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心、体、お金の悩みを「子どもの権利」で考えよう。書籍『きみの人生はきみのもの』
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谷口真由美さんと荻上チキさんによる書籍『きみの人生はきみのもの』が、〈NHK出版〉より発売されています

子どもの悩みを「権利」の観点から解決へと導く書籍

「校則を変えたい」「いじめにあっていてつらい」「親にお年玉をとられた」……そんな悩みや疑問を子どもの「権利」の観点から紐解く書籍『きみの人生はきみのもの』が、2023年1月に〈株式会社NHK出版〉より発売されました。

本書は、子どもたちがよく悩んだり疑問に思ったりする24の状況を取り上げ、どう解決したらよいかを考える本です。それぞれの状況に対して子どもがどんな権利を持っているか、「日本国憲法」や「子どもの権利条約」に基づいてわかりやすく紹介しながら、その権利を生かしてどのように行動していったら良いかを、具体的な解決策で示します。

子どもたちが持つ権利とその使い方を具体的に紹介

本書が取り上げている24の悩みや困りごとは、「自由に意見を言ったり、社会を変えたりする権利」「心と体を守る権利」「お金を守る・お金をもらえる権利」の大きく3つのパートに分かれて解説されています。

右側に「親の言うことは、なんでも聞かないといけないの?」というタイトルと、女の子が困った顔をしながら親の前で朝ごはんを食べる様子が描かれたイラスト。左ページには回答が書かれている
『きみの人生はきみのもの』p14-15より

1つ目のパート「自由に意見を言ったり、社会を変えたりする権利」では、「親の言うことは、なんでも聞かないといけないの?」「ふつうじゃなきゃ、ダメなの?」「学校は行かなきゃいけないの?」といった、多くの子どもたちが抱く素朴な疑問を扱っています。

例えば「親の言うことは、なんでも聞かないといけないの?」という疑問には、「すべて聞く必要はもちろんありません」「不当だと思ったら、親にうったえてみることだってできる」とアドバイス。そして根拠として、日本国憲法の第13条「自己決定権」や、子どもの権利条約の第12条「意見表明権」を挙げ、内容を解説していきます。

一方で、親には「養育する義務」があるために、子どもに助言をすることがあるとも触れます。そのうえで、親の言うことのうち「聞く必要があること」と「聞く必要がないこと」をいかに見分けたら良いかという具体的な基準や、どのように親と交渉をしたらよいかというステップが、具体例とともに示されていきます。

右側に「いじめにあっていて、学校に行きたくない」というテキストと、ひざを抱えてこちらに背を向けている子どものイラスト。左側には回答が書かれている
『きみの人生はきみのもの』p58-59より

2つ目のパート「心と体を守る権利」では、いじめ、性の問題、ネグレクト、ヤングケアラーなど、心と体に関わる深刻な悩みも取り上げられます。

「いじめにあっていて、学校に行きたくない」という悩みの中では、「きみにはいじめを受ける理由はひとつもない」と力強く伝えます。そして憲法第13条の「幸福追求権」や第14条の「平等権」を参照しながら、それらの権利を保障するために大人が果たすべき役割について示していきます。

そのうえで、ひとりでできることから、誰かを頼ることまで、さまざまな角度から具体的な対策を明記。いじめについての相談先「子ども110番」(法務省)の電話番号や、NPO法人のサイトなどの案内もページの終わりに掲載しています。

右側に「親にお年玉をとられた」というテキストと、親にお年玉の袋を持っていかれ、困った顔をしている子どものイラスト。左側に回答が書かれている
『きみの人生はきみのもの』p124-125より

3つ目のパート「お金を守る・お金をもらえる権利」は、「親にお年玉をとられた」「貸したゲームが返ってこない」という日常生活で起こりうるトラブルから、「お金がなくて、高校・大学に通えない」「お金がまったくなくても、生きていけるの?」などの生活に直結する金銭面の問題まで扱う章です。

子どもには大人と同じように、憲法第29条の「財産権」や民法第206条の「所有権」があるため、お年玉をとられたり、貸したものが返ってこないときは、相手に不当だと声を上げていいと説きます。また、金銭がないために起こりうる困りごとについては、憲法第26条の「教育を受ける権利」や、憲法第13条と第25条に基づいた「健康で文化的に暮らす権利」にも言及。奨学金や生活保護など具体的な支援策や相談先を示しながら、「希望を失わないで、権利を使いましょう(p.145より)」と伝えます。

法律の専門家と、社会問題に向き合う評論家による共著書

本書は、〈NHK出版〉の「子どもたち自身が自分の問題を考え、解決できる本をつくりたい」という思いで生まれました。著者の一人はさまざまな社会問題に向き合い、著書に『未来をつくる権利』などもある評論家の荻上チキさんです。さらに荻上さんとラジオで対談するなど、以前より面識がある法学者の谷口真由美さんを共著者に迎え、悩みを解決するための知識と情報を得ることができる、実用的な一冊が実現しています。

橋の欄干にひじをかけて、こちらをみている、ピンクを貴重としたカラフルな洋服を着た谷口真由美さん
谷口真由美さん。1975年大阪府生まれ。法学者。大阪国際大学准教授を経て、大阪芸術大学客員准教授。専門は国際人権法、ジェンダー法など
本棚を背景に、こちらを見ている、チェックのシャツを着て、メガネをかけた荻上チキさん
荻上チキさん。1981年兵庫県生まれ。評論家。〈一般社団法人 社会調査支援機構チキラボ〉代表理事、〈NPO法人ストップいじめ!ナビ〉代表理事

本書の「はじめに――きみたちは権利をもっている」には、お二人から子どもたちに向けた次のようなメッセージが書かれています。

“ こまったときには、その状況に慣れてしまったり、がまんしてしまったり、あきらめてしまったりするのではなく、声をあげてほしいと思います。そのためのヒントや相談先をたくさん紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。親にも学校の先生にも友だちにも話せない問題のときは、外部の相談先や専門機関をたよってみるとよいでしょう。

 こうした権利のことや、相談先の情報を、ほとんどの子どもは知らないままで過ごしていると思います。それはとてももったいないことなので、この本で知識と情報を学んで、毎日の生活に生かしてもらえたらうれしいです。”
(p.5〜6より引用)

『きみの人生はきみのもの』というタイトルには、本書を手にとった子どもたちが自分自身で考えて行動したり、人生を切り開いていけるように、という願いが表れています。家族や先生にも話せない悩みを自分で解決するための、手がかりになりそうな一冊。ぜひ本を手にとってみたり、周りにいる子どもへ手渡したりしてしてみませんか。

1章と2章の目次
3章以降の目次
『きみの人生はきみのもの』もくじより