多分野の専門家が集結

先述の通り、実行委員にはアートプロデューサー、マーケティング、ジャーナリスト、金融、広報など、東光さんの思いに賛同する多分野の専門家が参加しています。

そのメンバーの中には、世界的なコンクールで多数の受賞歴を持ち、〈パティスリーカメリア銀座〉でシェフ・パティシエを務めていた遠藤泰介さんも含まれます。

パティシエを務める遠藤泰介さんの写真
パティシエの遠藤泰介さん。福祉施設に赴き、障害のある人たちにさまざまなお菓子づくりのノウハウを伝えている

福祉施設の設備でも製造できるレシピや新商品の開発、技術指導、既存の商品をよりおいしくするためのアドバイスなど、福祉のお菓子をさらに魅力的なものにするためのサポートを行っています。

〈sweet heart project〉と連携する福祉施設〈調布を耕す会〉や〈ふれあい工房ゆめま~る〉では、遠藤パティシエの指導による「ブルードネージュ」を製造・販売。本格的なフランス菓子のおいしさが評判を呼んでいます。

4種のブルードネージュが並ぶ写真
遠藤パティシエが監修し、〈調布を耕す会〉〈ふれあい工房ゆめま〜る〉でつくられているブールドネージュ。左から、フランボワーズ、チョコ、プレーン、抹茶のフレーバー(税込550円)

〈sweet heart project〉のサポートは原材料の購入にも。小規模な施設ではお菓子の大量生産ができないため、原材料の仕入れ価格は割高になりがち。そこで同プロジェクトでは、原材料を共同購入し、安価で施設に提供する仕組みづくりにも取り組んでいます。

トップパティシエのノウハウや商品開発力を学びながら、適切な利益を上げ、お菓子づくりを持続可能な事業にしていく。そのような福祉施設のお菓子づくりの自立を支援するのが〈sweet heart project〉の真の目的なのです。

企業の取り組みからつながる、sweet heart

〈sweet heart project〉のお菓子は、一般向けへのオンライン販売も行っていますが、企業への販路開拓にも力を入れています。

たとえば、福利厚生の一環としてお菓子や飲み物を社員に提供する企業は少なくありません。それらを福祉施設のお菓子にした場合、休憩を共にする社員間のコミュニケーションが広がったり、障害のある人への理解が深まったりするかもしれません。

実際に、社内イベント時に社員へ〈sweet heart project〉のお菓子を配ったり、詰め合わせセットを営業先への手土産に採用したりと、社内外で活用している企業があります。その取り組みのなかで、社員や取引先が福祉施設のお菓子のおいしさを知るきっかけになり、支援への共感にもつながっているのだとか。

さらには、手土産からプロジェクトの存在を知り「自社でも採用したい」という企業からの問い合わせもあるといいます。

お菓子づくりや販売支援からスタートした〈sweet heart project〉ですが、今後は福祉のさまざまな課題に対して、多様な人と考え、取り組むコミュニティを目指しています。お菓子でおいしく支援しながら、プロジェクトの新たな活動にも注目を!