福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【写真】微笑んでこちらを見るもりしたしずかさん【写真】微笑んでこちらを見るもりしたしずかさん

「所得」だけではなく「可能性」も分かち合う。障害のある人とともに仕事をつくる〈Good Job!センター香芝〉センター長・森下静香さんの仕事 福祉のしごとにん ― 働く人のまなざし・創造性をたずねて vol.03

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「はじめは特別、福祉の仕事に興味があったわけではないんです。でもこの道を行けば、人生で関わる人がもっと増えるんじゃないかという、漠然とした予感がありました」

福祉の仕事に就いた理由を尋ねると、意外な答えが返ってきました。「福祉のしごとにん」第3弾にご登場いただくのは、奈良県香芝市の〈Good Job!センター香芝〉センター長を務める、森下静香さん。20年以上、福祉業界で働く森下さんは、どのような視点を持って働いてきたのか、お伺いしました。

森下静香さん プロフィール

Good Job!センター香芝センター長。1996より、たんぽぽの家にて、障害のある人の芸術文化活動の支援や調査研究、アートプロジェクトの企画運営、医療や福祉などのケアの現場におけるアートの活動の調査を行う。2012年より、アート、デザイン、ビジネス、福祉の分野を超えて新しい仕事を提案するGood Job!プロジェクトに取り組み、2016年度グッドデザイン賞にて、金賞受賞。2016年9月にGood Job!センター香芝センターを開設、同時にセンター長に就任。編著に『インクルーシブデザイン−社会の課題を解決する参加型デザイン』、『ソーシャルアート−障害のある人と社会を変える』(いずれも学芸出版刊)など。

障害のある人と芸術文化活動に取り組む「コミュニティ」

【写真】グッドジョブセンターの外観
設計は o+h / 一級建築士事務所大西麻貴氏+百田有希氏。建築テーマは「町並みをつくるアートの森」。日本財団、香芝市をはじめ、様々な方の支援を受け生まれたそう。写真:増田好郎

森下さんが働く〈Good Job!センター香芝〉は、障害のある人と共に社会に「新しい仕事をつくり出すこと」を目指して生まれた施設です。奈良市でアートを通して障害のある人の社会参加と仕事づくりを進める〈たんぽぽの家〉の考え方や姿勢が受け継がれている、と森下さんは教えてくれました。

〈たんぽぽの家〉は1973年にボランティアグループ〈奈良たんぽぽの会〉を設立したことが、はじまりでした。

重度の身体障害のある子どもが養護学校卒業後に地域と関わりを持てる居場所をつくるため、彼らの親たちがさまざまな人たちと協力し、立ち上げたそうです。

1980年には、身体障害者通所授産施設〈たんぽぽの家〉をオープン、定員は30名、これは施設として当時最小の単位でした。

大規模な施設にすると、どうしても管理的にならざるえを得ない部分もあります。そうではなく、障害のある人や関わるボランティアの方たちもふくめてそれぞれが関心を持ちよりながら自律的に運営する場をつくろうという考えがありました。

障害のある人が地域に住みながら通い、陶芸や織物、絵を描くこと、ときには一緒に外出したり宿泊したりといった、文化的な活動から生まれる関わりを大切に運営してきたんです。

1995年、〈たんぽぽの家〉は「​アート」と「ケア」の視点から障害のある人たちと活動してきた経験をもとに、全国に向けて「エイブル・アート・ムーブメント」を展開。「障害者アート」を「エイブル・アート​(可能性の芸術)」という視座から見直す動きを、全国の福祉施設や企業、芸術にかかわる人たちと連携して進めます。

2004年には、日本初の障害のある人の総合的なアートセンターとなる「たんぽぽの家アートセンターHANA」を開設。

さらには2007年、たんぽぽの家は東京、福岡のNPOと共同で「エイブルアート・カンパニー」を立ち上げ、障害のある人がアートを仕事にできる環境づくりに尽力しています。

日本における「アート」と「ケア」の先駆的取り組みを手がけてきた〈たんぽぽの家〉。森下さんは大学卒業後、ボランティアとして関わった後に正職員として就職しました。以来、障害のある人の芸術文化活動の支援や調査研究など、さまざまなプロジェクトを担当しています。

