福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【画像】せせせクリエイティブキャンプのチラシを貼った看板。黄色と青の2色を用いたせせせのロゴが大きく入っている【画像】せせせクリエイティブキャンプのチラシを貼った看板。黄色と青の2色を用いたせせせのロゴが大きく入っている

「せせせクリエイティブキャンプ」DAY1 レポート! 福祉のものづくりに関するリアルな事例を4組のゲストが語ったデザインフォーラム せせせプロジェクト|こここラボ vol.03

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事例から福祉のものづくりを学び、出会う、クリエイティブキャンプ

2024年6月3日(月)・4日(火)の2日間、東京・世田谷区が主催し、マガジンハウス〈こここ〉が企画・運営するイベントとして、福祉のものづくりを考える「せせせクリエイティブキャンプ」を開催しました。

【画像】フォーラムの会場の様子

〈せせせ〉とは、世田谷・福祉生まれのモノゴトを届ける“魅力発信プロジェクト”。世田谷区と〈こここ〉の共同事業として2022年12月に立ち上がり、今年で3年目を迎えました。

世田谷区内には自主生産品をつくっている約40の福祉事業所があります。その各事業所で日々行われているさまざまなものづくりや活動を広く知ってもらい、それらの魅力を多くの人に届けることが〈せせせ〉のミッション。それに伴い、外部との協働といった新しい機会づくり、商品の販売拡大、工賃アップにもつなげていくことを目指しています。

〈せせせ〉の発足以降、区内の福祉施設で生まれた商品を扱うECサイトの構築や、施設職員に向けたセミナー&ワークショップ、実際に商品を手に取ってもらうマルシェの開催などが行われてきました。

せせせのロゴ
【画像】焼き菓子や雑貨、アクセサリーなど、6つの施設の商品が並んでいる
ECサイト機能をもつ〈せせせ〉のプロジェクトサイトで取り扱っている商品の一部

3年目となる今年は、経験豊富なクリエイターを招き、事例から福祉のものづくりを考える「フォーラム」と、広報・撮影・デザインの専門家による福祉の現場で使える「クリエイティブ講座」を、2日間にわたって開催。

本記事は、〈せせせ〉プロジェクトサイトの施設・商品紹介のライティングにも関わるライター・林貴代子が、全国の福祉施設と協働するクリエイターから具体的な手段を学びながら、福祉施設とクリエイターとの新しい出会いを目的に開催された「DAY1 福祉のものづくりデザインフォーラム」を、レポート形式でご紹介します!

テーマは「出会いと学び」

2024年6月3日(月)、三軒茶屋の〈三茶しゃれなあどホール〉の会場には、世田谷区内の福祉施設関係者や、世田谷区内外の福祉のものづくりに関心があるクリエイター、約50名が集結。

これまでは〈せせせ〉参加事業所のみを対象にした講座などが実施されてきましたが、今回は対象を広げた形で募集が行われました。

フォーラムのスタートは、世田谷区経済産業部の井上薫さんによる「せせせクリエイティブキャンプ」の趣旨説明から。2022年から〈せせせ〉で行ってきた活動報告や、今年度の活動内容への思いと狙いが語られました。

続いて、世田谷区障害福祉部の碓井健之さんからは、今年度から世田谷区でスタートした、補助金事業「世田谷区障害者施設受注拡大・工賃向上推進事業」の説明が。これは、平成29年度から令和元年度に実施した内容をリニューアルし、今年度から再度実施されている制度。碓井さんからは、交付対象要件や補助金額などの説明がありました。

そして、〈こここ〉からは編集長・中田一会さんが挨拶で登場。登壇するゲストの話からものづくりのヒントを得て、ゲストや来場したクリエイターと交流し、つながる機会となることを目指しているという、本フォーラムのテーマ「出会いと学び」について語りました。

本イベントを企画・運営する〈こここ〉編集部から、編集長の中田一会さんが挨拶(左)

ものづくりにおける重要なプロセスとは? 「クリエータートーク」

続いて、ゲストによるクリエイタートークへ。

今回ゲストに招いたのは、〈一般社団法人シブヤフォント〉や〈株式会社フクフクプラス〉の共同代表を務める磯村歩さん、〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉のコミュニケーションデザイナー・加藤未礼さん、障害のある人と社会をつなぐ代理店〈con*tio(コンティオ)〉の山口里佳さんと杉千種さん、「福祉とあそぶ」をテーマに活動するデザインユニット〈HUMORABO(ユーモラボ)〉の前川雄一さんと前川亜希子さん、4組。

