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効率やコストに縛られないデザインのあり方とは?「TOKYO SOCIAL DESIGN シンポジウム 2025」開催
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タイパやコスパだけじゃない。じっくり向き合うデザインが生み出す価値

「できるだけ効率よく」「ムダなく、スマートに」——。タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスを重視する風潮が強まりつつあります。

もちろん、それらも悪いことではありませんが、時には遠回りしたり、じっくり時間をかけたりすることでしか得られないものもあるのではないでしょうか。そんな仕掛けやデザインがなされているプロダクトが増えることは、社会に思いがけない豊かさをもたらしてくれるかもしれません。

2025年3月8日 (土)、東京・六本木にあるAXIS ギャラリーで「デザインシンポジウム2025 ー誰かのためのデザインー」が開催されます。主催は〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉。生産性やコストにとらわれないデザインのあり方を通じ、ものづくりやデザインの役割について考えるイベントです。

創造・創発のプロセスは、すべての人に共通するプロセスだから

本シンポジウムを主催する〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉は、東京都板橋区を拠点に障害福祉分野のデザインワークを行う任意団体です。運営するギャラリー〈gallery TSD〉では展示イベントも行うなど、2021年4月の設立以来、さまざまな活動を展開しています。

〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉を立ち上げたのは、コミュニケーションデザイナーの加藤未礼さん。知的障害のある人の福祉施設〈小茂根福祉園〉での商品プロデュースに携わったことをきっかけに、福祉現場でのアート活動をスタートしました。

福祉事業所の商品を販売するマルシェ「ス〜ハ〜マーケット」や旧神奈川医療少年院の仮囲いのデザインといった〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉の活動以外にも、福祉とアートのつなぎ手を育成する「TURN LAND プログラム」でコーディネーターを務めるなど、数多くのプロジェクトを手掛けています

昨年に引き続き、今年で2回目の開催となるデザインシンポジウム。福祉現場で多彩なアート活動を行ってきた加藤さんは、デザインについて「もはやデザイナーという職種の人たちが学ぶものではなく、誰しもが学ぶべき1つの概念ではないか」と話します。

スキルや技能の有無ではなく、大切なのは「誰かを想い、目的を達成するために何か新しいものを創造・創発する」こと。それはデザイナーに限らず、多くの職種に共通するプロセスだからこそ、このシンポジウムは福祉やデザインに関わる人だけではなく、幅広い人に開かれた場となっています。

3組のゲストが語る、デザインの可能性

2025年のテーマは「誰かのためのデザイン」。当日は3組のゲストを迎え、トークセッションや交流を予定しています。

【写真】雪が積もった屋外に立つ2人のポートレート
〈Postalco Design Studio〉のマイク・エーブルソンさんと、エーブルソン友理さん

1組目のゲストは、プロダクトデザイナーのマイク・エーブルソンさんと、グラフィックデザイナーのエーブルソン友理さんによるデザインスタジオ〈Postalco Design Studio〉です。

「国内の伝統技術を日々の暮らしに活かす途を見出すこと」をテーマに、革製の書類入れから、衣類、ペン、キーホルダー、バックなど、多岐にわたるアイテムを生み出している2人。職人との連携から生まれるプロダクトは、Utility(実用性)に優れているだけでなく、Warmth(ぬくもり)を感じられるものばかりです。

【画像】片足をあげている角度の異なる、2つの写真が並んでいる
POSTALCOが服を作るときは、可動領域が広い構造にするため、徹底的に身体の動きの解析を行うそう

〈こここ文庫〉では、お2人の17年間の歩みをまとめた書籍『水たまりの中を泳ぐ―ポスタルコの問いかけから始まるものづくり』も紹介しています。

ユーザーの使い勝手を最優先に考え、独自の徹底したリサーチと素材へのこだわりから生まれる唯一無二のプロダクトを手掛けるお2人の哲学に、ぜひ触れてみてください。

【写真】木の建物の中に座る、男性のポートレート
デザイナーの高橋孝治さん(Photo by 高橋率)

2組目は、デザイナーの高橋孝治さんです。2024年から京都芸術大学大学院芸術研究科で准教授も務める高橋さんは、もともと〈株式会社良品計画〉の生活雑貨企画デザイン室で12年間にわたり、生活雑貨のデザインを手掛けてきました。2010年には、無印良品の防災プロジェクト「いつものもしも」の立ち上げも行っています。

2016年からは、愛知県・常滑に拠点を移し、ものづくりを軸に活動をスタート。常滑焼を含む1000年間続くやきものの産地と関わりながら、地元の福祉施設とも協働し、土を基礎としたクリエイティブ集団「スベル」を結成しました。2022年には、常滑急須「chanoma」がグッドデザイン賞 BEST100、グッドフォーカス賞 地域社会デザインを獲得しています。

【写真】
ワークセンターかじまの利用者がフォークを使って制作するスクラッチタイル。制作する人によって表情が変わり、木肌のような風合いが生まれる(Photo by Koji Takahashi)

3組目は、前川雄一さん、前川亜希子さんによるデザインユニット〈HUMORABO(ユーモラボ)〉です。2007年に障害のある人の表現と出会い、2015年からユニットとして活動をスタートしました。

【写真】コートを着て、笑顔でこちらを向いて立つ2人のポートレート
〈HUMORABO〉の前川雄一さんと、前川亜希子さん(Photo by Ami Harita Photography)

「福祉とあそぶ」をテーマに、デザインの力を生かしたプロダクトを次々と生み出している2人。代表的なプロダクトに、福祉施設でつくられる手漉きのリサイクルペーパー「NOZOMI PAPER®︎」があります。

プロダクトをデザインするのではなく、「どうやって社会に浸透させるか」をデザインするのが〈HUMORABO〉のスタイル。社会と福祉を楽しく結びつける彼らの視点から、多くのヒントを得られるはずです。

【写真】工房で、作業着を着てテーブルに向かう男性
南三陸にある〈NOZOMI PAPER Factory〉では、全国から届く不要になった牛乳パックなどを素材に、福祉施設のメンバーが一つひとつ丁寧に漉いてプロダクトを作っています(Photo by Ami Harita)

「デザインとは何か?」、そんな問いを出発点にデザインプロセスを見つめ直すことで、社会はもっと豊かになるのではないか。このシンポジウムは、そんな仮説のもとに開かれる場です。

新しい視点に触れ、デザインについて、そして社会について考えるきっかけにしてみませんか。