こここなイッピン
ポリ袋のアップサイクルでつくられたケース〈poRiff〉
福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。
今回のイッピンは、大阪府岸和田市で生まれた、ポップなカラーリングが目を引く小物ケース。原料はなんと、スーパーなどで買った商品を入れるポリ袋!?
ユニークなデザインは、施設のメンバーの合作!
「もったいない」と「工夫」から生まれた、一点もののプロダクト
カラフルでポップな小物やバッグを手がける〈poRiff(ポリフ)〉。この商品、かわいいだけではありません。驚くべきはその原料。なんと、スーパーなどで買った商品を入れる“ポリ袋”をリサイクルしてつくられた商品なんです。
poRiffが誕生したのは、大阪府岸和田市。2007年、精神障害のある人が通う地域活動支援センター〈かけはし〉で、ポリ袋を活用したアート作品づくりの一環としてスタートしました。現在は、岸和田市の就労継続支援B型事業所〈オーロラ〉と、東大阪市にある生活介護事業所〈活動センターいっぽ〉の、ふたつの福祉施設で制作中。ポリ袋のカットからミシンによる縫製まで、1から10のすべてを、施設に通う障害のあるメンバーが手がけています。
元々は、施設でのアート活動として始まったpoRiffでしたが、当初関わるメンバーは少数で、販売も積極的には行われていなかったそう。そんななか、「福祉とデザイン」をテーマに大学院で研究をしていた薮内都さんがpoRiffに出合います。デザインのよさや可能性を秘めたpoRiffにほれ込んだ薮内さんは、大学院修了後にオーロラの支援員兼、poRiffのアートディレクターとして合流。これを機に、アート作品から日常的に使えるプロダクトへと舵をきり、施設全体で取り組む商品づくりがはじまりました。
poRiffで使われるポリ袋は、地域の公民館やセンターに置かれた回収ボックスで集めています。メンバーが回収してまわり、その後「シャカシャカ」「ヌメヌメ」など、手触りの違う種類ごとに分別。それを2サイズの細かい短冊状にカット。こうすることで、自由にコラージュしてもサイズが揃い、リズム感のあるデザインに仕上がるのだとか。
コラージュの方法も実にユニーク。ひとりがベースを貼り、その上に別のメンバーがコラージュし、そしてまた別のメンバーがその上に……と、ひとつの作品に何人ものメンバーが関わっています。独創的なデザインが、メンバーの合作によるものだったとは!
回収ボックスにポリ袋を引き取りに行く人、ポリ袋の色分けをする人、ハサミでカットする人、コラージュをする人、縫製をする人。それぞれの個性や得意分野に合わせて、ひとつの商品に多くのメンバーが関われるように工程が組み立てられています。
障害のあるなしにかかわらず、自分たちのできることで携わり、ひとつのチームとしてものづくりに取り組む。これはpoRiffが大切にしていること。皆でつくりあげた商品が多くの人に受け入れられることは、メンバーのモチベーションや、働きがい、つくる楽しさにもつながります。障害のある人たちの居場所となり、役割を見つけられる場所、それがpoRiffの目指すものだといいます。
ごく身近なポリ袋という素材を用いるアイデアは、「もったいない」と「工夫」を大切にする精神から。環境へ配慮したエコロジカルなプロダクトとしても注目を集めるpoRiffですが、もともとは低予算かつメンバーが持続可能なペースでできることを目指して生まれたアイデアでした。日常にありふれたものから、新ジャンルのプロダクトを生みだすpoRiff。今後の活動にも目が離せません。
※〈こここ〉のニュースで、poRiffのプロダクトのつくり方を紹介しているレシピ本『レジ袋でできる カラフルなバッグと小物』を取り上げています。ぜひ、おうちでチャレンジしてみてください!
エコロジカルで、アイデア満載! poRiff著『レジ袋でできる カラフルなバッグと小物』
Information
カードケース、通帳ケース、パスケース
カードケース
販売価格:2000円
サイズ:H65×W105× D15ミリ
通帳ケース
販売価格:2200円
サイズ:H105×W210×D180ミリ(開いたときH210×W180ミリ)
パスケース
販売価格:1500円
サイズ:H100×W75ミリ
製造:就労継続支援B型事業所〈オーロラ〉、生活介護事業所〈活動センターいっぽ〉
Webサイト:poRiff
Profile
-
オーロラ
就労継続支援B型事業所
オーロラは就労継続支援B型事業所で、住み慣れた街で自立した生活を送りたいと希望する方が就労や日常生活を送るための訓練を行う施設です。主に精神障がいのある方が利用されており、作業訓練や生活相談、昼食サービスを受けたり、ゆっくりできる場所として機能しています。平日の9時~16時まで開所しており、現在20代から60代の方が利用されています。作業訓練としては、お弁当作りや清掃、自主製品であるpoRiffの制作を主に行っています。作業への参加は人それぞれで、その日の気持ちや体調に合わせて変えています。作業をめいっぱい頑張る方もいれば、1時間だけ作業をする人や施設に来たけれど調子が悪いからゆっくりするというような方まで、利用の仕方は様々です。
Profile
-
活動センターいっぽ
生活介護事業所
活動センターいっぽは「どんなに障がいが重くても、それぞれに生きがいを持てる活動を。」と言う理念のもと、東大阪市で2000年10月に小規模作業所から始まりました。2004年にNPO法人化し、2011年4月より生活介護事業所として指定を受け利用者の方の日中活動の場として、主にトールペイント、ビーズ、刺繍やpoRiffなどの創作活動とダンス、音楽、外出などの日中活動を行なっています。同法人でグループホームの運営も行っています。