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アート・コミュニケータがサポートする「障害のある方のための特別鑑賞会」が次回11月11日に東京都美術館で開催
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【写真】展示作品の前でタブレット端末を示す女性と、作品を鑑賞する白杖を持った女性と車いすの女性
「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展での特別鑑賞会の様子(東京都美術館、2024年)

誰もがアートを楽しめるように。受付や移動もサポート

視覚に障害がある、人混みが苦手、移動にサポートが必要など、さまざまな事情を抱えた人がそれぞれのペースで展覧会を楽しめるよう、東京都美術館では「障害のある方のための特別鑑賞会」を開催しています。特別展の休室日に、アート・コミュニケータである「とびラー」が、受付や移動をお手伝いします。

次回は特別展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」にて、2024年11月11日(月)に開催。申し込みは9月30日(月)までです。

アート・コミュニケータと出会える特別鑑賞会

「とびラー」は、東京都美術館の「都美(とび)」と、「新しい扉(とびら)を開く」の意味が含まれた愛称。担うのは、学芸員やアーティストではない、公募で集まった市民たちです。会社員や教員、学生、フリーランス、専業主婦・主夫や退職した人など、バックグラウンドはさまざま。2012年にスタートした東京都美術館、東京藝術大学、市民の三者によるソーシャル・デザイン・プロジェクト〈とびらプロジェクト〉で、学芸員や大学教員、専門家と協働し、アートを介して人と人、作品、場所をつなげる能動的な活動に取り組んでいます。

特別鑑賞会では、さまざまな来場者に合わせたサポートを行います。例えば過去の特別鑑賞会では、車いすを利用していて展示ケースが見えにくい方や、ロービジョンで細かい部分が見えづらい方のために、とびラーの発案で、作品画像を拡大して見られるタブレットを用意。視覚に障害のある方から希望があれば、作品に描かれているものを言葉で説明しながら、一緒に展示室をまわります。また、筆談でのご案内も可能です。エレベーターやエスカレーターへ乗り降りするところなど、鑑賞以外の場面も見守ります。手話通訳も常駐しており、受付や展示室でのコミュニケーションをサポートします。

【写真】車いすに乗った女性と、目線を合わせて会話する女性

また、当日は事前申し込み・定員制のため、移動や人混みに不安がある人でも、安心して過ごせるのが特徴です。

もう一つ、特別鑑賞会の大きなポイントとなるのが、とびラーたちとのコミュニケーション。〈とびらプロジェクト〉は、美術館を「アートを介してコミュニティを育む拠点」ととらえ、①人々の価値観や文化背景の違いなどを尊重すること、②個々人の生き方を孤立させず、社会の中で関係づけていくこと―をめざしています。この日は展示室のあちこちにアート・コミュニケータがいて、さまざまな作品についてお話しながら一緒に鑑賞することができます。

美術館で過ごす時間から生まれるコミュニケーションもまた、特別鑑賞会の醍醐味の一つなのです。

奄美の自然に魅了された、画家・田中一村の生涯に迫る

今回特別鑑賞会が開かれる特別展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」では、田中一村(いっそん)(1908-1977年)の絵画作品、スケッチ、工芸品、資料を含めた250件超を展示。全身全霊をかけて「描くこと」に取り組んだ生涯に迫ります。

【写真】木の近くに腰かけ、絵を描く男性のモノクロ写真
田中一村 肖像
Ⓒ2024 Hiroshi Niiyama

自然を主題とし、奄美大島で晩年を過ごした一村。奄美で描いた「不喰芋(くわずいも)と蘇鐵」や「アダンの海辺」は、代表作とされています。本展では、奄美の〈田中一村記念美術館〉の所蔵品のほか、近年発見された資料や、未完の大作も展示。さらに、自然の映像や文化を紹介する展示を通じて、一村を魅了した奄美の美しさを伝えます。

【画像】赤、黄、緑、白の花や葉の絵画
「奄美の海に蘇鐵とアダン」(1961年1月、絹本墨画着色、田中一村記念美術館蔵)©︎2024 Hiroshi Niiyama

実は、東京・上野の東京藝術大学に東山魁夷等と同級で入学したものの、2ヶ月で退学し、その後独学で絵を模索した経験を持つ一村。生前は「最後は東京で個展を開いて、絵の決着をつけたい」と述べたそう。今回、上野の東京都美術館で本展が開かれることで、彼の願いが叶うことになります。

普段、さまざまな事情でなかなか美術館へ行けないという方。ぜひこの機会に、11月の特別鑑賞会へ足を運んでみませんか。