【写真】森下さんが関わってきたプロジェクトの冊子が17冊ほど置いてある
森下さんが関わってきたプロジェクトの一部(提供写真)
【写真】グッドジョブ展で感覚に登壇者がプレゼンテーションしている
2018年に渋谷ヒカリエで開催した Good Job!展 Good Job!Award のプレゼンテーションの様子。(提供写真)

2016年に〈Good Job!センター香芝〉が開設されると、森下さんはセンター長に就任。障害のある人と共に、新しい仕事づくりに取り組みはじめます。

開設のきっかけは私たちの活動を知る方がご厚意で土地を寄贈してくださったことでした。

ただしそれ以前、香芝市を訪れたことはなく、つながりもありません。活動としての足場がない地域で、施設を新たに建てるところから始めることは大きな挑戦でした。

地域で一から関係性をつくる必要を感じた森下さんは、「コミュニティ」を意識しながら仕事に取り組みます。

〈Good Job!センター香芝〉が障害のある人や地域の人にとってコミュニティになるには、関わる人と共通の思い出を積み上げていくことが大切だと思いました。

そのため開設直後は、日常の関わりに加え、マーケットやコンサートのようなイベント、パーティーなどみんなで楽しめる催しを積極的に取り入れていきました。

【写真】ヒップホップMCのShing02やパフォーマンスユニットcontact Gonzoらが、マイクを持ってパフォーマンスしている
2018年、京都市立芸術大学のプロジェクト「状況のアーキテクチャー」に参加。ヒップホップMCのShing02やパフォーマンスユニットcontact Gonzoらとコラボレーション(提供写真)
【写真】〈Good Job!センター香芝〉北館 studioにある一室。こどもたちが休んでいる
〈Good Job!センター香芝〉北館 studioにある一室。イベント時に託児スペースとして使用することも(提供写真)

森下さんの「仕事をつくる」仕事のつくり方

現在〈Good Job!センター香芝〉は、就労継続支援A型事業(※注1)・就労継続支援B型事業(※注2)・生活介護事業(※注3)の3つを運営しています。あわせて定員は計40名ですが、現在50名の登録があり、1日あたり平均30人ほどが通っています。

注1 就労継続支援A型事業…一般就労の難しい方が、雇用契約を結んだ上で支援のある職場で働くことができる福祉サービス。

注2 就労継続支援B型事業…障害のある方が一般企業への就職が不安、あるいは困難な場合に、雇用契約を結ばないで軽作業などの就労訓練をおこなうことできる福祉サービス。

注3 生活介護事業…介護を必要とする方に対して、創作的活動・生産活動の機会の提供のほか、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行う福祉サービス。

「施設をただ利用してもらうだけではなく、できる限り一人ひとりの個性がいかせる環境で仕事を覚えていただき、一緒に活動していける関係性を築きたい」と森下さんは語ります。

〈Good Job!センター香芝〉の仕事は、多岐にわたりますが、大きく占めるものが2つあります。ひとつはオリジナル商品や依頼された製品をつくる「製造」の仕事です。

【写真】張り子をつくるグッジョブセンターに通うメンバー

もうひとつは「流通の仕事」。

自分たちがつくったものだけではなく、全国、また海外の障害のある人がかかわってつくられた商品を〈Good Job!センター〉の実店舗やオンラインショップ、イベントなどで販売したり、各地のお店に卸す業務があります。

【写真】仕入れを管理するメンバーのひとり、青いお面をかぶっている

そもそも、ひとくちに「製造」や「流通」といっても、さまざまな工程があります。

たとえば、「流通」を担う「GOOD JOB STORE」には、ものをセレクトして入荷、検品、データベースへの入力、値札のシール貼り、店頭ディスプレイ、写真撮影や加工、オンラインストアへの登録、棚卸し、SNSなどでの発信など。