それぞれのプロフィール、活動におけるポリシーや座右の銘、これまでのものづくりの具体的な事例や、福祉施設との関わり方などが語られました。

左から、〈一般社団法人シブヤフォント〉の磯村歩さん、〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉の加藤未礼さん、〈con*tio〉の山口里佳さん、杉千種さん、〈HUMORABO〉の前川雄一さん、前川亜希子さん

コンサルタント、コミュニケーションデザイナー、コーディネーター、デザイナーと、ゲストの活動内容は異なるものの、それぞれの話にはひとつの共通点が。それは、関わる商品が形になったり、軌道に乗ったりするまでに、「多くの時間」と「丁寧なコミュニケーション」を重ねてきたということ。

「福祉とデザインの領域で【0→1→継続】を担う」(磯村歩さん)

「商品を通じて、社会と障害のある方の間に入る“翻訳家”になる」(加藤未礼さん)

「どうしたら障害のあるメンバー(利用者・仲間)の幸せにつながるのかを考える」(con*tio)

「福祉を真ん中に考えるとは、人の幸福を真ん中に考えること」(HUMORABO)

プレゼンテーションのなかで語られたこれらの言葉にも、表からは見えにくい部分にこそ時間をかけて向き合い、対話を続け、社会全体の幸せを願う、という共通項が見てとれます。

ものづくりにおけるプロセスの最も重要な部分はどこなのか。そのようなことに改めて意識を向ける時間となりました。

【画像】登壇者たちの写真

ゲストに4つの質問を投げかける「クロストーク」

続いては「クロストーク」へ。〈こここ〉編集部から本プロジェクトのスタッフを担当している岩中可南子さんが、4つの共通する質問をゲストに投げかけ、ゲストがそれぞれの視点で事例などを交えながら答えていきます。

本音を交えつつ、真摯に質問に向き合うゲストたちから語られた言葉の一部をご紹介します。

一つ目の質問が記載されたスライド資料

ひとつ目の質問は、「ものづくりのゴールや目標設定」について。

最初に回答したのは〈シブヤフォント〉の磯村さん。渋谷区の障害者支援事業所の利用者が描いた文字やイラストを学生との共創によってデジタルパターンにし、それらを利用する企業などからライセンス料を得て、施設へ還元する仕組みを整えてきました。

そんな磯村さんは、施設によっては「工賃向上」の目標が、その事業所の状況にそぐわない場合もあるとし、違う軸での評価指標も必要では、と語ります。

磯村:〈シブヤフォント〉に作品が採用された利用者は「自分はアーティストだ」という自信を持つなど、“行動変容”が生まれることが多々あります。その変容は「関係人口」が増えたことによるものだと考えています。そこで〈シブヤフォント〉は、新たな評価指標として、利用者と直接交流する関係人口をどれだけ伸ばせるかにチャレンジしているところです。それは多くの施設の目標設定にもなるんじゃないでしょうか。

〈シブヤフォント〉磯村歩さん

続く回答者は、〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉の加藤さん。課題解決に導くオリジナルワークショップ「Talk Tree WORKSHOP」を確立させ、多くの福祉施設で実施してきました。

施設からの問合せは「ものづくりで悩んでいる」「工賃をどうにかしたい」が殆どだという加藤さん。ところがヒアリングを重ねていくと、それ以外の課題が見えてくるといいます。

加藤:詳細に聞いて、課題を分析し、共有しながら、職員の皆さん自身が気づいていくような対話の機会をつくります。そこから私の経験などを共有し、すり合わせて、アイデアやゴールを一緒に話し合っていきますね。

続いて、福祉施設と企業・デザイナーなどをつなぐ“中間支援者”として活動する〈con*tio〉が回答。支援の現場でその時々に必要なことを一緒に考え、サポートしてきたおふたりの考えとは?

