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多様なファッションのあり方を提案する〈Fashion Forms.〉が2024年1月12〜14日に「DIG SHIBUYA」に参加。インスタレーションやトークを開催
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イベントのキービジュアル

一人ひとり違う暮らしを、どう彩るか。「1着の服」づくりから考える

服を選び、身に着けるという行為には、さまざまな意味が存在します。選ぶ行為を通じて、自分の「好き」を表明する表現的行為。また、スーツや制服など、自分が何者かをわかりやすく示す社会的行為。もちろん、上記をふまえたうえで、その日の天気や気温に応じた素材やかたちを選び、快適さを追及することも衣服を選ぶうえでとても重要です。

ですが、障害のある人たちにとって、この「服を選ぶ」行為には、制約を感じる場面が多くあります。市販品だと着られる服が限られてしまったり、着る人の趣向でなく、着やすさや着せられやすさが先行してしまったり、そこに当事者の諦めや我慢が生まれてしまうこともあるでしょう。また、自分の好みを周囲に伝えるのが難しい人にも同じことが起こっているかもしれません。

障害のある5名の当事者と、5組のデザイナーがタッグを組み、それぞれが着たいと思える「1着の服」をつくりだすプロジェクト〈Fashion Forms.〉。多様なファッションのかたちを模索し、新しいあり方を提案しようする同プロジェクトが、2024年1月12日(金)から開催される「ART×TECH」をテーマにしたイベント「DIG SHIBUYA」に出展し、インスタレーションやトークショーを実施します。

「DIG SHIBUYA」のメインビジュアル

障害がある当事者とデザイナーがタッグを組んで挑んだ約5カ月

〈Fashion Forms.〉は、ファッションディレクターの山口壮大さんと、障害のある子どもをもつ五十嵐純子さんによって立ち上がったプロジェクトです。もともと山口さんがファッションディレクターを務めていた別イベントで、純子さんの娘・心音さんがモデルの一人として参加していたことがきっかけでした。

イベント終了後、あらためて純子さんから山口さんに声がけがあり、さらに継続性の高いプロジェクトを手がけてみようと、純子さんたちの住む茨城県つくば市周辺を軸にプロジェクトを本格稼働することに。

同プロジェクトは、重度心身障害、脳性まひや筋ジストロフィーなど、異なる障害がある11~28歳の5名の当事者と、異なる強みをもつ5組のデザイナーが、それぞれにタッグを組み製作に臨みました。コラボデザイナーには、参加した当事者それぞれの要望から合いそうな人を山口さんがマッチング。一点もののオーダーメイドを得意とするデザイナーから、ユニフォームを得意とするアパレルメーカーまで幅広いデザイナーが参加しました。

山口さんは「通常の服作りとは、身体の測り方も異なりますし、それを隠したいのか、見せたいのか、一人ひとりに違った要望があります。自分の好みにあった服が着たいと思う人もいれば、介助者にとって快適な服をつくってほしいと望む当事者もいます」と、それぞれの要望に合わせた製作過程について語ります。デザイナーが住まいや職場に足を運んで、彼らの身体や暮らしを知り、双方向にやりとりしながら進んでいったそうです。

たとえば、筋力が低下してしまう難病「ネマリンミオパチー」により、慢性呼吸不全などがある深田心奈さん(11歳)と、デザインから縫製、販売までを一貫するファッションブランド〈POTTO〉デザイナーの山本哲也さんのタッグ。山本さんは呼吸器が手放せない深田さんの身体の負担になりにくい素材として、柔らかくて軽いオーガンジーを選定。着脱の際に呼吸器が外れないような工夫をしながらも、かわいいものが好きな深田さんの意向もしっかりと反映された、フリルがアクセントのピンクのドレスを仕立てました。

これら約5カ月の過程はすべて記録され、出来上がった衣服とともに今後も映像作品として展示されていく予定です。これまでに、プロジェクトの全体のプロセスを1時間程度にまとめた映像作品『ファッション・フォームズ(Fashion Forms.)』が制作され、2023年11月につくば市で行われた福祉機器展で上映が行われました。

画像生成を用いてコミュニケーションを重ねた製作過程、最終日はトークも

「Fashion Forms.」イベント概要

今回「DIG SHIBUYA」の同展示にてメインを飾るのは、五十嵐心音さん(17歳)と湯浅琴音さんのコンビ。心音さんは重度心身障害があり、言語でのコミュニケーションが取りにくく、目に見える範囲も狭いという特性があります。そこで、湯浅さんは心音さんが反応する言葉や音に着目し、画像生成AIツールをつかって大量の画像を生成。それらを見せながら、心音さんが笑顔になったり反応があったりしたものを服のテキスタイルとして落とし込んでいく手法を採用し、心音さんの「好き」を探りながら製作にあたりました。

五十嵐心音さん(写真左)の衣服には、画像生成ツールを使って作り出された色とりどりのテキスタイルがふんだんに使われている(写真右)

展示では、そうした過程を経て出来上がった心音さんのための「1着」と、その様子を記録したドキュメンタリー映像を上映。また、過去に上映された映像インスタレーションも併せて公開される予定です。

展示最終日となる2024年1月14日(日) には、五十嵐心音さんと、五十嵐純子さん、ファッションジャーナリストの徳永啓太さんによるトークセッションも展示会場で行われます。一人ひとりの「着たい」がどう実現していったのか、生の声が聞ける貴重な機会。ぜひトークセッションも含め、参加を検討してみてはいかがでしょうか。