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対話を通して鑑賞する喜びを分かち合う。書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』9月3日発売
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ほんのひょうし
川内有緒さん著『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が、集英社インターナショナルより発売中です

川内有緒さん著『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』発売

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が、2021年9月3日、〈集英社インターナショナル〉より発売されました。著者は、ノンフィクション作家の川内有緒さん。

「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」

著者・川内有緒さんの友人マイティさんの一言から始まった、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと巡るアートの旅。白鳥さんは、20年以上にわたって各地の美術作品を鑑賞し、美術館での鑑賞ワークショップにおけるナビゲーターも務めています。その方法は、目の見える人と目の見えない人が、言葉を通して共に鑑賞するというもの。

本書では、対話をすることでアートを見る目の解像度が上がること、そして誰かと一緒に鑑賞し時間を共有することの喜びが綴られています。

古今東西の作品を観に、日本各地の美術館へ

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』は、白鳥さん、川内さん、マイティさんの3人が日本各地の美術館を訪れ、会話を重ねながらアートを見る体験を記したノンフィクションです。

さくひんをかんしょうするようす
作品を鑑賞する川内さん(左)と白鳥さん(右)(撮影:武田裕介)

本書の中で3人が鑑賞するのは、ピエール・ボナール、パブロ・ピカソ、クリスチャン・ボルタンスキー、大竹伸朗の絵画、興福寺の仏像、障害がある人の作品など。有名な絵画から仏像、現代美術まで、ジャンルや時代に捉われず、彼らが「面白そう」と思った展示に足を運んでいます。

それぞれの作品画像は、カラーまたはモノクロで掲載されており、作品そのものを知らない人も楽しめる内容になっています。

会話をすることで解像度が上がる鑑賞体験

そもそも「目の見えない白鳥さんはどのように作品を“見る”のか」という川内さんの問いから、旅は始まります。

多種多様な作品を前に、3人がそれぞれの考えを述べながら鑑賞。考えを深める過程で得た気づきや学びを、川内さんは素直で柔らかな表現で伝えています。

「視覚とは何か」「障害があるとはどういうことか」「作品を見るとき何が起こっているのか」、そして「誰かと共に鑑賞することの意味とは」。普段じっくりと立ち止まって考える機会の少ない問いや意味について、読者は彼らと一緒に考えながら、楽しく読み進めていくことができます。

アート鑑賞を通して時間を共有した3人


また、アート鑑賞を楽しみながら3人は対話を重ね、人生や恋、夢などさまざまな話をしてお互いの理解を深めていきます。


その過程で、川内さんは、一つの作品でも解釈や見方はさまざまあり余白が楽しいこと、誰かと一緒にアートを見て、ただ時間を過ごす喜びがあることに気づいていきます。

しらとりけんじさん
白鳥建二さん。生まれつき強度の弱視で、12歳のころには光がわかる程度になり、20歳半ばで完全に視力を失う。20年以上にわたり「言葉」を通じた美術鑑賞を続け、現在では「全盲の美術鑑賞者」として日本全国の美術館を巡っている。(撮影:はじまりの美術館)

「開高健ノンフィクション賞」受賞後、第一作

著者の川内有緒さんは、アメリカの企業や日本のシンクタンク、またフランスのユネスコ本部などに勤務後、2010年より拠点を東京に移し、ノンフィクション作家として活動を始めます。

2018年には、第16回「開高健ノンフィクション賞」(集英社主催)を受賞。受賞作品である『空をゆく巨人』は、アートと人間の物語を描いた作品として注目を浴びました。

本書『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』は、受賞後第一作にあたります。

よるのまちのふうけい
白鳥さんが撮影した写真。2005年から写真を撮るようになり、撮りためた写真は40万枚を超える。2021年4月〜7月に〈はじまりの美術館〉で開催した展覧会「(た)よりあい、(た)よりあう」では、写真家しらとりけんじとして作品を出展するほか、美術館でレジデンスを行い、そこでの生活も展示として発表した(撮影:しらとりけんじ)

白鳥さんと過ごした時間を、川内さんは「わたしのちっぽけな想像なんかを大きく越えて、はるか遠くにまでわたしたちを連れていってくれました」と語ります。

アートを見る楽しみがたっぷりと詰まった一冊。あなたも白鳥さんと一緒にアートを巡る旅に出ませんか? 読み終えた後は、きっと誰かと一緒に美術館へ足を運びたくなるはずです。