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誰にでもひらかれた居場所〈ちまた公民館〉が、浜松市の万年橋パークビルに移転オープン
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【写真】軒先で話す中年男性と小学生ぐらいの女の子。建物の中では複数人が談笑している

おしゃべり、遊び、講座、ぼんやり…だれもが自由に過ごせる私設公民館

「居場所」と聞くと、どのような空間を思い浮かべますか。気の休まる家の一角、近所の喫茶店、静かな図書館…誰かの近くにいることを「居場所」と感じる場合もあるかもしれません。

静岡県浜松市には、誰もが自由に利用できる〈ちまた公民館〉があります。地域の人や遠くから訪れてきた人、ふらっと立ち寄った人が、おしゃべりしたり、読書したり、何もせずにただぼんやり過ごしたり。時には講座やイベントが開かれたりと、人が集い、行き交う場所です。そんな〈ちまた公民館〉が2024年6月、浜松市中心部の〈万年橋パークビル〉に移転オープンしました。

自身を「表現」しながら、ありのままに暮らせる環境づくり

〈ちまた公民館〉は、NPO法人クリエイティブサポートレッツ(以下、レッツ)が2022年秋から運営している私設公民館です。

レッツとは、障害や国籍、性差、年齢などあらゆる違いを乗り越えて、さまざまな人が共に生きる社会の実現を目指すアートNPO法人。2000年に活動をスタートさせ、現在は生活介護やヘルパー事業などを手がけています。主に知的障害のある人が自分たちを「表現」しながら、ありのままに暮らせる環境をつくるべく、アートという切り口で実践を重ねてきました。

【写真】建物の中で、レッツのメンバーが座ったり、歩いたりして、それぞれ自由に過ごしている様子
レッツの中心拠点である〈たけし文化センター連尺町〉

中でも大切にしているのが、施設の中にとどまらず、地域や福祉業界の外にいる人たちを巻き込んでいくこと。分野は福祉、アート、街づくり、教育など、多岐にわたります。

これまで〈こここ〉では、レッツのさまざまな取り組みを取り上げてきました。

・一見取るに足らない行為と思われがちな個人の生活文化を「表現みたいなもの」ととらえ直す文化活動「表現未満、」
・レッツの拠点を「観光」する「タイムトラベル100時間ツアー」
・アートと福祉の両面から学びについて考えるシンポジウム
スタッフやゲストがそれぞれの経験や悩みについて語り合うワークショップ「アーダ・コーダ・ソーダ!どうだ? ~17人のスタッフとトーク大回転~」

また、〈こここ〉初の読者投稿型企画「ムラキングとみんなの詩」では、レッツで活動する妄想恋愛詩人ムラキングさんと水越雅人さんが登場。レッツの代表・久保田翠さんには、「健康で文化的な最低限度の生活」についてもお話をうかがっています。

レッツがつくる、街の人が自由に「表現」できる場

重度障害のある人たちと向き合い、彼らの居場所づくりに取り組んできたレッツ。中心拠点である〈たけし文化センター連尺町〉では、障害のある人たちが思い思いのまま過ごしています。

〈たけし文化センター連尺町〉が、障害のある人たちにとっての居場所や表現の場だとするならば、〈ちまた公民館〉は、街の人たちにとっての居場所や表現の場だといえます。

【写真】ちまた公民館の中の様子。壁に向かって本を読んでいる人の後ろで、並べられたお菓子の前で談笑する子どもたち

予約は不要。誰もがふらっと入り、ふらっと出ることができます。やってくる人たちの年代は小学生から高齢者まで幅広く、過ごし方はさまざま。静かに読書や勉強をする人もいれば、おしゃべりやゲームを楽しんだり、創作活動にいそしんだりする人もいます。

とはいえ、いきなりは入りにくいな……と感じてしまう人のために、さまざまな仕掛けが用意されています。例えば、トレードマークにもなっている、軒先に置かれた赤いガチャガチャ。レッツにかかわる人たちが手作りしたものが入っていて、思わず目を引かれる通行人も少なくありません。ガチャガチャを引いたことがきっかけとなり、〈ちまた公民館〉に通うようになった人も。ちなみに最近は、カプセルの中身を作る会も開かれています。

【写真】ちまた公民館の軒先で過ごす中年男性と女の子

軒先にもう一つ置かれているのが、「ご自由にBOX」。自由にものを寄付したり、持って行ったりする仕組みで、物々交換を間接的におこなうシステムです。小学生が立ち寄り、BOX内にあった鉛筆削りを借りていったこともあるそう。子どもも大人もわくわくしながら、中身を覗き込んでいます。

また、講座やクラブ活動も催されています。「じゅんこさんの銅版画講座」、「ボドゲおじさんのボードゲーム会」、哲学カフェ「かたりのヴぁ」など。持ち込みで開かれたものや、雑談をきっかけに生まれたものなどさまざまです。

〈ちまた公民館〉の開館から約半年間のようすは、この記事の執筆を担当したライター・原菜月のコラムからも垣間見ることができます。〈ちまた公民館〉公式Instagramのハイライトからご参照ください。

自習室、お祭り準備、哲学カフェを開催予定

オープン翌年の2023年度からは、〈ちまた公民館〉を「場所」ではなく「活動」として位置付けてきたというレッツ。地域の公民館などが入る複合施設〈クリエート浜松〉や看護学校、渋谷ヒカリエで開かれたイベント「超福祉の学校」などに出向き、「出張ちまた公民館」を開設してきました。拠点から公民館そのものが飛び出し、新しい場所で新しい人と出会うという試みです。

この出張ちまた公民館がきっかけとなり、〈(公財)浜松国際交流協会(HICE)〉や〈JICA浜松デスク〉とコラボし、世界のダンス体操講座や新年を祝う「これからちまたパーティー」などの交流事業を展開。障害、国籍、性差を超え、それぞれが一個人として自由に出会う機会を創出しました。

【写真】ちまた公民館外観

街の人の表現や出会いの機会を、じわじわと広げ続けている〈ちまた公民館〉。移転オープン先の「万年橋パークビル」では、以前より少し広いスペースで過ごせるようになっています。

夏休み期間である8月は毎週水曜日、「自習室みずたまり」として開放。「勉強をがんばる場所というよりは、家や学校以外の気楽につかえる場所として来てもらえたら」との思いが込められています。

8月26日(月)から9月20日(金)は、お祭りの準備会場となります。9月21日(土)に〈新川モール〉で開催されるイベント「お祭りごっこ!!みんなでつくる凸凹まつり2024」に登場する巨大張り子を制作。メキシコアートや科学館とのワークショップ、お面づくりなども行われ、誰でも気軽に参加できます。

さらに、レッツの代表・久保田翠さんがファシリテーターを務め、参加者と語り合う哲学カフェ「ミドのヴぁ」も開かれます。2024年は「スペシャルイヤー」として、毎月1回開催。人権、家族、ジェンダー、「健康で文化的な最低限度の生活」などについて語り合います。参加費は300円です。詳しいスケジュールはレッツの公式サイトでご確認ください。

誰かと話したい、落ち着いて過ごす場所がほしい、日常をちょっとだけ変えたい。そんなふうに感じる時は、ぜひ〈ちまた公民館〉へふらっと出かけてみませんか。