福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

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こここなイッピン

うたうプリン〈UTAU〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

かわいくておいしいと評判のスイーツや、ギフトにも最適なプロダクトを手掛ける、京都の就労継続支援施設〈UTAU〉。ちょっと変わった施設名や、その取り組みに込められた思いをご紹介します。

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楽しく、歌うように。オープンマインドな心で仲間と手掛ける「うたうプリン」

張り詰めた風船に爪楊枝を刺すと、プチンと弾けてフルフル震えるまんまるプリンがお目見え! とろん。もっちり。ぷるるん。口の中で楽しいオノマトペを奏でながら、やさしい甘さ、フレッシュな卵や生乳のコク、なめらかな舌触りで、口いっぱいに幸せをもたらしてくれます。ほろ苦い宇治抹茶や、甘酸っぱいラズベリーフレーバーの余韻も心地いい。

おそるおそる爪楊枝を刺し込むスリル(注)、丸い形とパステルカラーの愛らしさ、身も心も満たすおいしさ。きっと誰もが心浮きたつイッピンです。

京丹波産ブランド卵「くろ丹波」や、大阿蘇の酪農牛乳など、良質な原材料をふんだんに使った〈UTAU〉の無添加プリン。フレーバーによってゼラチン量を変えるなどの微調整を加え、食感や舌触りにこだわっている。左から「なめらか」「抹茶」「ラズベリー」

この「うたうプリン」を手掛けるのは、京都府にある就労継続支援B型事業所〈UTAU(うたう)〉。大阪で看護やリハビリ事業などを行う〈株式会社クーバル〉と、京都のコーヒー専門店〈タビノネ〉の共同事業として2021年に設立されました。

〈タビノネ〉のノウハウを生かした菓子製造部門と、パッケージデザインやオンラインサイトの運営、販売までを行うアート部門の2事業を展開。現在は20名強のメンバーが所属し、それぞれの得意を生かした仕事を行っています。

(注)風船を割る際にはちょっとしたコツが必要です。同施設のインスタグラムに正しい割り方が紹介されていますので、参考にしてください。

チャレンジ精神のあるメンバーが挑む、高難易度のスイーツづくり

喫茶文化が根づく京都で目新しいスイーツを提供したいと開発された「うたうプリン」。レシピはすべて自社専属パティシエと考案し、風船への注入もひとつひとつ手作業で行われます。

自社オリジナルスイーツのほか、ホテルやカフェへ卸す多種多様な菓子も製造している〈UTAU〉。そのため、同施設の菓子づくりは専門的な知識と技術を要し、難易度の高い作業工程が多く存在します。

それでも「難しいお菓子にチャレンジしたい」という菓子づくりに情熱を傾けるメンバーたちがパティシエと一緒に切磋琢磨し、高品質のスイーツを製菓。

入所当時は材料の計量から始まったメンバーも仕事を覚え、専任スタッフに確認をとりながら次々と作業を回し、今では多くの工程をメンバーたちの手で行っているのだとか。

プリンと共に人気のクッキーサンド。ざっくりとした食感と、キビ砂糖のコクのある甘さにリピーターも多い。計量や細かい作業を苦手とする人は、クッキーの型抜き、シール貼り、袋詰めなどを担当。それぞれの得意・不得意、その日の体調を優先して作業が進められている

オープンマインドになれる場所

「障害福祉サービス」という新事業を立ち上げるにあたり、さまざまな作業所を視察してきた〈クーバル〉と〈タビノネ〉。そのなかで定まった新施設のイメージは、明るく開放的な空間。誰もが表現することをためらわず、オープンマインドになれる場所でした。

拠点として選んだのは、世界遺産に登録された真言宗総本山「東寺」すぐ側の物件。2~3階からは東寺や五重塔を見渡せる絶景ビューが広がっています。

観光客の多いエリアであることから、1階にはカフェ&ショップを設置。2階には菓子工房、3階に創作スペースが置かれ、メンバーは開放的なロケーションのなか、ものづくりに勤しみます。

人前で歌をうたうときのように、明るくオープンな心持ちで日々過ごせる場所にしたいという思いが〈UTAU〉という施設名の由来になっている

そのような場で共に活動するスタッフとメンバーの関係性はフラットだといいます。月に1回行われる企画会議にはメンバーも出席し、それぞれが発言。季節の商品企画、パッケージ、予算、価格、納期まで皆で決めるのが習わしです。

すべての活動において、頼り頼られる存在であり、ものづくりをする仲間であるという共通認識を皆が持つ〈UTAU〉。発言や表現をためらわない場づくりが着実に根づいているようです。

シールのデザインもメンバーとスタッフが共同で制作

「画家になりたい」というメンバーの夢を思い出させた、とある展示

創設から2年と新しい事業所ながらも、クオリティの高いお菓子が評判を呼び、多くの会社から菓子製造の依頼や、オリジナル商品の相談が舞い込む〈UTAU〉。

アート部門においても、2023年春には地下鉄烏丸線・十条駅の構内にて、メンバーの描いた絵画作品約30点を展示する機会を得ました。その際、とあるメンバーは小さい頃に憧れながらも進級と共に諦め、いつしか忘れていた「画家になりたい」という夢を思い出したのだとか。

嬉しさのあまり期間中に何度も十条駅に足を運ぶメンバーの姿や、自分たちの手掛けたお菓子がSNSに投稿されるたびに喜び、意欲的にものづくりに取り組むメンバーたちの姿勢――それらを目の当たりにしてきたスタッフも、もっとメンバーの「好き」や可能性を広げたいと、機会づくりに力を注いでいます。

開所時から所属するTOMIZOさんの作品を用いたハンカチ。色彩の異なるこの2枚は『朝の散歩道』という1枚の絵画の一部分をプリントしたもの。肌ざわりのいい大判ハンカチはスカーフとして使うのもおすすめ

また、「福祉施設の商品」だからではなく、「おいしい」「すてき」といったきっかけで、ブランドや商品を知ってもらいたいと考えてきた同施設。今後は、さまざまな個性を持つ人たちが活躍している姿、そのようなメンバーたちによって支えられている〈UTAU〉の姿も発信していきたいと展望を語ります。

ギフトにも最適な菓子や商品が揃う〈UTAU〉。季節の祝い事やイベント時には限定スイーツなども登場します。公式サイトやSNSなどでぜひ最新情報をチェックしてみてくださいね!