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90%の女性が一斉に立ち上がった「アイスランドの1日」を語り継ぐ、翻訳絵本が出版! 映画も同時公開中
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【画像】笑顔でプラカードをかかげる女性たちのイラストが描かれた、絵本の表紙
『本当にやる!できる!必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』(作:リンダ・オウラヴスドッティル、訳:朱位昌併)

「世界で一番ジェンダー平等が進む国」アイスランドの、運命の1日が絵本に

男女の性差によって生じる格差を指す「ジェンダーギャップ」。2025年6月に発表された日本のジェンダーギャップ指数は、148カ国中118位で、前年と同順位でした。1986年の「男女雇用機会均等法」以来、2016年の「女性活躍推進法」などジェンダー平等を推進する法整備が進められてきましたが、経済や政治分野では未だ国際社会から大きく遅れをとっています。

そうしたなか、16年連続で1位を記録している国がアイスランドです。その大きなきっかけとなったできごとが、今から50年前にアイスランドの女性90%が一斉に参加したストライキ。その1日を次世代に伝える絵本『本当にやる!できる!必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』が、2025年10月24日〈ゆぎ書房〉より発行されました。

ポップで温かみのあるイラストとともに描き出した絵本の出版と同時に、ドキュメンタリー映画『女性の休日』も10月25日(土)に 〈シアター・イメージフォーラム〉他、全国で順次公開。出版を記念した、トークやワークショップなども開催されています。

【画像】フラッグやプラカードを持ち、女性たちが描かれた絵本の見開き
絵本『本当にやる!できる!必ずやる!』(ゆぎ書房)より

アイスランドと「女性の休日」

1975年、国連が「国際女性年」を宣言し、ジェンダー平等を全世界に呼びかけたその年の10月24日。アイスランドの女性たちは、社会にどれほど女性が貢献しているか、そして同じ仕事をしている男性よりも女性の賃金がずっと低いという事実を広く訴えるために、一斉に仕事や家事を休みました。

首都レイキャビクの広場には、2万5千人を超える女性(当時の国の人口は22万人弱)が集まり、アイスランド女性の約90%がこの運動に参加したと言われています。

「女性の休日」についての報道は世界中に広まり、この出来事を契機に、1980年には世界で初めての女性大統領がアイスランドで誕生。そして、女性の権利が政治に関する議論で重要視され、保育制度や母親と父親の育児休暇制度も改良されていきました。

現在、世界で最もジェンダーが平等な国として評価されているアイスランドですが、それでも更なる平等を求めて、「女性の休日」は、1985年、2005年、2010年、2016年、2018年、2023年、2025年にも繰り返されています。こうした活動は、多くの国で女性のストライキやデモ行進のきっかけともなってきました。

【画像】たくさんの人たちが広場に集結している絵本の見開き
『本当にやる!できる!必ずやる!』のタイトルは、「女性の休日」の集会やデモ行進などで歌われる、スウェーデンの闘争歌「女たちよ、前へ!」の中の一節から。絵本にも女性たちが晴れやかな顔をしてこの歌を歌う様子が描かれています

あたたかいイラストとやさしい言葉で、ユーモラスに描いた絵本

今回出版された絵本『本当にやる!できる!必ずやる!』は、1975年に起きた「女性の休日」のことを描いた絵本です。現代に生きる女の子ヴェーラが、その年の「女性の休日」に出かけるなかで、ママが子どもの頃、母親に連れられて参加した1975年10月24日の「女性の休日」について話を聞きます。

【画像】帽子をかぶる女の子と、向かい側にしゃがんで座り、女の子の首にスカーフを巻いてやる母親、ふたりの様子が描かれた絵本の1ページ

かつて学校に行けるのは男の子だけだったこと、家の外で働くようになっても、給料が男性の半分しかもらえなかったこと。なぜ女性たちがストライキを起こすことになったのかが、母と子の対話を通して、やさしい言葉で書かれています。

当時のストライキには、主婦、会社や役所で働く人、農業に従事する人や学校の先生、パン職人、お年寄りや学生、立場を超えたあらゆる女性たちが参加しました。一方の男性たちは、女性が出て行った代わりに、それまで「女性の仕事だ」と言われていたことを担います。男性たちに「長い金曜日」と呼ばれるその日の様子も、絵本の中で表現されています。

【画像】子どもたちを見ながら、家事や仕事をする男性の困った様子が描かれた絵本の1ページ

本書を出版したのは、これまで複数のアイスランドの翻訳絵本を出版してきた〈ゆぎ書房〉。「一見とっつきにくいテーマを柔らかく表現した絵本」をこれまでにも扱ってきた経緯から、今回も「人権」という大事な概念を、明るくかわいらしい絵で表現したリンダ・オウラヴスドッティルさんの絵本(英題『I Dare! I Can! I Will!』)の翻訳出版を決めました。

また、出版社の近隣にある東京都多摩市が、アイスランドの首都・レイキャビクと友好協定を結んでいることも後押しし、今回の絵本も、駐日アイスランド大使館による後援と、東京都多摩市による協力で出版しています。

出版を記念したトーク、ドキュメンタリー映画も全国で順次公開

絵本の出版を記念して、2025年11月30日(日)13:30〜14:30には、「女性の休日」をテーマにしたトークイベントが埼玉県飯能市の〈メッツァビレッジ〉にて開催されます。なお、〈メッツァビレッジ〉では11月29日(土)、30日(日)ともアイスランドをテーマにしたイベント「アイスランド・クリスマス・ウィークエンド2025」を実施中で、絵本の中の問題もクイズになる、キッズワークショップも両日開催されます。

さらに12月12日(金)19:00〜20:30には、「聞こう、読もう、語ろう:ジェンダー絵本のワークショップ ー『本当にやる! できる! 必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』」をテーマに、オンラインでトーク&ワークショップが行われます。ゲストは、子どもたち向けにジェンダーをテーマにした絵本の読み聞かせやワークショップを続けてきた〈えほんみらいテラス〉かとうくみこさんです。

絵本の表紙とイベントタイトル、登壇者の顔写真が載ったバナー画像

また絵本とタイアップしている映画『女性の休日』も、10月25日(土)渋谷の〈シアター・イメージフォーラム〉を皮切りに全国で公開されています。

アイスランドの運命の1日は、どのように成し遂げられたのか。当事者たちによる証言と貴重なアーカイブ映像に、カラフルなアニメーションが差し込まれ、ポップかつエモーショナルに当時のことが語られます。

〈ゆぎ書房〉代表の前田君江さんは本書の魅力をこのように語ります。

“この絵本は「女性の休日」の歴史的経緯なども知ることができるだけでなく、「主張する」って楽しいんだ、ポジティブなエネルギーに満ちていることなんだ、と感じられる絵本だと思っています。”

「ストライキ」と聞くと、シリアスな雰囲気を想像するかもしれませんが、絵本を読んでいて印象的なのは、参加している女性たちがみな生き生きと楽しそうな表情をしていること。

絵本の出版と映画の公開から1カ月、こうしたポジティブなエネルギーは広がり「日本の私たちの置かれた状況はどうなのか」を語る場も全国で生まれ始めているといいます。気になる方はぜひ、絵本や映画に触れてみてください。「本当にやる!できる!必ずやる!」そんなパワーが湧いてくるかもしれません。