con*tio:外部の人があまりにも大きな視点の目標を提示すると、職員さんとはどんどん距離感が開いていくんです。なので、まずは「目の前の利用者さんはどんな時に笑顔になる?」といった“小さな視点の共有”から入ります。重要なのは、職員さんたちと意識を共有すること。

また「職員さんたちが楽しく活動できるには?」という目線も持ちながら、丁寧に関わり続け、共感してくれる職員さんを増やしたりするなかで、ちょっとずつ目標が見えてきたり、近づいていったりしている、というのが実感です。

〈con*tio〉のおふたり。左から、杉千種さん、山口里佳さん

最後は〈HUMORABO〉から。手漉きのリサイクルペーパー「NOZOMI PAPER®」をさまざまな形に発展させ、福祉施設だけでなく企業も巻き込み、社会と福祉の楽しい関係性を築いてきた前川夫妻。今回のお題に関して「『いくら売るためにつくる』という目標設定は一切していない」と語ります。

HUMORABO(前川雄一):「福祉とあそぶ」をテーマにしているので、こういうことが社会でできたらいいな、がスタートにあって、それに共感してくれる人がいて、それに丁寧に答えることの繰り返しが消費につながっていると感じています。

とはいえ、僕も最初は目標設定型で。夢みたいなことをバーンと思い描いて、施設さんからはポカーンとされて。そんな状況が3~4年続いて、5年後くらいから一緒に歩み始められるようになった気がします。

指標の在り方を再考する、関係者に気づきを持たせる、職員と目線を合わせる、時間をかけて伴走し、積み重ねていく――そんな言葉が出た本トーク。「目標とゴールの設定」に絶対的なルールや答えはないものの、時間とコミュニケーションの積み重ねのなかで自然と生まれてくるものなのかもしれません。

二つ目の質問が記載されたスライド資料

続いての質問は、「商品の値決め、流通先の開拓」について。比較的、低価格に設定されることも多い福祉発プロダクト。ゲストの皆さんはどのような考え方と方法で価格を決めているのでしょうか。

HUMORABO:「他施設が100円だから、うちも」という考え方じゃなくて、まずは市場価値をリサーチして、自分たちの商品はどのゾーンにはまるかを知るなかで、いくらで売りたいか? という考え方になってくると思います。

作業時間や原価を考えるとその値段じゃ……という場合は商品を変えたり。例えばうちの場合、1枚60円のはがきに活版印刷することで300円で売れるんですね。

あとは、売る場所。真っ白な漉き紙はバザーでは売れないけれど、紙好きな人が集まる文具博や印刷イベントではめちゃくちゃ売れるんです。「ほしい人に、適正価格で売る」という感覚を持つといいのかなと思います。

〈HUMORABO〉のおふたり。左から、前川雄一さん、前川亜希子さん

con*tio:すごく丁寧な仕事をしてるのに激安で売られていて、もったいないな~と思うこともあります。けれど、高ければいいっていうわけでもなくて。値段を上げ過ぎると「なぜ上げたのか?」が言語化できなくなるという課題もあるかなと思います。上げるためにはどうするか? という話から始まりますね。

一方で、プロモーションになりそうな商品や、インパクトを与えたい商品には、びっくりするような価格を設定することも。そうすることで見てもらえたり、伝えたいことが伝わったり、ということもあるんです。

加藤:一般の小売りの値段設定は「原価×3倍」が基本ということもあって、ひとつの考え方として「原価(材料費+払いたい工賃)×3倍」とするのもいいのではと思います。

磯村:〈フクフクプラス〉、〈シブヤフォント〉は、データライセンス、イベント、ワークショップ、デザインなど主に企業向けのサービスが基本で、企業と対等な交渉のなかでデザイン費などを加えた価格設定ができるので、福祉施設に対する仕入れも適正価格で提供できるんです。

小売りの場合は「どこで戦うか」が重要だと思います。普通のバザーなら手に取られにくい商品も、例えば原宿の商業施設なら1.3倍でも売れる。売り場を最初に決めて、その売り場に対してどんな商品と値段を立てつけていくかという“プロダクトアウト”もひとつの手かもしれません。

市場価値を知る、基本的な小売りの値づけを参考にする、マーケティングの手法を取り入れる。こう考えてみると、福祉発プロダクトだからといって低価格に設定する必要はなく、一般的な小売りの値づけと一緒の考え方でもいいといえます。

