ニュース&トピックス

LGBTQ+の子どもが安心して過ごせる学校環境を。シリーズ最新版「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」の無料配布がスタート
商品・プロダクト紹介

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. LGBTQ+の子どもが安心して過ごせる学校環境を。シリーズ最新版「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」の無料配布がスタート

赤い箱に入った「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」の教材一式の写真
「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」の製品パッケージ版。こちらに含まれる全ツールをオンライン上で無料配布しています

教員用の資材キットを〈ReBit〉がオンラインで配布中

「自認する性で生きられないことが死にたくなるくらい辛いことだと分かってほしい。何気ない言葉に沢山傷ついてるのを知ってほしい、気づいてほしい」

このメッセージは、出生時に割り当てられた性に違和感を感じている子ども・若者を対象としたアンケート「LGBTQ 子ども・若者調査 2022」(※注1)に寄せられた、10代の回答者の言葉です。

「死にたくなるくらい辛い」と思い詰めるほど、家庭や学校生活のなかでさまざまな困難に直面しているLGBTQ+の子どもや若者たち。同調査では、そのうち10代の約2人に1人が過去1年間に希死念慮を抱え、14%が自死を試みたというデータが公表されています。

こうした状況下で〈認定NPO法人ReBit〉は、教職員がLGBTQ+について学び、安全な学校環境や相談体制を整えるための支援ツール「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」を、2025年3月にオンラインで無料公開しました。ちなみに「Ally(アライ)」とは、LGBTQ+の理解者、支援者、味方を意味します。

(※注1)「LGBTQ 子ども・若者調査 2022」認定NPO法人ReBit(2022)

ガイドブック「学校環境を整える実践集」「相談対応のケース集」の2冊の表紙と、ポスター&ステッカーの画像
「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」に含まれるハンドブック、ポスター、ステッカー

急務となっている、LGBTQ+の子ども・若者への支援

性的マイノリティであることを表す「LGBTQ+」。調査によって差はありますが、学校の30人クラスであれば、およそ1〜3人ほどが当てはまると考えられています。

過去の調査によると、LGBTQ+の68%が小学校~高校の間にいじめを経験しているといい(※注2)、「LGBTQ子ども・若者調査2022」でも、過去1年間にLGBTQ+の子ども・若者の70%が、学校にてセクシュアリティに由来する困難やハラスメントを経験したといいます。

先述の希死念慮や自死未遂のデータを見ても、教職員や保護者など、子どもや若者と接する機会の多い大人が中心となり、LGBTQ+への理解を深め、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることは急務です。

「LGBTQ子ども・若者調査2022」に寄せられた子ども・若者の声。(左)「『ホモネタ』でクラスがどっと笑った。紛れるようにぼくも笑ったけど、自分を笑っているようだった。」 (右)「中学のとき、いじめられていた。『本当に女なの?』と制服を脱がされたり、上履きをトイレに入れられたりした。」 

国としてもこの問題に向け、2023年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」を制定。2024年度からは小学校の保健体育教科書に、2025年度からは中学校の道徳教科書に性の多様性が掲載され、学校現場での学びの機会が拡大しています。

一方で、それらの指導を行っていく学校や教職員からは「どのように取り組めばよいかわからない」という声が多く寄せられているといいます。

(※注2)平成25年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業「LGBTの学校生活に関する実態調査」いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン(2014)

“アライの先生たち”を応援する、大人のための資材キット

そうしたなか、学校・行政・企業でLGBTQ+やダイバーシティに関する授業・研修を提供してきた〈ReBit〉は、子どもの性自認がどのような場合であっても、安全で安心できる学校環境づくりを推進する“アライの先生たち”を応援する資材キット「Ally Teacher’s Tool Kit」の開発を進めてきました。

今回公開された「安心な学校をつくろう編」に先駆けて、中学校で多様な性についての授業を行うための教材キット「中学校で授業しよう編」を2017年に制作し、今も無料ダウンロードできる形で公開されています。2018年には「小学校高学年で授業しよう編」も公開され、全国の学校関係者や教職員に活用されてきました。

「小学校高学年で授業しよう」「中学校で授業しよう」のキットのイメージ画像

そして、今回の「安心な学校をつくろう編」では、学びのターゲットを“大人”に定めました。学校の先生をはじめ、子どもの周りにいる大人が「多様な性」を学び、そのうえで「安全な学校環境」や「相談体制」を整えるためのキット内容となっています。

200名の教職員と、2670名のLGBTQ+ユースの声をもとに制作

「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」には、研修動画、ハンドブック、ポスターなど、計17種類の資材が含まれ、専用サイトからダウンロードすることができます。

またダウンロード版だけでなく、DVDや紙のハンドブックなどをセットにした製品パッケージ版も用意されており、教職員・行政職員に限って無料で取り寄せすることができます。学校の授業で取り入れてみたい方は〈ReBit〉の公式サイトから申し込み可能です。

「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」のキットの中身を並べた写真
17のキットの明細。先生が学ぶためのものと、学校環境や相談体制を整えるためのものがあることがわかる

本キットは、全国の教職員200名の実践事例や、LGBTQ+ユース2670名が回答した「LGBTQ子ども・若者調査2022」の声をもとに制作されています。また、教育委員会、スクールカウンセラー、ユース支援団体、弁護士、医師など、多様な専門家の協力と、2024年に〈ReBit〉が行ったクラウドファンディングの支援者151名により、開発が現実のものとなりました。

キットを通じて、LGBTQ+のこと、子どもや若者の声、LGBTQ+を包摂した学校・学級づくりの実践事例、実際に生徒から相談された際の対応例などを学ぶことができます。また、出力してそのまま掲示できるポスターや、アライであることを示すステッカーの使い方なども紹介されています。

「LGBTQ/SOGIEを包摂した学校・学級づくりの実践」と題された9・10ページの見開き画像
キット内「LGBTQ/SOGIEインクルーシブな学校・学級づくりハンドブック」より

キットの効果的な使い方を知るオンラインイベントも

これまでも、LGBTQ+の子どもたちが安心して過ごせる環境づくりの支援・強化として、教職員向けのオンライン勉強会・相談会を行ってきた〈ReBit〉。今後は、学校の取り組みや生徒からの相談対応に関する個別相談・伴走支援も可能な範囲で実施していくといいます。

2025年6月12日(木)20~21時には、「LGBTQ子ども若者調査2025」の最新結果とあわせて、「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」の効果的な使い方を紹介するオンラインイベントを実施予定。詳細は〈ReBit〉の公式サイトやSNSをご確認ください。

赤・橙・黄・緑・青・紫のレインボーカラーをベースに、「JGBTQも安心できる場所にしよう SAFE SPACE」と書かれたバナー

「Ally Teacher’s Tool Kit」各種は、学校の教職員はもちろん、地域の児童館・図書館職員、習い事の講師、スポーツ関連のコーチやインストラクター、子どもの居場所づくりやイベント運営などを行う人など、子どもや若者と直接関わる大人にも有益で、大いに活用できるキットとなっています。

私たちのごく身近にも、困難をひとりで抱えこむ子どもや若者はきっといるはず。まずは一度無料のキットを通じて、LGBTQ+の子ども・若者の声や、アライ先駆者たちの実践に触れてみませんか。そして、すべての子どもたちが安心して過ごせる環境はどのようなものか、思いを巡らせる契機にしてみてはいかがでしょうか。