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福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

こここなイッピン

いろとりどりのビーズブローチ〈irodori〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

今回のイッピンは、胸元やバッグなどに飾るだけで、ささやかながらも気の利いた演出をしてくれるビーズブローチ。種類もモチーフもさまざまなこの商品、どんな場所で制作され、どのようにして生まれたのでしょうか?

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いろとりどりのビーズと、メンバーの感性そのままの、一点ものブローチ

ポップも、エレガントも! 選ぶのが楽しいビーズブローチ

ニンジン、ジャガイモ、お肉がごろごろ入った大盛りカレーライス。トマトソースがたっぷり敷かれた生地に、(たぶん)バジル、チーズ、トマト、サラミを乗せたピザ。ソースが行き届かなかったクラストの端っこもきちんと再現。フフフと口元がゆるんでしまう「食べ物シリーズ」のビーズブローチのかわいさたるや!

一方、カジュアルにもシックにも装える、ビーズをゴージャスに盛りつけた、いろとりどりのブローチ。青い石に、鮮烈な赤い玉、天然石、ウッドビーズ、パールやスパンコールまで。ビーズってこんなにも色や形、素材や質感の違いがあるんだ……! という驚きとともに、飽かず眺めてしまう美しさ。

まるで宝石を寄せ集めたかのようなビーズブローチ。これらのビーズは寄付によって集まったものが殆ど。誰かの「不要」が誰かの「必要」になるような、小さな循環が、この作品のなかに詰まっています

東京都世田谷区にある〈玉川福祉作業所〉内で、障害のある人がさまざまなものづくりを行うブランド〈irodori(イロドリ)〉。今回のイッピンであるビーズブローチや、刺し子を施したバッグやTシャツ、陶器の器やアクセサリーなど、日々の暮らしが楽しくなるようなアイテムを手づくりしています。

〈irodori〉というブランドの始まり

〈玉川福祉作業所〉は、1980年に世田谷区立の福祉作業所として開設されました(※注)。主に箱折りや記念品封入などの軽作業や、清掃作業などを請け負いつつ、その合間に裂き織りや陶芸といった自主生産作業を進めてきました。

2015年に入り、施設として今後どのような活動を行っていくかを考え始めたタイミングで、作業所のスタッフが、福祉施設での商品開発やブランドづくりについて考える「モノづくりサロン」と出合います。

それまで課題と感じてきた商品の値段設定、販売方法、パッケージのデザインなども、サロンへの参加でヒントを得、さらに外部のディレクター、デザイナー、フォトグラファーを招き入れながら、施設の活動やものづくりの方向性を定めていきました。

2017年には〈irodori〉というブランド名を冠してアートイベント「デザインフェスタ」に出店し、新しいものづくりへの手応えを感じ始めます。そこから今に至るユニークな創作活動が続いています。

現在〈irodori〉の商品は、〈玉川福祉作業所〉内にある販売ブースや、雑貨店、喫茶店、図書館や書店など、東京都内の約15店舗で取り扱い中。また、マルシェやアートイベントにも積極的に参加し、着々とファンを増やしています。

※注:現在は〈社会福祉法人大三島育徳会〉が指定管理者となっています。

〈irodori〉にかけてブランドイメージとなっている「鳥」。ビーズブローチを納めるオリジナルボックスにもたくさんの鳥が描かれています。ちなみにブランドのネーミングは〈桑沢デザイン研究所〉とコラボレーションを行った際、メンバーが織ったカラフルな裂き織りをみた学生が名づけてくれたのだとか

メンバーの感性を生かしたものづくり

今回のイッピンであるビーズブローチの誕生には、こんなエピソードがあります。

ある日の昼休み、スタッフが趣味のビーズ作品づくりをしていると、それを見たあるメンバーが「自分もやってみたい」と興味を持ち始めます。大きなビーズを使って縫いつける練習から始まり、時間をかけて少しずつ技術を上げていきました。販売に至るまでには数年もの時間がかかりましたが、現在は10名のメンバーがビーズ作品づくりに取り組み、それぞれの個性あふれる作品を生みだしています。

ちなみに「食べ物シリーズ」を制作しているのは、たったひとりのメンバー。その制作風景をみていると、あらかじめモチーフが決まっているようではなく、目の前に並ぶビーズと、頭に浮かんだ食べ物が一致したとき、「これがつくれそう!」と即興的に制作がはじまるのだとか。

左から、かき氷、バナナ、カレーライス、ピザ、串カツ、サンドイッチ。食べ物の特徴を巧みに捉えている「食べ物シリーズ」。ほかにも、ラーメン、餃子、ビール、お寿司、スイーツなど、種類はこれに止まりません!

〈irodori〉の商品を眺めていると、どことなくのびやかな“奔放さ”がひとつの魅力であるような気がします。話を聞けばそれもそのはず、メンバーのものづくりに、スタッフが意見をしたり、介入したりしない、というルールがあるのだとか。

作業の始まりから終わりまで、メンバーたちはその時々の気分で材料を選び、つくりたいものをつくる。スタッフは必要なサポートは行いつつも、そっと見守る。これが〈irodori〉のものづくりの基本だといいます。

さらに、「ブランドとして、このような商品をつくりたい」という施設側の意向が出発点ではなく、メンバーが自由に制作したものを「なにかの商品にできないか?」という考え方でものづくりを行うことも、ブランドが大切にしていること。

メンバーたちの感性を尊重した自由な創作の場であるからこそ、〈irodori〉のアイテムは、のびやかさを放って、手に取った人の心をくすぐるのかもしれません。

不要になったビーズを募集中 

ご自宅に不要なビーズがあれば、ぜひ〈玉川福祉作業所〉へ寄付を。眠っていたビーズが、メンバーたちの手によってユニークな作品に生まれ変わり、再びキラキラと輝きを放ちます!