また郵送用の箱にイラストを描いたり、仕入先に取材をしてメールマガジンで記事を書いたり、ラッピング絵師としてご依頼を受けたりなどの業務もあるんです。

2021年12月現在、全国と海外4カ所約130の仕入先があり、3,000〜4,000点の商品を扱っています。民間が運営する障害のある人の関わる商品を扱うお店としては多様な商品を扱っていると思います。

【写真】センター内にある商品の数々、3段にわかれて展示されている
さまざまな人の関わりによって生み出されたオリジナル商品や依頼をされてつくった商品は、開設5年で100種類を越えるそう。
【写真】オリジナル商品の張子「鹿コロコロ」が5体並んでいる
“今から100年後に残る郷土玩具”を目指し生まれたそう(提供写真)

オリジナル商品の張子「鹿コロコロ」。日本の工芸をテーマに商品開発・販売を手掛ける〈中川政七商店〉と〈Good Job!センター香芝〉がコラボレーションし生まれた商品です。

センター開設準備をする中で、「Fab機材」と呼ばれるデジタル工作機械があったらおもしろい取り組みができるのではないかと考えていて。そのタイミングで中川政七商店さんから「張り子を作ってもらえないか」とお声がけいただいたんです。

詳しく話を聞くと、張り子木型をつくる職人も張り子を貼る職人も減っていると。

それならば、3Dプリンターで出力した樹脂の型を使用し、角や足の紙パーツはレーザーカッターで切りだして、その張り子や組み立て作業を手しごとで仕上げたらいいのではないかと。

そこから伝統工芸とテクノロジーを掛け算したプロダクトが生まれました。この鹿コロコロの事例がきっかけとなり、そこからオリジナルの張り子の商品のバリエーションが広がりましたし、ご依頼をいただくことも増えたんですよ。

目の前の課題から社会提案する

商品づくりや仕事づくりと並行して、〈Good Job!センター香芝〉ではさまざまな研究・開発プロジェクトを展開しています。

たとえば、「鹿コロコロ」で関わることになったものづくりの新技術は、「IoTとFabと福祉 福祉の現場からみる、新しい技術としごと」というプロジェクトにつながり、いまでは全国の関心のある福祉施設やFab施設の方たちとの情報交換のネットワークに発展しています。

一見、福祉とはつながりがなさそうなテーマにも関心を示し、プロジェクトを立ち上げてはスタッフや外部の専門家とも連携しながら旗振り役を担う森下さん。

それらのテーマは、「私自身が主体的に見つけるというよりも、周りの人から与えられることや偶然の出会いからはじまることもあるし、むしろ課題や現場のニーズから生まれることが多いです」と言います。

【写真】配送用の段ボールに「ハイチーズ」と書かれている

「著作権」や「知的財産権」について学ぶ・考える「知財学習推進プロジェクト」についても、活動の中で感じた課題から出てきたテーマなのだとか。

障害のある人の作品展示が社会に広がっていった2000年代、私たちの元には著作権についての質問が多く寄せられました。

たしかに、それまで障害のある人の作品に関する権利をどう守るか、対価をどう考えるか、商品や企画に展開する場合の契約上の注意点など、法律的な知識が福祉の現場にはなかったんです。

私たちもトラブルの発生頻度や関心の高さから、二次利用や特許取得などを事業の変遷に応じて学んできました。

森下さんや〈Good Job!センター香芝〉、〈たんぽぽの家〉運営チームのユニークな点は、そういった学びを組織の内側で閉じない点にあります。

公開型の研修会の実施や冊子の発行に加え、近年には知的財産権を学び深めるためのカードゲーム「知財でポン!」や「ちょいワルクリエイターず」を開発。難しく思われがちな知財を楽しく学べるツールまで生み出します。

【写真】複数名がカードを手元にもちゲームをたのしんでいる
知的財産権を学び深めるためのカードゲーム「知財でポン!」。写真:衣笠名津美

目の前の課題に向き合い、知見や解決策を社会に向けて公開していくことは、常に意識しています。

現場が身近にあるからこそ、どのプロジェクトも毎回新鮮な気持ちで楽しいんです。楽しみながら、私たちが発見したことや試行錯誤、失敗を他の現場の方たちにも共有していきたいと思っています。

“障害のある人のモノづくり”も“伝統工芸”も同じように関心がある

福祉業界に止まらず、さまざまな分野と連携しながらプロジェクトを立ち上げている森下さん。しかも、そこから生まれたプロダクトや成果物はどれも対象分野に詳しくない人も興味を持ちやすいようアプローチ方法が練られたものばかりです。

内と外を繋ぐ着眼点やバランス感覚を、森下さんはどのように養ってきたのでしょうか?

