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ダンスで“今”を問う。2年に一度のダンスフェスティバル「Dance New Air 2020->2021」10月23日より開催
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オレンジのいしょうをきたダンサーのぜんめんに、DNAのもじ
2年に一度のダンスフェスティバル「Dance New Air2020->2021」が2021年10月23日からはじまります

2年に一度のダンスフェスティバル、東京・青山エリアを中心に開催

2年に一度、ダンスの「今」と「これから」を提示するダンスフェスティバル「Dance New Air」が、2021年10月23日(土)〜11月12日(金)に開催されます。

東京・青山(東京都港区)エリアを中心に、田町(東京都港区)や北千住(東京都足立区)のサテライト会場を含む6会場で、国内外6組の公演と動画配信を行います。そのほか、若手アーティストによるショウケース、展覧会でのパフォーマンス、映画館でのダンスフィルム上映や書店でのダンスブックフェア、親子向けのワークショップなど、ダンスを多角的に楽しむプログラムが用意されています。

「Dance New Air 2020->2021」の注目作品をご紹介

今回のフェスティバルのキーワードは「身体と社会の生態系」です。自然や社会、身の回りを取り巻く様々な環境で起こる異変、人や場所の分断。コロナ禍に立ち現れた「私たちはこれからどう生きるのか」という問いをアーティストたちはどう見つめたのでしょう。

プログラムの中から、〈こここ〉の合言葉「個と個で一緒にできること」に関連する、おすすめの3作品をご紹介します。

ダヴィデ・ヴォンパク/川口隆夫/ふくだぺろ『INOUTSIDE

10月23日(土)・24日(日)の2日間、田町のSHIBAURA HOUSE(東京都港区)で開催される、振付家・ダンサーのダヴィデ・ヴォンパクさん、ダンサー・パフォーマーの川口隆夫さん、マルチモーダル人類学者・詩人のふくだぺろさんによるプログラム。

「ウイルスがヒントをくれる未来」というテーマのもと、アーティストやパフォーマー、研究者を招いてパフォーマンスや展示、ワークショップ、トークなどを行います。参加者と様々な知見やアイデアを交換し、一緒に、ウイルスと共に生きる未来を考えるプロジェクト型作品です。

これまでにもHIVウイルスに関わる活動についてリサーチを行ってきた3人。今回のコロナウイルスによる差別や分断を垣間見て、改めて「ウイルスとの共存」というテーマでプロジェクトを計画しました。ウイルスと共に生きることで社会や人間がどう変化していけるかを、ポジティブでユーモラスに捉え、様々な切り口で展開。社会の偏見や差別、同調圧力などの大きな力を個人としてどう捉え、考え、行動していくかに向き合います。

INOUTSIDEのキービジュアル。め、あし、などの、ひとのからだのさまざまなパーツと、ウイルスをおもわせるカラフルなとっきぶつがえがかれる
「ウイルスがヒントをくれる未来」をテーマにしたプロジェクト『INOUTSIDE』。コロナ禍で分断された内側(INSIDE)と外側(OUTSIDE)は、それほど分明なものではないのではないか、と問いかけます

10月23日の夕方に出演するy/n(橋本清さん、山﨑健太さん)は、『カミングアウトレッスン』を上演。同性愛と異性愛、虚構と現実、練習と本番、信頼と不信。様々な二項対立を問い直し、「カミングアウトするための、されるための、あるいはしないためのレッスン」としてのレクチャー・パフォーマンスを行います。

また、24日の夜には、ダムタイプの古橋悌二さんがHIV+であることを1992年にカミングアウトしたことを契機に発足した〈LOVE POSITIVE実行委員〉による、1994年8月の「第10回国際エイズ会議」にあわせて開かれた交歓パーティ『LOVE BALL 1994』の記録も一部上映。ダムタイプメンバーとして活動していたSNATCH/砂山典子さんによるパフォーマンスや、文化人類学の視点からHIVについて研究する佐藤知久さんとのトークなどを通して、ウイルスにまつわるの活動の過去と現在について向き合います。