さまざまな考え方や知見を持つゲストのアイデアに、勇気をもらった施設も多くあるのではないでしょうか。

三つ目の質問が記載されたスライド資料

続いては、「施設のモノゴトの発信」について。各施設の特徴、商品にまつわるストーリー、制作の背景など、広く届けたい情報をゲストの皆さんはどのように発信しているのでしょうか。

con*tio:施設の職員さんへ「日常のなかのちょっとおもしろいと思ったことを、ぜひ発信してください」と常々お願いしています。日常すぎて取り上げようと思わないかもしれないけれど、外部からしたらそれこそ価値がある。そのおもしろさを施設の中だけで消費せず、ブログやSNSなどで発信してほしいんです。

HUMORABO:私たちはどちらかというと他力本願なので(笑)、商品に対する背景や魅力をわかりやすい言葉で説明したリーフレットなどのツールをつくって、それを商品と一緒に手渡します。そうすると、買ってくれた人が広めてくれるんですね。手漉きの名刺を渡したときも、「この紙なんですか?」から話が始まって、その人が PR大使になってくれたりします。

〈HUMORABO〉による名刺の活版印刷実演。この印刷機も、手漉きの名刺台紙も〈HUMORABO〉がプロデュース。目の前で刷ることでコミュニケーションが広がり、商品にも興味を持ってもらえるという

磯村:渋谷区の職員さんの名刺には〈シブヤフォント〉のフォントやパターンを採用いただいてるんですが、これがとても強力な営業ツールになっていて。「名刺、見ましたよ」って声をかけられることも多いですね。世田谷区でこれから動き出す〈せたがやフォント〉がリリースされたら、ぜひ世田谷区にも協力してもらえるといいかもしれません!

加藤:販売会などに参加すること自体が大きな広報活動だと考えています。そこには、パンフレット、名刺、ショップカードといった配り物も必須。SNSをやっているなら、ページにアクセスできるQRコードを用意したり。そうしているなかで、実はパンフレットの情報が相当古かった……ということにも気づいたりするんです。

「広報、発信」とあまり難しく考えなくても、普段皆さんがやってることに対して客観的な目を持ってみる。外からどう見られたいか、どう見られているのか、を意識してみるのも大切かなと思いますね。

〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉の加藤未礼さん

「広報」という言葉からは専門的なナレッジや活動をイメージしがちですが、チラシ、名刺、売り場、接客など、日常的にあるモノゴトがツールとなり、メディアになるということに改めて気づかされるトークとなりました。

四つ目の質問が記載されたスライド資料

最後の質問は、「ヒット商品はいかに生まれたか」について。さまざまなものづくりに関わってきたゲストたち。そのなかで特に反響があった商品とは? またどんな経緯で生まれたのでしょうか?

加藤:関わる施設でたくさんのTシャツをつくってきた中では「白地に黒のプリントTシャツ」がロングセラー。やっぱりコーディネートしやすいからですかね。また、そこに刺繍を入れることによって一点ものに様変わりしたり。何でもネットで買える時代だからこそ、一点ものに魅力を感じる人が多い傾向にあるなと感じています。

磯村:障害のある人の描かれたアートを二次利用した商品化を進める中でヒットしたのが「イヌデス」という柄のTシャツ。どう見ても「ネコ」のイラストなんですけどね(笑)。渋谷スクランブルスクエアのお土産物売り場の中でベスト3ぐらいの売り上げに。これは売り場と連動してヒットした例ですね。

Tシャツ、ハンカチ、タオルなど、複数購入してお土産品やプレゼントとして配れるような商品が比較的売れている気がします。

con*tio:私たちは、この施設にこんな人がいて、どんな特性があって、この商品が生まれたか、という“存在が見えるもの”をプロダクトとして出したいという思いがあるんです。その人たちを身近に感じてもらいたいし、なんなら一緒におもしろがるきっかけをつくりたい。

〈こここ〉でも紹介した「紙ふぶき」は、埃などを集めるという、一見すると問題とされる利用者さんの行動を見たデザイナーが、発想を変えればおもしろい商品になるのでは? って反応して。そんなアイデアから生まれて、結構ヒットしました!