障害のある人のモノづくりも表現も伝統工芸も、私の中にはものすごく普通の関心ごととしてあります。プライベートでもそれらの分野の現場や催しに足を運ぶこともあります。

仕事とプライベートの境目がないというか、関心のあることを仕事にできているというか、やっているうちに好きになってきたというか。だけど、そうした働いている人の動機や働き方はそれぞれなので、私の考えをスタッフに押し付けないようにしなきゃと気を付けています。

今では「ワークライフ・バランス」や「働き方改革」が叫ばれ、仕事時間を削減したり、仕事とプライベートを切り分ける働き方を選択する人も増えています。

しかし、森下さん自身は「仕事での出会いがプライベートにつながることもあれば、逆もあり、それが楽しい」と言います。境界を超えた好奇心や関心が、境界を超えた活動につながっているのかもしれません。

【写真】もりしたさんやメンバーがマイクを持って何やらパフォーマンスをしている
(提供写真)

森下さんにとって「働く」とは?

多くの人にとって切っても切れない「働く」こと。〈Good Job! センター 香芝〉はその名のとおり、「仕事」を中心テーマに障害のある人と活動をつくっていく場所です。森下さんご自身は、どんな思いで自身の仕事に取り組んでいるのでしょうか?

Good Job!センターで働いてくれるみなさんにも、やってよかった、楽しかったと思ってもらえるような関わりを大切にしています。

なぜならば、働くことは人生の中で大きな部分を占めているからです。人々にとって働くことの目的は、お金を稼ぐことだけではありません。

広い意味で働くこととは、誰かの役に立つとか、他者と一緒に何かを成し遂げるとか、やりがいをもってなにかをすること。それらは生きていく中で大きな意味も時間も占めていると思うんです。

【写真】手元の紙に線を描き続けるメンバー
【写真】ぎっしり詰まっている

たしかに、賃金を得る活動に限らず、家事や育児、地域活動なども含めると「働く」ことは生活の大きな割合を占めます。とはいえ人生は働くだけでもない。福祉施設のセンター長として森下さんが利用者に願うのは、たった一つのことです。

〈Good Job!センター香芝〉が通う人の生活全部をカバーすることはできません。でも、ここでは仕事を通して社会に関わることで、仕事上での喜びを作ったり生きがいを見つけてもらったり、人と出会ったりして、自信を育んでもらいたいんです。

所得の再分配から可能性の再分配へ

自信を育んで欲しい―。その思いは、〈Good Job!センター香芝〉が掲げる方向性の一つである「所得の再分配から可能性の再分配へ」にも現れています。これは、​​障害のある人が個々の可能性を生かし、主体的な役割を果たすことができる仕組みの創出を目指すことを意味します。

障害のある人は、障害基礎年金を受け取り、社会福祉制度を利用することができます。この制度があり、暮らしや活動の基盤を支えてもらっていることはとても大切なこと。

でも、教育や就労の選択機会はもっとあっていいはずだし、個々の可能性を担保できる社会になってほしい。だから、まずは〈Good Job!センター香芝〉が一人ひとりの可能性を担保できるコミュニティでありたいし、そうした価値観を社会に提案できるようになりたいと考えています。

これは障害のあるなしということに限らず、きっと誰にとっても必要なことだと思います。

可能性を再配分する上で、森下さんが大事にしていることは何でしょうか? センター長として事業全体で重視していることを伺いました。

長年この仕事をしていますけど、いまだにわからないことはたくさんあるんです。ただ、社会福祉を制度だけで見ないようにすることは意識しています。

<たんぽぽの家>の活動を通して消費者運動や公害運動を研究されている方とも関わってきて、大きな権力に対してオルタナティブなものはどうあるべきなのか、わからないなりにバランスを取らないといけないところがあると感じてきました。

