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地域に支えられて120年。私設「江北図書館」、次世代に文化をつなぐクラウドファンディング
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江北図書館の内観
〈公益財団法人江北図書館〉が運営する、築85年の私設図書館の内観(滋賀県長浜市)

滋賀の私設図書館が建物修繕のための資金募集

生活の身近なところにある図書館。本を借りたり調べ物をしたり、時には勉強をしたり……子どもの頃からさまざまな形でお世話になった方も多いのではないでしょうか。

今ある多くの図書館は国や地方自治体が運営するものがほとんど。しかし、なかには民間団体や個人が設立・運営する私設図書館もあります。文部科学省の調査(※注)によれば、一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人が設置者となる図書館は全国にわずか22カ所。そのうち一つが、滋賀県長浜市にある「江北(こほく)図書館」です。

現在、江北図書館は、築85年の建物を修繕するための資金集めをクラウドファンディングで実施中。2023年3月10日までに1500万円の応援を呼びかけています。

(※注:『社会教育調査』令和3年度(中間報告)より)

国内で3番目に古い私設図書館

江北図書館の前身の「杉野文庫」は1902年に、地元の弁護士である杉野文彌さんにより創設されました。その後、地元の名士たちを中心に〈財団法人江北図書館〉が発足し、図書館として運営を開始。何度かの移転を繰り返しながら、1975年に現在の地に根ざしました。

杉野さんの「未来を支える子どもたちと地域に暮らす全ての人たちの文化向上のために」という思いを継ぎながら、約4万5000冊の蔵書を持つ私設図書館として愛されてきています。

江北図書館の外観
開館当初から現在に至るまで、無料で提供

しかし、現在の建物は、1937年に建てられた木造2階建て洋風建築。三角屋根にアーチ型の四連窓が昭和の風情を感じさせる建物ですが、外壁や床等の老朽化が進み、耐震性の面からも早急な修繕が必要とされています。

当初は自主財源での修繕を計画していましたが、見込んでいた駐車場収入が得られなくなったこと、また近年の低金利による基本財産運用益が減少したことなどから改修が困難に。建物のみならず、運営の存続すらも危ぶまれる厳しい状況となりました。

そこで、運営する〈公益財団法人江北図書館〉は、2021年から新しい図書館づくりをスタート。30代〜70代のさまざまなスキルや視点を持っているメンバーが理事に着任し、今まで以上に地域の情報拠点、「まちをつくる」図書館となるべく動き始めました。

江北図書館の運営メンバー
新理事として、地元企業の経営者や長浜市社会福祉協議会の会長、フォトグラファー、ひとり出版社を営む方などが着任した

新しく発足した運営チームは、物で溢れていた図書館を整理整頓し、レトロな佇まいや蔵書が生きるような空間づくりに注力。また歴史資料を使った講演会を実施したり、駐車場で開催される「ひと箱古本市」に協力したりと、地域の人が訪れたくなる催しを仕掛けています。

イベントの様子
地元の読み聞かせグループと協力して、定期的に演奏会やおはなし会も開催している

また、江北図書館を存続させたいという有志のメンバーが「江北図書館ファンクラブ fun」を立ち上げ、こうした活動をサポート。イベントの手伝い、清掃作業への協力、オリジナルグッズの作成・販売などを行い、新しい図書館づくりを盛り上げています。

3月10日までクラウドファンディングを実施中

こうして地域を巻き込みながら、一歩ずつ進んできた「江北図書館」の新しい図書館づくり。しかし、資金難のため外壁や床の修繕は実施できないままです。

そこで、「江北図書館」は2022年12月23日からクラウドファンディングを開始。「120年続く私設図書館を未来に繋ぐ修繕プロジェクト」として、2023年3月10日まで、1500万円の資金を募集しています。

江北図書館の廊下
今回の資金は、緊急性の高い場所の修繕やトイレ新設などに使用予定。今後さらに大規模な改修工事も必要とされている

リターンとして、オリジナルのトートバックや歴史を伝えるために創刊した『江北図書館-120年つづく ちいさなふるい私設図書館-』(岩根卓弘 編)を準備。滋賀県外の方も応援しやすい内容になっています。

また、2月27日まで、「長浜市立図書館」にて展示『私たちのまちのたからもの・江北図書館』を開催。江北図書館のあゆみ、図書と資料、野間出版文化賞の受賞、クラウドファンディングについて紹介しています。

歴史ある私設図書館の営みに興味を持たれた方は、この機会にぜひ足を運んでみてはどうでしょうか。