『INOUTSIDE』のリーディングアーティスト、左からダヴィデ・ヴォンパク、川口隆夫、ふくだぺろ(写真:室岡小百合)

「ダンスショウケース」

若手振付家・橋本ロマンスさんがキュレーションした、新たな時代を牽引する20代の若き振付家・ダンサーたち4組が、10/30(土)に東京・青山のスパイラルホール(東京都港区)でパフォーマンスを発表します。キュレーションテーマは「未来への意思表明」。未来のダンスシーンを彼らの身体を通して体感できるショウケースです。

「オリンピックが開催されて、10月には衆院選もある。そういうムードの中で、一体私たちの責任の所在はどこにあるのか。それがどう未来に向かっていくのか、ということの意思表明になるかな、と思っています。

怒っています、すごく。ずっと怒っています。そして、私たちがアーティストである前に、社会の一員である、と言う責任について、すごく考えています。表現と責任はほとんど同じであると自覚しないといけない。危機感をもって、自分の責任を見つめています」

と、橋本ロマンスさんは語ります。(Dance New Air ウェブサイト内アーティストインタビューより)

今の社会と、東京という都市をみつめて作品をつくる橋本さんの他、参加アーティストは3組。「既存のカテゴリーや枠の中でやるのではなく、自分だけのスタイルを確立している人たち」という基準で選ばれた出演アーティストは、アオイツキさん、清水舞手(SHIMIZU MASH)さん、やまみちやえ×安部萌さん。それぞれ、「コンテンポラリーダンス」というフィールドにとらわれず独自の活動を展開する、気鋭のアーティストたちです。

4くみのかおじゃしんがならんでいる
「ダンスショウケース」に参加するアーティスト。左上から右回りに、アオイツキ、清水舞手(SHIMIZU MASH)、橋本ロマンス、やまみちやえ×安部萌

また、作品との向き合い方について、橋本さんはこのように語ります。

「作品の中で起きていることと現実の世界は、切り離されたものとして考えられがちだと思うのですが、あくまで地続きであるということがとても重要で、見ている人にも責任が生じる。ある意味では共犯的な関係です。見たものに対してNOと言うかYESと言うのか。どこかで自分にも関係していると思ってほしい、他人事だと思わないでほしい、という気持ちを持っています」(同上)

アーティストたちの意思表明としての表現を受け取りながら、作品を通して今の社会を見つめ、自らと社会へとの関わりについて向き合う機会となりそうです。

「ダンスショウケース」でキュレーターを務める橋本ロマンス(写真:室岡小百合)

チジャ・ソン『Landing on Feathers

京都で生まれ育ち、現在アムステルダムを拠点とするチジャ・ソンさんによる新作短編映像を10月31日(日)〜11月12日(金)の期間、オンライン配信します。

むらさきいろのひかりのなかにうかびあがる、ふたりのあしさき
人と人のつながりや関係性をテーマにした作品を発表し続けているチジャ・ソンさんの作品は、ヨーロッパのダンスシーンでも注目を浴びています

「ケア」をテーマにした本作は、チジャ・ソンさんが2021年5月から半身不随のアーティストのエルマー・クーウェンバーグさんと一緒にはじめた、身体を動かすセッションの記録です。

障害のある身体が踊るとはどんなことかを問いながら、支援する人/される人という関係性ではなく、信頼関係を築きながら、対等でリラックスできる関係の中でアプローチを探ります。異なる身体やアイデンティティに対する思い込みを解きほぐし、制限の中で共存することや、「ケア」ということに身体的アプローチから向き合います。

オランダを拠点に活動するチジャ・ソン(Photo: Renate Beense)

今の社会を敏感に感じ取りながら、新しい風を起こしていくアーティストたちによる、意欲的なプログラムがラインナップされた「Dance New Air 2020->2021」。それぞれの作品には、世の中を眺める新しい視点や、未来へのヒントがありそうです。今、ここにいるからこそ感じることができる同時代のアーティストの表現に、出会ってみませんか。