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表現×ケア×テクノロジーのこれからを考える「Art for Well-being」が福祉施設と協働する技術者を募集中。6月15日まで
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【画像】アートフォーウェルビーイングの概要テキストと画像
「〈Art for Well-being〉 伴走型実践プログラム」主催:文化庁/一般財団法人たんぽぽの家
文化庁委託事業「令和7年度障害者等による文化芸術活動推進事業」

「Art for Well-being」が、新たな表現活動を創出する技術者を募集中

絵を描いたり、文章を書いたりする以外にも、身体を動かしたり、音を立てたり、人は常に何かを表現しようとして生きています。自分以外の誰かに何かを伝えようとすることは、生きていることの証そのものとなるのではないでしょうか。一般財団法人〈たんぽぽの家〉が取り組む「Art for Well-being」は、そんな表現活動をサポートするプロジェクトです。2020年にスタートして以来、病気や事故、加齢、障害の重度化など、心身がどのような状態に変化したとしても、さまざまな道具や技法などのテクノロジーとともに、誰もが自由に創作をはじめることや、表現することを継続できる方法を模索してきました。

この度、そんな「Art for Well-being」が、表現×ケア×テクノロジーで新たな表現活動の実践事例を創出するための公募・伴走支援プログラムを実施。現在、このプログラムで障害福祉等の施設と協働して新たな表現活動の実践事例を創出する“技術者”を募集しています。「Art for Well-being」における“技術者”とは、テクノロジーを自在に解釈し自由に使いこなすアーティスト・デザイナー・エンジニアなどを指すものです。一般的な技術者の定義をひろげるために意図的に使用されている言葉で、今回もAIなどのIT領域に限らず、ファッションやプロダクトデザインなど幅広く募集が行われています。

募集期間は、2025年4月30日(水)6月15日(日)17時まで。採択されたアイデアには、〈たんぽぽの家〉事務局と、プログラムの全体監修を行う小林茂さん(情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授)が伴走してサポートを行います。また、実践プログラム期間中に必要な費用として45万円が助成されます。

【画像】
プロジェクトがはじまるきっかけとなった武田佳子さん。若いときから絵を描くことが好きで、障害の重度化とともに画材や描く方法を変えながら工夫し、描き続けてきました

「アート」と「ケア」の視点でプロジェクトを実施する〈たんぽぽの家〉とは

このプロジェクトを主催する〈たんぽぽの家〉は、「アート」と「ケア」の視点から、さまざまなアートプロジェクトを実施している市民団体です。〈こここ〉でも、度々その活動を取り上げていますが、障害のある人のアートを新しい視座で捉え直す「エイブル・アート・プロジェクト」や、障害のある人の詩を歌にのせて伝える「わたぼうしプロジェクト」など、さまざまな団体と連携しながら、文化と夢のある社会づくりに取り組んでいます。

〈たんぽぽの家〉では、2017年に「Art for Well-being」が始まるきっかけとなる福祉×現代技術の実験的で実践的な取り組み「IoTとFabと福祉」をスタート。2020年からは、たんぽぽの家と連携するアートセンターHANAのアーティストの創作活動の変化を出発点として、「Art for Well-being」のプロジェクトを実施しています。

「Art for Well-being」はどのような目的で実施されている?

「Art for Well-being」のプロジェクトは、主に以下の3つの目的で開催されています。まず1つ目は表現 × ケア × テクノロジーの実践事例の増加」。テクノロジーを活用して、創造的な表現活動のモデルケースを生み出します。2つ目に「テクノロジーを自在に解釈して自由に使いこなす“技術者”の育成」。福祉の現場との協働を通じて、新たな視点とスキルを持つ人材を育成します。3つ目が「障害福祉の現場、コーディネーター、“技術者”の連携の機会創出」。異なる専門性を持つ人々が出会い、学びあい、協力しあうネットワークを構築します。“技術者”募集は、これらすべての目的を満たすために行われるもので、今回の公募は初めての試みとなります。

これまでの「Art for Well-being」の取り組みについて

これまでにも「Art for Well-being」では、表現×ケア×テクノロジーという観点からさまざまな表現活動、鑑賞方法、販売方法の事例を生み出してきました。その中の一部を紹介します。

VRのなみのなかでたくさんのひとがさまざまにうごいているイラスト
「WAVE: なみのダンスとMR」の実演イメージ イラスト:萩原 慶さん

「WAVE: なみのダンスとMR」では、VRゴーグル「Meta Quest3」を用いて、現実世界と仮想現実を融合させた世界のなかで生まれる新しい感覚や表現をどのように共有できるのかを試す実験的な取り組みを行いました。

ろくおんしたり、パソコンで音をへんしゅうしたり、みんなで音をきいたりしているイラスト
「音との新たな出会いを生み出すAI」のワークショップ開催イメージ イラスト:萩原 慶さん

「音との新たな出会いを生み出すAI」では、音楽プラグイン「Neutone(ニュートーン)」を用いたワークショップを企画・開催しました。2回行われたワークショップには障害のあるアーティストやテクノロジーの研究者、音響デザイナーなど多様な人たちが参加。グループ内で話し合いながら作品をつくることにより、AIも含めた全員でセッションをしているようなコミュニケーションを生み出しました。

参加者がセッションをおこなっているイラスト
「とけていくテクノロジーの縁結び」の即興セッションイメージ イラスト:萩原 慶さん

「とけていくテクノロジーの縁結び」では、インタラクティブメディア研究者/アーティストの筧康明さん、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断を受けた体奏家の新井英夫さんと、踊る手仕事屋の板坂記代子さん、ジャワ舞踊家・佐久間新さんがコレクティブを組み、新たなダンスを模索。レインスティックと呼ばれる楽器と重力加速度センサを素材に用いたデバイスや、影絵用デバイスを開発したり、空気の動きや空気中の二酸化炭素を可視化する装置を環境内に置いたりするなどして即興セッションを行いました。

このほかにも、障害のある人や福祉関係者を対象に「NFT」「ブロックチェーン」「メタバース」などをテーマとした座学やワークショップを実施。〈シビック・クリエイティブ・ベース東京(CCBT)〉などでの展覧会やシンポジウムも開催しています。

20253月には、「Art for Well-being」プロジェクトを通して得られた知見を、大きく二つのパート「関わった人たちの声を聞く」「Art for Well-beingってなんだろう?」に分けて伝える冊子を作成しました。

5月13日と5月15日に開催されたオンライン説明会のアーカイブ動画

今回の公募では、障害福祉等の現場に関わった経験の有無は問わず、それら施設等との協働を行い表現×ケア×テクノロジーの実践に取り組みたいと考える個人や団体、アート、デザイン、エンジニアリング等のスキルを福祉の現場で活かしたいと考える個人や団体が求められています。

このプログラムにおける“技術者”の役割としては、実践事例づくりのほかに、実践の記録、発信、共有と成果報告が挙げられます。採択されたアイデアには、〈たんぽぽの家〉事務局と、プログラムの全体監修を行う小林茂さん(情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授)が「協働先の調整」「定期的なミーティング」「専門家からのアドバイス」などを行い、実施に伴走してサポートを行います。また、実践プログラム期間中に必要な材料費、開発費、旅費交通費などの費用45万円が助成されます。

※ 報告会への旅費交通費は別途支給

テクノロジーを人のために使うこともまた表現活動のひとつといえます。〈たんぽぽの家〉や「Art for Well-being」のコンセプトに共感して、自らも関わりたいと思う人、自身のスキルが活かせると考える人は応募を検討してみてはいかがでしょうか。