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コロナ禍でも立ち止まらず、仕事を継続させるには?〈たんぽぽの家〉が書籍『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』を発行
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白地に青い文字と青いイラストが描かれた『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』の表紙

障害のある人の働き方や、福祉事業所の仕事づくりのヒントになる一冊

「ソーシャル・インクルージョン」をテーマに、アートとケアの視点からさまざまな価値提案を行う市民団体〈一般財団法人たんぽぽの家〉が、2021年9月に『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』を上梓しました。

新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で、生産活動を縮小・ストップせざるを得なくなり、かつてない苦境に立たされている福祉事業所が全国にたくさんあります。たとえば、取引先企業からの受注がなくなったり、商品を卸す販売店が休業・営業自粛したり、参加していた販売イベントが軒並み中止になったり。もちろん、厳しい状況にあるのは福祉事業所に限った話ではありません。しかし、社会システムの一端を担う福祉事業所もまた、さまざまな影響をうけているのは確かです。

〈きょうされん(旧・共同作業所全国連絡会)〉が2020年7月に実施した調査によると、全国348か所の福祉事業者のうち81%が減収。それに伴い、障害のある人の1か月の工賃を大幅に下げざるを得ないという状況が続いています。

しかし一方で、コロナ禍という苦境のなかでも、新しいアイデアで既存事業を発展させたり、異業種に挑戦したり、オンラインやデジタル技術を活用したりと、事業や生産活動をストップさせることなく、むしろコロナ禍以前よりも収益を上げている事業所も存在します。

本書は、さまざまな工夫で先進的に仕事をつくる事業所や団体の活動を取材し、コロナ禍の今、またコロナ禍以降、障害のある人の働き方や、福祉事業所の仕事づくりのヒントになるような事例を集め、紹介しています。

<こんな悩みや疑問を持つ方にオススメ>
・ほかの福祉事業所の事業例を知りたい
・既存の福祉事業を見直したい
・障害のある人の新しい仕事を生み出したい
・事業所で働くメンバーのモチベーションを上げたい
・障害のある人の工賃を増やしたい
・事業所からの就労率を上げたい
・地域、企業、行政と連動・連携したい
・福祉事業所という枠にとらわれず、障害のある人の就労の場を社会の中に生み出したい

『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』の1ページ

福祉事業所の全国調査をもとにした本の内容とは?

本書を制作するにあたり、〈たんぽぽの家〉では2020年11月から2021年8月にかけて、全国の障害福祉サービス事業所を中心とした688か所にアンケート調査を実施してきました。うち回答が得られた165件の多様な業種や業態の事例調査と分析を行い、そこで得られた知見をもとに、本書は構成されています。

「今ある事業を発展させる」「異業種に挑戦する」「地域と連携する」など8つの章が設けられ、福祉事業所、NPO法人、障害のある人や就労に困難を抱える人などを積極的に受け入れる企業や団体など、全16の事業の活動内容が紹介されています。

2章「社会の声に応える」で紹介されている〈社会福祉法人進和学園〉では、トイレ清掃、食品加工、マスク制作、ラジオ番組制作から発信まで、地域社会から声がかかった仕事に可能な限りチャレンジし、その結果、大企業や行政との連携に至った事例が紹介されています。

4章「発信とアーカイブする」で紹介されている〈NPO法人 スウィング〉では、これまでも自社サイト、フリーペーパー、ブログ、SNS、動画配信サービス、ラジオ、書籍など、あらゆるメディアを活用してきましたが、コロナ禍を受け、映像配信を想定した展覧会などを実施。固定観念にとらわれない、話題を呼ぶ発信活動が紹介されています。

ユーモラスなイラストや写真で表紙を飾る〈NPO法人 スウィング〉のフリーペーパーが並ぶ様子
〈NPO法人 スウィング〉が発行するフリーペーパー

また7章「オンラインとデジタル技術を活用する」では、オンラインショップの強化、定期的なSNSでの発信、デジタル工作機械の導入、バーチャル福祉施設の計画案の話など、次世代の福祉の在り方のヒントになるような事例が綴られています。

話は国内だけではありません。福祉活動に関わる台湾のデザインスタジオや、障害児・孤児・貧困家庭の子どもを支援するベトナムの団体の事業紹介も。他国文化ならではの視点やアイデアにも注目です。

ベトナムの子どもたちが描いたイラストを本人達が掲げる様子
「Playful as a child(子どものような遊び心、楽しさ)」を理念に掲げる、ベトナムの社会的企業〈Tohe〉が行う「アートクラス」の様子

取材班の質問に事業者が答えるインタビュー形式の構成になっている本書。なかなか聞きづらいような踏み込んだ話も、取材班の率直な質問によって、事業の仕組み、手法、利用者の単価決め、事業運営の秘訣などが具体的に紹介されています。

また、事業や運営の話だけでなく、福祉への考え方や、自身の生き方について述べる事業者が多いのも本書の特徴です。その思いを貫くことで周りの信頼を育み、仕事につながり、収益につながり、それがメンバーの工賃アップにつながっていく――「福祉の考え方=幸せの考え方」であることを改めて自覚させてくれるような、大切な心構えも多く描かれています。

書籍の1ページ
『コロナ禍を契機とした障害のある人との新しい仕事づくり』の1ページ

さらに、〈株式会社リ・パブリック〉の共同代表・田村大さん、〈NPO法人グリーンズ〉の代表・鈴木菜央さん、〈NPO法人エイブル・アート・ジャパン〉の代表理事・柴崎由美子さんのコラムも収録されています。

コロナ禍では、事業にさまざまな課題を抱えるも、自社だけではアイデアに限界があったり、新しい取り組みに不安があったりと、なかなか前に進めづらい企業や団体も多いのではないでしょうか。そんな時こそ、新たなチャレンジを重ねてきた福祉事業所の取り組みに目を向けてみませんか? 新しい発見や、目から鱗のアイデアに出合え、新たな活動に向けて一歩踏み出す力になるはずです。