HUMORABO:革細工を得意とする施設とのコラボでつくった「キーホルダー」があります。あるとき、B品がたくさん出たという連絡があって、どういうところがB品かわかるように送ってもらったところ、「いつもより濃い色になっております」「(染色でムラになったところが)ちょっと味があります」と書かれたタグがついていて。私たちから見れば、これがB品なのか⁉ というクオリティだし、それよりもこのタグがすごくおもしろい! と思ったんです。それで私たちは、このタグがついたままA品と同価格で販売したら、B品といわれる方が売れるんですね(笑)。

施設のほうが商品のクオリティに対する意識がすごく高い。でも、それが自分たちの首を絞めている状況もある。だからこそ、発信や販売の仕方で売れるものになることを伝えながら、B品というものをなくしていきたいなと思っています。

売れやすい商品や販売方法がありつつも、やはり思いがけないところからヒット商品が生まれている様子。また「おもしろがる」ことから生まれた商品が人気を博すアイテムとなる可能性があることもうかがい知れるトークでした。

〈HUMORABO〉が関わったプロダクトを並べたブース。興味深そうに手に取りつつ、商品について前川夫妻に質問を投げかける来場者も

クリエイターの仕事に対するフィーはどう支払う?「質疑応答」

クロストークの後は、来場した福祉施設関係者やクリエイターからの質問にゲストが答える「質疑応答」へ。

「アートの発展のために必要なスキル、ナレッジ、視座とは?」「クリエイターの仕事に対するフィーについて」「障害のある人たちにとってのアート活動の意義とは?」といった質問があがりました。

今回は多くの施設関係者やクリエイターが気になる「クリエイターの仕事に対するフィー」について、具体的な事例をとり上げて語った〈HUMORABO〉の回答をご紹介します。

HUMORABO:福祉施設との最初の関わりは助成金から始まって、そのあとは施設と年間で契約したり、一緒にプロダクトを生み出して、その売上からまかなうことになった、というケースもあります。

他には、施設から商品を仕入れて、僕らが販売することもあります。施設から「新商品を制作してほしい」という依頼があれば、そのデザインにかかる費用を施設にご用意いただくこともありますね。

大切なのは、施設に無理がなく、自分たちも関わり続けられることだという〈HUMORABO〉。そういったルールづくりや値決めは、施設とのコミュニケーションの中から生まれているといいます。

〈シブヤフォント〉、〈フクフクプラス〉においては、企業に向けた障害のある人のアートを活用したサービス、デザインを提供していることから、企業からの委託費で、全ての運営費を賄っているそうです。

ほか2組のゲストも、助成金を活用したり、コンサルティング費・企画費・アトリエ活動の講師費などを施設に用意してもらうことが多いといいます。年間におけるミーティングの回数などを予め設定してフィーに換算し、年間または中長期の契約を結んでいる施設もあるなど、さまざまな事例を伺うことができました。

クリエイターの関わり方、チームの規模、期間などによって金額は変わり、施設とクリエイターの交渉の仕方もそれぞれ異なるというのが実情。実際に交渉していく際は、それぞれの思いを素直に出し合いながら相談していくのが良さそうです。

交流会の様子。それぞれ名刺交換をしたり、ゲストに個別相談する施設職員など、賑やかな時間に

リアルなものづくりの現場のこと、目標やゴール設定、お金の話など、なかなか聞くに聞けない事例もさまざまに語られた本フォーラム。質疑応答の後は、ゲストや来場者の出会いの場を目指した交流会が行われました。

参加した福祉施設職員からは、「職員間のコミュニケーションの大切さ、利用者をよく見ることの大切さという点が印象的」「成功例だけでなく、失敗例も含めて聞け、とても貴重な時間となった」「今後の方向性を考えるいい機会になった」などの感想が。

また、福祉施設と協働を始めたばかりというクリエイターからも「プロダクトのブランディングを始めたばかりで迷うことが多かったが、先駆者のクリエイターの取り組みを知り、大きな勉強になった」という声もありました。

本フォーラムでのゲストトークから、福祉のものづくりで活かせるさまざまなヒントが見つかったのではないでしょうか。また今後、交流会での出会いをきっかけに、なにか新しくてユニークな協働が生まれるかもしれません。


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