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福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

こここなイッピン

結バッグ〈はんぷ工房 結〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

「いい素材を使って、質のいいものをつくる」をテーマに、地域住民の声を参考にしながら、障害のある人の得意を活かしてつくられる帆布のバッグ。その種類は200種以上! あれこれ欲しくなるイッピンです。

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地域とのつながりから生まれ、愛用者のさまざまな声を取り入れた、手づくり帆布バッグ

〈はんぷ工房 結〉のなかでも人気の高い結バッグの一部。縫い糸には生地の色に近いものが選ばれ、細部へのこだわりがうかがえます。左上から時計回りに「まんまるバッグ(大)」、「麻バイカラートート」、「ちょこバッグ(大)」、「ファスナー付バッグ 小トート」

ビビッドなカラーに、品のいいアースカラー、好みの色がチョイスできるバイカラーなど、多彩な色のバリエーション。ビジネス、お出かけ、近所へのお買い物と、それぞれのライフスタイルやシーン、ファッションにあわせて選べる豊富な形状。厚手の生地だけれど、持ってみると意外に軽くてびっくり。

良質な「倉敷帆布」でつくられた〈はんぷ工房 結〉の「結バッグ」。写真で紹介しているのはほんの一部。これまでに制作されたバッグはなんと200種類以上にも及びます!

山口県光市の障害福祉サービス事業所〈光あけぼの園〉で、バッグの制作や販売を行うチーム〈はんぷ工房 結〉。2006年、刺繍や縫製を得意とする障害のあるメンバーの仕事の一環としてスタートしました。

時間をかけて丁寧につくられたバッグは、デザインのよさ、カラーバリエーション、縫製のクオリティ、丈夫さ、すべてにおいて高い支持を得ています。施設に併設するショップでの販売のほか、オンライン販売も行われ、全国から注文が寄せられる人気商品です。

〈はんぷ工房 結〉のこだわりは、「いい素材を使って、質のいいものをつくる」こと

山口県なのに、なぜ岡山県の倉敷帆布でバッグを? と思われた方もいるのでは。〈はんぷ工房 結〉のバッグづくりは、地域住民とのコミュニケーションと、施設のこだわりから辿り着いたものでした。

もともとは、ミシンを扱えるメンバーがいたことから〈はんぷ工房 結〉の活動を開始。当初は、一般的な生地を用いて手芸作品をつくっていました。それらのものづくりを応援する地域住民から「酒袋を使ってみてはどうか」など、素材のアドバイスをもらうことがありました。

そのような声を参考にしながら、「この商品が欲しい」と思われるものづくりがしたいという思いで、「いい素材を使って、質のいいものをつくる」をテーマにした新商品を検討することに。

「いい素材」の候補にあがったのが、120余年継承されてきた日本の伝統産業・倉敷帆布。その品質は、当時の日本産業規格(JIS)に定められた一級品。スタッフが倉敷の繊維工場を訪ねて直談判し、帆布の取引が始まります。こうして、良質な帆布を使った、丈夫なバッグづくりがスタートしました。ちなみに現在のバッグにも、当時から変わらぬ〈丸進工業株式会社〉の帆布が使われています。

愛用者の声がすぐに届く距離だからこそ叶う、使いやすさ

結バッグには、さまざまな工夫が凝らされています。たとえば、ちょうどいい場所に、ちょうどいいサイズのポケットがあったり、中のものがスムーズに出し入れできる間口の広さだったり。そのような使い勝手のよさも、結バッグが支持されている理由。

これらのアイデアは、スタッフやメンバーの提案や意見だけでなく、地域住民の声も参考にされています。

A4サイズが縦に入る「角リュック」。ファスナーが下まで開き、中の物の出し入れがしやすい!

工房の隣にはショップが併設されています。お店に立つスタッフや、つくり手であるメンバーとのコミュニケーションを楽しみに来店するお客さんも多く、その会話のなかでバッグの使用感や機能面についてフィードバックをしてくれる人も多いのだとか。

その声をもとに、既存商品をアップデートしたり、年に3回行われる新作発表イベントの新商品にそのアイデアを取り入れることも多々。

試作品が出来上がれば、スタッフ、メンバー、ボランティアでディスカッションを行い、機能面を追求。愛用者の声がすぐ届く距離であることが、バッグの使いやすさにもつながっているようです。

お出かけの際に使いたい「まんまるバッグ(大)」。これらの定番商品をはじめ、新作バッグを毎回10点ほど発表する「新作発表イベント」は、施設併設の〈結shop〉にて、3月・7月・11月に開催されます

メンバーの得意を「決めつけない」

バッグづくりでは、帆布の裁断、印づけ、縫製、アイロンがけ、一部のバッグへの刺繍など、制作のほとんどをメンバーが行っています。ものづくり以外にも、お店番、値札づけ、発送準備、在庫管理といった仕事があり、それぞれの得意を活かした作業を担います。

そのなかでスタッフが常に気にかけ、大切にしているのは、メンバーの得意を「決めつけない」こと。

「あの仕事が苦手そうだったから、この作業も苦手かも? と思いつつチャレンジしてもらうと、誰よりも得意、ということがあるんです。見えやすい部分が不器用でも、見えにくい部分に、その人の得意なことが当たり前のような顔をして隠れていたりする。やってみるまでは、なにが得意で不得意か、わからないんです」

そう話すのは〈光あけぼの園〉のスタッフ・阿座上涼子さん。時間や余裕があるときなど、担当外の作業をする機会を設け、メンバーのできることを増やしながら、スタッフも彼ら・彼女らの普段とは違う一面を発見する機会にしているのだそう。

ビジネスでも使いやすい、タブレット端末がぴったり収まる内ポケットがついた「タブレット型ショルダー」(左)と「角リュック」(右)。ほかにも、メンバーのアイデアやこだわりが詰まった、おむすび型・食パン型のバッグシリーズや、刺繍が得意なメンバーによる刺繍バッグ&ポーチなども展開

ものづくりを通じて生まれた、新しいつながり

帆布バッグの誕生から、新商品のアイデアに至るまで、地域とのコミュニケーションやつながりのなかでものづくりを行ってきた〈はんぷ工房 結〉。

近年は「県内で狩猟した鹿の皮を商品にできないか」「古くなったヨットの帆をバッグにしたい」といった相談や、近隣の学校からコラボレーションの要請など、さまざまな声が施設に寄せられています。

「ものづくりを通じて、いろんな方とつながれるのはうれしいですね。特に学生さんに、福祉の場や、そこでの活動を知ってもらいたい気持ちがありました。社会人になって、なにかの折にふと思い出したり、ここで見て聞いたものがなにかの土台になったりするかもしれません。〈はんぷ工房 結〉がそんなきっかけを生む場所になればいいなと思うんです」(阿座上涼子さん)

地域とのつながりを大切にしてきたからこそ、現在の工房とものづくりがあり、そこで生まれた商品は、地域に愛され、その声はまたものづくりに活かされる。そのような相互に支え合う関係は、また違ったかたちで結びつきを強めつつあります。

定番バッグから新作まで、お気に入りの結バッグを見つけつつ、今後の〈はんぷ工房 結〉の活動にも、ぜひ注目してみてください。

\ 新作バッグ販売会「2022結の夏コレ」開催 /

2022年7月1日(金)~30日(土)の期間、施設併設の〈結shop〉にて「2022結の夏コレ」が開催されます! 鉄道好きのメンバーによる、地元ローカル線「錦川清流線」の特定の年代車両の絵柄バッグなど、マニア心をくすぐるイッピンも発表予定。詳細はこちら