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孤独・孤立をアートの視点から考えるアートプロジェクト「ある日」。2月21日〜3月2日まで、神奈川県の4市共同企画で開催
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アートプロジェクト「ある日」画像

アートで孤独を見つめる。神奈川4市で、アートプロジェクト「ある日」が開催

「誰かと話したいけど、話せない」「ひとりぼっちな気がしてしまう」。慌ただしくすぎる日々の中、気がつけば人とのつながりが薄れてしまい孤独を感じたり、ありのままの自分でいられる場所が少なくなってしまったと孤立感を抱えたりすることはありませんか。

そんな孤独や孤立を、アートの視点から見つめるアートプロジェクト「ある日」が、神奈川県の座間市・大和市・海老名市・綾瀬市の4市共同企画で開催されます。会期は、2025年2月21日(金)〜3月2日(日)までです。

キュレーションを担当したのは、「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに多様な分野で企画を行う田中みゆきさん。飯川雄大さん、金川晋吾さん、キュンチョメの3組のアーティストに加え、相談支援を利用する人や支援に関わる人も本プロジェクトの作品制作に携わっています。

目に見えない「孤独」や「孤立」を、アートでそっと表現する

アートプロジェクト「ある日」は、内閣府の「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」の一環として、座間市・大和市・海老名市・綾瀬市の4市が連携し主催・企画しています。

主催・企画を務める4市はそれぞれ、包括的支援体制の構築を目指し、地域のさまざまな相談事を受け止め、他機関につないだり対応したりする相談支援を行っています。支援を行う中で見えてきたのが、福祉的な支援を受けていなくても、生きていくことに困難さを感じている人々の存在です。社会の発展とともに、“ふつう”の生き方や“当たり前”の働き方がなんとなく固定化され、息苦しさや居心地の悪さを感じている人が実は多くいることに気がつきました。

そこで、アートを通じてそれぞれの視点から孤独や孤立を見つめ直そうと本プロジェクトが始動。作品に触れ、言葉にしづらい感情や心の機微に向き合うことで、「孤独」や「孤立」に対する違う視点を得られるきっかけになるかもしれません。

キュレーター・プロデューサーの田中みゆきさん画像

そんな「ある日」のキュレーターを務めるのは、フリーのキュレーター・プロデューサーの田中みゆきさんです。「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに、さまざまな展覧会・イベントを手掛けてきました。例えば、ダンス表現のあり方を問うワークショップ「音で観るダンスのワークインプログレス」や、新しいルールの見方・つくり方・使い方を考え直す「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、2021年)などがあります。

それぞれの視点で「孤独」を捉える3組のアーティスト

「ある日」には3組のアーティストが参加しています。1人目は神戸在住の現代美術作家・飯川雄大さんです。

現代美術作家・飯川雄大さん画像

飯川さんは、映像、写真、インスタレーションを中心とした作品を制作しています。2007年からは、擬態する蟹の名前に由来する〈デコレータークラブ〉の制作をスタート。作品と鑑賞者との関わり合いを蟹の生態になぞらえて、鑑賞する人の行為によって起きる偶然をポジティブに捉え、思考を誘発する能動的な作品を展開しています。
これまでに、「つくりかけラボ04|0人もしくは1人以上の観客に向けて」(千葉市美術館・2021年)、「同時に起きる、もしくは遅れて気づく」(彫刻の森美術館・2022年)で作品を発表してきました。

「つくりかけラボ04 デコレータークラブ|0人もしくは1人以上の観客に向けて」での作品画像
〈千葉市美術館〉で行われた個展「つくりかけラボ04 デコレータークラブ|0人もしくは1人以上の観客に向けて」での作品

2人目は、写真家の金川晋吾さんです。親族や同居人など、身近な人々や、そこでの生活を撮影し、自己と他者の関係性を探る作品を手掛けています。

写真家・金川晋吾さん画像

2018年に横浜市民ギャラリーあざみ野で個展「長い間」を開催、2022年「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館)、2024-25年「現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21」(東京都写真美術館)などに参加し、写真に日記やテキストを添えて言葉での表現も行っています。主な著作に、失踪を繰り返す父親を写真で捉えた作品シリーズ『father』(青幻舎)や、『いなくなっていない父』(晶文社)などがあります。

個展「長い間」で展示された作品画像
2018年に、〈横浜市民ギャラリーあざみ野〉で開かれた個展「長い間」で展示された作品

3組目は、ホンマエリさんとナブチさんによるアートユニット・キュンチョメです。東日本大震災をきっかけにアーティストとしての活動をスタートしました。制作行為を「新しい祈りの形」であると捉え、様々な社会問題や自然災害をテーマとする作品を発表しています。

アートユニット・キュンチョメ画像

これまで参加した展覧会に、「六本木クロッシング2022:往来オーライ!」(森美術館)、「現在地:未来の地図を描くために[1]」(金沢21世紀美術館)などがあります。

キュンチョメの作品「金魚と海を渡る」画像
2022年に、柳原良平さんが撮影したキュンチョメの作品「金魚と海を渡る」

そんな3組のアーティストとともに作品に携わったのが、相談支援に関わる人たちです。本プロジェクトで展示されるのは、相談支援を利用する人と支援に携わる人たちが、3組のアーティストとともに過ごした「ある日」の記録をもとに生まれた表現作品です。私たちの日常に流れるささやかな感情や言葉にならない気持ち、誰かの孤独に触れることで、周囲と繋がる最初の一歩目になるかもしれません。

開催に伴い、ギャラリーツアーやシンポジウムも開催

展覧会「ある日」は、神奈川県の2会場で行われます。それぞれ展示作品や会期が異なるため、確認してから足を運んでみてください。

1つ目の会場となる〈座間市役所〉では、3組のアーティストの作品展示や金川晋吾さんとキュンチョメによるワークショップ参加者の作品や記録を展示。会期は、2025年2月21日(金)〜3月2日(日)です。2つ目の会場となる〈海老名中央公園・ビナウォーク〉でのには、飯川雄大さんとワークショップ参加者の作品を展示します。会期は、2025年2月21日(金)〜28日(金)です。

併せて、2025年2月22日(土)には、座間市役所にて「ある日」ギャラリーツアーを開催。キュレーターの田中みゆきさん、座間市市役所の武藤清哉さんが作品の解説を行います。

また、展覧会の開催に合わせて、2025年2月21日(金)に、シンポジウム 「孤独・孤立にアートができること」 が〈大和市保健福祉センター〉にて2部制で開催されます。

第1部は「孤独・孤立とアートの力」 をテーマにしたトークセッション。内閣府孤独・孤立対策推進室政策参与であり、認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連さんと、秋田市文化創造館長と東京藝術大学美術学部准教授を務め、心理療法士でもある西原珉さんをパネリストとして迎えます。

第2部は、田中みゆきさんと、NPO法人抱樸の理事長・奥田知志さん、一般社団法人ひきこもりUX会議の理事・室井舞花さんの3名で「孤独・孤立支援における広域/多職種連携の必要性」をテーマにトークを行います。ファシリテーターは、大西連さんが務めます。

支援する人/される人、表現する人/見る人—— そうした境界を超え、アートをきっかけに関わり合う。さまざまに現れる参加者の姿や表現から、ふだん考えることのない自分や他人、世界との繋がりを見つめてみませんか。