また、既存の制度が機能するためには、非制度の部分も充実しないとならないということを実感してきました。だからこそ、制度と非制度のバランスや目標を決めて取り組んでいくことと決めないことがあってもいいというゆるやかさの両方をもつことも私の役割なのかなと考えています。

といっても、ほんとうに私にはできないことが多くて、たとえば、3Dの設計をするとか、ていねいにケーキを焼くとか、植物の様子をみるとか、そうしたことも一緒にはたらいてくれるスタッフやメンバーのみなさんがいるからこそ、運営ができている。こうした場所はチームワークで運営していくことが大事だと日々実感しています。

いつも、障害のある人という言い方をしてしまうことにも戸惑いもあり、できないことや苦手なことは誰にでもあり、できることや得意なことも誰にでもある。それぞれのよさや可能性を引き出しあうことができる環境や関係が大切なのだと思います。

福祉施設が地域のハブとなりソーシャルキャピタルをつくっていく

森下さんのように、福祉に軸足を置きながらも他分野と連携しながら仕事をしたいと考える人はこれから増えていきそうです。この仕事にはどんな人が向いているのでしょうか?

福祉施設の仕事って地域に根付いた仕事なんです。それに社会課題と直結する仕事でもあるので、そういったテーマに向き合いたい人にとってもよい職場だと思います。

また、自分の暮らす地域で「何かしたい」と考える人にも向いていると続けます。

たとえば、お店やモノづくりをしたいという希望をもっているとしたら、福祉の視点をベースにすると、ぐっとやりやすくなるということもあると思います。福祉はさまざまな人にとってはたらきやすい環境や暮らしやすい地域をつくっていくということでもあり、障害のある人や高齢の方と一緒に取り組むことで、より地域に必要なものがみえてくることもあるので。

私自身、「障害」という窓をとおしてみたときに、自分が地域にはたらきかけたいと思う動機をもらってきたような気もします。

【写真】メンバーとスタッフが入り混じってパソコンで仕事をしている

そんな考えを体現するのが、ここまでご紹介してきた〈Good Job!センター香芝〉。目指すのは、地域の信頼や結びつきを醸成するハブのような場所となる場所です。

福祉施設の多くは、税金に支えられています。恵まれた状況にあるとも言えるし、だからこそ福祉施設が社会にできることもあるのではないかと考えています。

私たちの場合は、地域のハブになり、障害のある人や、専門家など多様な人と社会に必要な仕事を生み出していくこと。これからも私たちは、介護や介助だけではない、仕事を生み出す場所としての福祉施設のイメージを〈Good Job!センター香芝〉から発信していきたいです。

【写真】森下さんの肩をもむ1人のメンバー
「大学卒業後、〈たんぽぽの家〉で働き始めた当時は、関西に住み始めたばかり。土地勘のない私を気にかけて、障害のあるメンバーが休日に甲子園や吉本新喜劇などあちこちへ連れて行ってくれました。いわゆる『ケアをする・される』ではない関係性のつくり方が自然と身についた」という森下さん。「今でもトイレ介助や食事介助は、たまたま必要な人が隣にいたらする、くらいの感覚」だそう。(提供写真)

障害や福祉を通して社会に関わったら、人生で関わる人がもっと増えるんじゃないかという、漠然とした予感がありました。

その予感の通り、森下さんは福祉に軸足を置きながらも、気になる課題や興味関心を軸に多様な人や物事と出会い、一見「福祉」からは遠いと思われがちな分野をつなぎ、プロジェクトを生み出し続けています。

〈Good Job!センター香芝〉から生まれた仕事が、地域や社会にどのような変化をもたらし、課題に向き合っていくのか。そしてセンター自体が、地域の豊かさを育んだり、文化を形成していくことにどう関わっていくのか。今後がとても楽しみな取材になりました。


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連載:福祉のしごとにん ― 働く人のまなざし・創造性をたずねて