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表現を守りながら広める「知財学習推進プロジェクト」。福祉現場発のメディア・ゲームで著作権などを学ぼう
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ふりーぺーぱー「ちまたのちざい」
〈たんぽぽの家〉は、知的財産や知的財産権について楽しく学ぶ「知財学習推進プロジェクト」に取り組んでいます

誰もが知財活用できる土壌づくりを目指す「知財学習推進プロジェクト」

InstagramやTwitter、YouTubeなどSNSの発達によって、誰もが気軽に情報発信できる時代になりました。個人にとどまらず、会社や団体など組織の公式アカウントの運用も広がり、自分、もしくは他者の創作物を社会に向けて発信する機会はどんどん増えています。

そんな“一億総クリエイター時代”とも言われる現代に、トラブルなく創作をするために必要なのが「知的財産」や「知的財産権」についての理解です。

〈たんぽぽの家〉(奈良県奈良市)は、2018年に「知財学習推進プロジェクト」を発足。障害のある人の表現活動を支援してきた立場から、多様な方々が知財を活用できる土壌づくりを目指してきました。

これまでにオリジナル教材として、知財にまつわるフリーペーパーや本の発行、学習カードゲームを開発。またそれらを用いて、福祉施設の方や芸術文化活動の支援に関わる団体、教育機関、福祉メディアや企業を対象とした研修やオンラインセミナーを実施しています。

アートとケアの視点から活動する〈たんぽぽの家〉

〈たんぽぽの家〉は、1973年に市民団体として立ち上がって以降、障害のある人たちの生きる場をつくるため、地域に根ざしたさまざまな活動や文化運動をしている組織です。

1990年代には、障害者アートの可能性を捉え直す「エイブル・アート・ムーブメント」を提唱。人間の可能性を再発見する芸術運動として、展覧会や演劇、音楽、ダンスなどの舞台芸術を推進しながら、創作物を販売したり貸し出したりする環境を少しずつ構築してきました。

また、2004年にはアートを通じて誰もが自由に自分を表現できる場〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉(奈良県奈良市)をオープン。2016年には、障害のある人が仕事を生み出す拠点〈Good Job! センター香芝〉(奈良県香芝市)を開設し、企業や地域とコラボした独自の製品開発に力を入れています。

きぎょうときょうどうでつくった「しかころころ」
〈Good Job! センター香芝〉が〈中川政七商店〉と協働し、3Dプリンターやレーザーカッターを用いて郷土玩具を制作した「鹿コロコロ」。3,300円(税込)

新しい技術である「IoT」や「Fab」と福祉の可能性なども模索しながら、数々のプロダクトを生み出す〈たんぽぽの家〉。活動の中で、次第に「著作権」や「産業財産権」をしっかりと学ぶ必要性を感じたことが、今回紹介する「知財学習推進プロジェクト」へと発展しました。

知的財産権を「社会へ発信するときに必要な考え方」「表現を守りつつ広めていく方法」と捉え、楽しみながら知る・学ぶ・考える機会をつくっています。

オリジナル教材を用いて、表現にまつわる権利や事象を楽しく、面白く学ぶ

「知財学習推進プロジェクト」としては、これまでにフリーペーパー『ちまたのちざい』や『知的財産権学習ハンドブック』を制作。さらに、2021年に出版した『表現をめぐる知的財産権について考える本』では、障害のある人と取り組んできたプロジェクトを通して〈たんぽぽの家〉が学んできた事柄を、網羅的にまとめています。

せいさくしたふりーぺーぱー
フリーペーパー『ちまたのちざい』。「知財を学ぶことに触れるメディア」をコンセプトに、ファッションや農業など身の回りにある取り組みから身近にいある知財の問題について知ることができます。無料でダウンロード可、郵送にも対応
せいさくしたほん
『表現をめぐる知的財産権について考える本』(編著 一般財団法人たんぽぽの家)1,100円(税込)。実際にあった困りごとや専門家に相談した悩みを元に、基礎知識が一つずつ解説されています

また、オリジナルの学習カードゲームとして、表現を守りつつ広めていくことを体感できる『知財でポン!』や、知的財産や知的財産権をクリエイターの視点で学び深める『ちょいワルクリエイターず』を開発。

現場で起きたことを疑似体験しながら、楽しく学べるツールを生み出してきました。

せいさくしたかーどげーむ
〈こここ〉編集部では、協力型カードゲーム『知財でポン!』(左下)3,850円(税込)を実際にプレイ。攻めと守りのバランスをとる難しさや、ムーブメントを作るには多種多様な仲間と協力する必要があることが学べました

さらに、より深く学びたい方や組織に向けて、上記のツールを用いた研修も全国各地で実施。基礎的な知識や知財活用のノウハウ、契約書の交わし方など、依頼元のニーズに合わせてカスタマイズしながら、知的財産権を自分ごとにするお手伝いをしています。

けんしゅうのようす
イベントでのワークショップ、大学の授業、福祉施設職員や中間支援者向けの研修などを担当。コロナ禍が長引く中、「知財学習プログラム・オンラインセミナー」も希望に応じて開催しています(写真:衣笠名津美)

正しい知識を元に、社会に向けた発信を

「メディアに取材してもらった記事は、自社サイトに転載していいの?」「作品を販売する際の契約書に何を盛り込む?」など、日々の仕事や活動の中で疑問に思ったり悩んだりすることはあるはず。たとえ気をつけていても、正しい知識がなければ、知らないうちに他人の権利侵害をしている可能性もあります。

誰もがクリエイターとして何らかの創作活動を行う流れは、今後ますます加速していくことでしょう。個人や組織の表現を世の中に広め、より良い活動を行っていくためにも、まずはきちんと「知る」ことが大切です。楽しく学べるツールを使って、職場や仕事仲間で学びませんか。