福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

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こここなイッピン

革のキーホルダー〈第2あとりえトントン〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

メンバーの個性、得意、ペースを尊重しながら、楽しく取り組める仕事を提供する〈第2あとりえトントン〉が、約10年前から手掛けている革のキーホルダー。つぎはぎされた“コワかわ”人形は、ハロウィンシーズンにもぴったりなイッピンです。

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セレクトショップと共創し、さまざまな気づきを生んだレザークラフト品

やわらかくなめされたカラフルレザーをつぎはぎして、愛らしい表情の人形に仕立てた「革のキーホルダー」。にっこり笑ったキャラクターは、通称「トントンちゃん」と呼ばれています。サイボーグやゾンビを彷彿させる「ドクロトントンちゃん」の絶妙な表情もコワかわいい!

高さ約10センチと、ほどよいサイズ感。高級感のあるリアルレザーを用いているため、ビジネス用バッグにも違和感なくマッチ。その存在感に「これはなに?」と会話が膨らむかもしれません。

メンバーの感性を尊重した、オールハンドメイド品

東京都東大和市にある就労継続支援B型事業所〈第2あとりえトントン〉で制作されている今回のイッピン。オールハンドメイドのため、一体一体表情が異なる一点ものです。年間200個ほど制作されていますが、販売すれば売り切れ必至。入荷を心待ちにする人も多い人気商品です。

レザーを小さなハート型にカットし、玉留めで固定した心臓部分。そのアイデアも、カラーリングも、ナイスチョイス!

〈第2あとりえトントン〉の母体である〈NPO法人 生活支援センター207〉では、1987年の立ち上げ当初からバッグ、ポーチ、キーケースなどの革製品を制作してきました。そのなかで必ず出てしまう端革を捨てずに活用する方法を考えるなかで誕生したのが本商品です。

つくり手は、レザークラフトや手芸が得意な3名のメンバー達。糸を通す穴を開ける“菱目打ち”の作業も、縫製も、一つひとつ手作業で行われています。

季節に合わせてレザーや糸の配色を変えてみたり、ファッション誌などから色味のアイデアを得たり、口元の表情を変えてみたりと、メンバーは日々さまざまな工夫や研究を重ね、一体一体を制作。そこにスタッフの意見は一切入っていないといいます。

にっこり笑っている口、開いた口、「w」になっている口など、表情の違いもすべてメンバーのアイデア

音楽を流し、リラックスムードのなかで行われている「トントンちゃん」づくり。販売開始から10年ほど経ちますが、商品が誕生するまでにはさまざまな出会いや試行錯誤がありました。

セレクトショップ〈マジェルカ〉との出会い

「トントンちゃん」の誕生には、東京都吉祥寺で福祉発プロダクトのセレクトショップを営む〈マジェルカ〉が関わっています。

10年以上前、〈第2あとりえトントン〉の自主生産品の販路といえば、市役所や近隣でのバザーがメインでした。一方で、長年手掛けてきた革製品のクオリティには自信があり、ものづくりに意欲的なメンバーもいることから、販路を広げ、工賃アップにもつなげたいという思いを抱いていました。

そんななか、革製作班担当スタッフが、〈マジェルカ〉とそのオーナーである藤本光浩さんの存在を知り、同店が掲げる「ウェルフェアトレード(注1)」というコンセプトに興味を抱きます。

さっそくお店を訪ねたスタッフは、施設でつくった財布やキーケースなどを広げ、取り扱いを交渉。しかし、革製品の素材や技術の高さは認めてもらえたものの、店で扱うには商品としてのインパクトが足りないと指摘されます。

その後も、魅力的な福祉施設発プロダクトが並ぶ〈マジェルカ〉に惹かれて何度か足を運ぶうちに「こういう革小物がつくれないか?」と藤本さんから声が掛かります。

施設でできることと、店側の要望をミックスさせながら、何度も試作品をつくってはアドバイスをもらい、ブラッシュアップや改良を重ねてきました。

(注1)ウェルフェアトレードとは、〈マジェルカ〉が考案した「福祉のフェアトレード(Welfare +Fairtrade)」の造語。福祉事業所でつくられる自主製品を正当に評価し、その価値に見合った適正な価格や方法で流通させ、障害のある人の収入や働きがいの向上と社会参加を促し、社会の障害者理解をあと押しする仕組み。

A4用紙の裏に描いたラフ案から生まれた「トントンちゃん」

そのような〈マジェルカ〉との関わりのなかで生まれた商品のひとつが「トントンちゃん」です。

カラフルな端革の活用法を相談するなかで、藤本さんが「こんなのはどう?」とA4用紙の裏に描いたのが、人型のキーホルダーのラフ案でした。その用紙を持ち帰り、施設のスタッフや革細工の専門家と相談し、土台を完成させます。

メンバーからも「まつ毛をつけたらかわいいんじゃない?」「バンザイをさせたほうが明るいイメージになる」などの意見が。〈マジェルカ〉側もメンバーのアイデアや発想を尊重することを大切にしており、各方面の意見を反映させながら、商品としての形を定めていきました。

こうして誕生した「トントンちゃん」が〈マジェルカ〉で販売されると、ジワジワと人気商品に。ある年のハロウィンには「トントンちゃん」のバリエーション展開として「ドクロトントンちゃん」が完成。ちょっとコワくてクールな新マスコットが生まれました。

棺桶型(!)ボックス入りの「ドクロトントンちゃん」。※箱つきは〈マジェルカ〉での販売のみ

共創から得た、それぞれの気づき

〈マジェルカ〉との共創のなかで、ものづくりにおける着目点、値決め、展開方法など、さまざまな気づきを得た〈第2あとりえトントン〉。メンバーも、自身が手掛けた商品が、大きな街の人気店で売られているのを目にすることは喜びであり、大きな自信と、ものづくりへの意欲につながっているようです。

新たな発見があったのは、施設側だけではありません。お店をオープンして間もなかった〈マジェルカ〉も、自分たちの活動が施設のものづくりのエンパワーメントになるということ、つくり手のモチベーションを高めることにつながると気づき、改めて店舗としての可能性や方向性を定めるきっかけとなったといいます。

タグや紐など細部にもこだわりが。「トントンちゃん」のつくり手が家族や友人を連れて〈マジェルカ〉を訪れ、自分の手掛けた商品を購入し、その場でプレゼントするという光景も度々見かけるのだとか

人気商品となった「トントンちゃん」ですが、ニーズは高くなっても制作体制はほとんど変わっていません。施設として優先するべきことは「利用者の支援と生活の安定」であり、それらが整ってこそ生まれるのが「トントンちゃん」だからです。

メンバー一人ひとりの個性、得意・不得意、ペースを尊重しながら、楽しく取り組める仕事を提供し、やりがいを感じてもらいながら仕事として軌道に乗せていくことを〈第2あとりえトントン〉では最重要視しています。

さて、10月31日はハロウィン! つぎはぎレザーの「トントンちゃん」や「ドクロトントンちゃん」はこのシーズンのお飾りやプレゼントにもぴったりです。取扱店は〈第2あとりえトントン〉の販売会と、〈マジェルカ〉のみ。見かけたらぜひ手にとってみてくださいね!