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安心して“表現”できる環境には何がいる? 創作活動のひらき方を考えるコミュニティ「GOOD DIALOGUE LABORATORY」
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【画像】茶色、青、ピンクが施され、手のひらから本や口、目、電球などが飛び出てきているイラスト

表現、社会的障壁、不均衡について対話し、考えるコミュニティ

「インクルーシブな表現活動に取り組んでみたいけど、何から始めれば良いのだろう」「障害があっても、もっと自由に表現できる方法はないだろうか」「そもそも“表現する”ってどういうこと?」……。そんな思いやモヤモヤを抱える人が集い、対話し、表現の可能性をひらいていくコミュニティ「GOOD DIALOGUE LABORATORY」が、2024年夏にスタートします。

運営するのは、バリアフリーの動画配信や映画祭などを手がけてきた〈株式会社precog〉(プリコグ)。初年度は、トークイベントや研究会の運営を通じて、表現の可能性、社会的障壁や不均衡、誰もが安心して表現できる環境づくりについて考えます。

アクセシビリティにまつわる過程そのものに価値がある

〈precog〉は、「横断と翻訳」をテーマに、アートプロジェクトの企画・運営を行う制作会社。アーティストやクリエーター、専門家と協働し、芸術体験と観客を繋ぐ活動をしています。作品やワークショップ、配信、鑑賞におけるアクセシビリティを向上させる取り組みをしてきたほか、2021年度からは、厚生労働省の『障害者芸術文化活動普及支援事業』連携事務局(舞台芸術分野)も担当しています。

2021年2月からは、アクセシビリティに特化したオンライン型劇場「THEATRE for ALL」を開始。障害や疾患など、さまざまな事情で劇場へ行きにくい人も芸術鑑賞を楽しめるよう、「バリアフリー字幕」や「音声ガイド」を施した映像コンテンツ(演劇・ダンス・映画・メディア芸術など)を制作・配信してきました。

2022年には栃木県・那須高原、翌2023年には長野県・軽井沢町にて、障害がある人もない人も、子どもから大人まで楽しめるリアル上映会「まるっとみんなで映画祭」を開催。また、2023年の「TRANSLATION for ALL」では、「身体表現の翻訳」をテーマに、新たなアクセシビリティに挑戦するなど、障害や言語、場所といったバリアを乗り越えられる場づくりを模索し続けています。

これらの取り組みを通して、情報保障は鑑賞者をサポートするだけのものではない、との考えに至ったという〈precog〉。「どうすれば多様な人が芸術を楽しめるのか」とさまざまな立場や境遇の人が対話し、工夫を重ねる過程そのものに、新たな表現や価値観が生まれる可能性があるといいます。

そこで生まれたのが、対話を重視する「GOOD DIALOGUE LABORATORY」。アクセシビリティが持つ可能性を広く知ってもらうことを目的にしつつ、障害のあるアーティストや、彼らと共に創作したいと考えている企画者やアーティストたちの、横のつながりを作ることも狙いとしています。

表現について掘り下げるクロストーク。実践者向けの研究会も

2024年度に予定されているプログラムは、連続講座と研究会の2つです。

連続講座は、全4回のクロストーク。「インクルーシブな作品制作の視点を学ぶ」がテーマとなっています。「THEATRE for ALL」の公式Youtubeから視聴でき、手話通訳と文字支援が利用できます。

8月29日(木)に開かれる初回講座のテーマは、「言語を問う」。演劇カンパニー〈チェルフィッチュ〉主宰を務める岡田利規さんと、〈一般社団法人日本ろう芸術協会〉代表理事の牧原依里さんが登壇。言語とその文化的背景、異なる言語を用いる人の間に生じる溝について話します。

【写真】男性の正面写真
演劇作家・小説家の岡田利規さん(@Kikuko Usuyama)
【写真】女性の正面写真
映画作家・アーティストの牧原依里さん。〈こここ〉には以前、映画作品の推薦でご寄稿いただいたこともあります

第2回は、9月12日(木)開催。「取材し、対話する身体」をテーマにした、アーティスト集団の〈オル太〉のメンバーと、 美術家の弓指寛治さん、ダンサー・振付家の湯浅永麻さんによるクロストークです。人や土地についてリサーチを重ねて作品をつくる3者が議論を深めます。

続く第3回、9月18日(水)のテーマは「音とはなにか」。歴史家の木下知威さん、サウンドアーティストの細井美裕さん、俳優・劇作家でありダイアログ・イン・ザ・ダーク アテンドの関場理生さんによるクロストークです。

そして最終回の9月25日(水)は、「異なる身体、日々の芸術」について。知的や発達障害、重度障害のある人たちと共に創作する過程や、暮らしの中にある創作の萌芽を見つけ、作品にするプロセスについて学び合います。美術家の大崎晴地さんと、〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉副施設長・佐藤拓道さんが登壇します。

もう一つのプログラムの「実践者のための創作環境研究会」は、舞台芸術の実践者として活動していく上でバリア(社会的障壁)のある人や、インクルーシブな表現に取り組みたい人が対象です。全3回にわたって、問いを立て、ディスカッションしながら、表現の創作、発表、鑑賞における可能性を検討します。

8月24日(土)の初回は、俳優・ダンサーの森田かずよさんが講師を務め、「障害当事者が表現者や企画制作者になること。課題とこれから」をテーマに進行します。第2回目は9月4日(水)、舞踏家の佐久間新さんと一緒に「多様な身体で共にいる。福祉とワークショップとパフォーマンスのあわいで」について考えます。最終回の10月7日(月)の講師とテーマは、後日発表予定です。会場や参加費は、下記Information欄をご確認ください。

表現やアクセシビリティについて考えを深めながら、同じ思いや悩みを抱く人たちと出会える「GOOD DIALOGUE LABORATORY」。ぜひ一度、参加してみませんか。