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「ザワメキアート展2021」が8/8から長野県立美術館、8/28から茅野市美術館で開催
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かこのじゅしょうさくひんが、さまざまなかたちできりとられ、はいちされている、ザワメキアートてんのちらしひょうし
2021年8月8日から開催される「ザワメキアート展2021」

入選者80人の作品を、一堂に集めた展覧会「ザワメキアート展2021」

誰から教わったわけでもなく独自の創作を行っている。作品に強いこだわりが感じられる。よくわからないが、なんだかすごい。ユニークで笑ってしまうような不思議な魅力がある。

…… そんな心がザワめくことを基準に選ばれた障害のある人たちの作品を、長野県では2016年から2019年まで「ザワメキアート展」と題した展覧会で紹介してきました。

その集大成となる「ザワメキアート展2021」が、2021年8月8日から8月23日まで長野県立美術館(長野県長野市)で、また、8月28日から9月12日まで茅野市美術館(長野県茅野市)で開催されます。〈NPO法人AIT〉のプログラムディレクターを務め、インデペンデント・キュレーターとして活動するロジャー・マクドナルドさんを本展のキュレーターに迎え、これまでに入選した80人の作品が一堂に集められ展示されます。

かいじょうないのかべにえがかざられ、まんなかにあるテーブルのうえにも、さくひんがのせられている
「ザワメキアート展2019」展示風景

「障害のある人の表現」を見つめ直す

「生(き・なま)の芸術」と訳されるアール・ブリュットは、1940年代にフランスの画家ジャン・デュビュッフェによって考案された言葉です。既存の美術や文化潮流とは異なる文脈で制作された芸術作品という意味で用いられましたが、日本では「障害のある人の美術作品」という意味で使われることが多くあります。

この展覧会では、そうした「アール・ブリュット」という言葉で一括りにされてしまいがちな「障害のある人の表現」を、改めて見つめ直しています。地域の福祉施設やアトリエ、自宅などで生まれる表現が、障害のある人の生きる力や幸福につながっていることだけでなく、鑑賞する人を感化する、アートとしての力を持っていることを紹介します。

作品の背景や制作風景の描写とともに作品を紹介する展覧会

「ザワメキアート展」の特徴は、参加作家のところへ実行委員等が直接足を運んで取材し、その作品の背景や創作風景の描写を含めて、選考・展示してきた点にあります。

例えば、2019年に入選した濱克治さんの作品に添えられているのは、こんなエピソードです。 

“作者は以前からクレヨンや色鉛筆で車の絵を描いていた。「のりものダイスキ!」なのだろう。最近絵の具という画材を使ったら、という提案がされ、それ以来たっぷりの絵の具を塗り重ねることを楽しみだした。まずは乗り物図鑑を見て、画用紙に向かい、クレヨンでのりものの形を描き、その上に筆をたっぷり含ませた絵の具を塗っていく。ふつう私たちは下絵に描かれた形の輪郭に沿って丁寧に絵の具を塗るのだが、作者はそんなことはお構いなしだ。絵の具の下に何が描かれているのかはわからくなってしまう。

制作している作者の表情は、「これに乗ってどこ行こう? そうだ、○○へ行こう!」とワクワクと想い描いているかのように嬉々としている。以前行ったことのある楽しかった風景を思い出しているのかもしれない。自分で決めて自由に行きたいところへ行きたくとも、なかなかままならないからこそ、「クルマニノッテ・・・」の想いは強いのだろう。

たっぷりと塗られた絵の具は混じりあい、クレヨンによって弾かれた風景が不思議な世界を見せている。そしてこの絵の具の下には何が隠れているのか、と想像を掻き立てる。”

はまさんのさくひん、20てんがならんでいる
2019年入選作家、濱克治さんの作品

作品の背景や創作風景を想像しながら鑑賞すると、また異なる景色が見えてきそうです。80人のアーティストが創造した多様な世界、感情や心の風景を、ぜひ展示会場で感じてみてください。