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多世代がともに暮らす、社会的養護の複合施設「実籾パークサイドハウス」が今秋オープンへ!〈福祉楽団〉がクラファン中
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ただいまと言える家を、子どもたちへ。のコピーと、多世代がなごやかに過ごす写真

児童養護施設、グループホーム、放課後等デイサービスなどが併設された複合施設

2022年度に児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は、過去最多の21万9170件(こども家庭庁 速報値)。2000年当時、年間2万件に満たなかった相談が10倍以上に膨らむなか、虐待などの事情で家で生活することができない子どもたちを保護する場所の必要性も年々増しています。

千葉県習志野市に建設中の「実籾(みもみ)パークサイドハウス」は、そうした状況下で、〈社会福祉法人 福祉楽団〉が新たな社会的養護の形に挑む施設です。児童養護施設や、虐待などで居場所がない子どもたちを一時的に保護する場所のほか、障害のある子どもの放課後等デイサービス、高齢者のグループホームなども併設。多世代が交流できる場所となります。

同団体は2024年11月の開業に向け、施設整備や子どもの暮らしのための「OUR KIDS 基金」を設立し、寄付を募ってきました。さらに現在、建設資金を募るクラウドファンディングも実施中。2024年7月19日(金)まで受け付けています。

どの施設がどこにあるか描かれたイラスト
施設の全体像
現場の航空写真
2024年5月時点の、建設中の様子

一時保護所や児童養護施設の受け皿不足

児童相談所に相談があった子どもは、家族と暮らすことが難しいと判断された場合、まず「一時保護所」で保護されます。その後、ソーシャルワーカーの働きかけによって保護者のもとへ戻ることができる子どもも多くいる一方、どうしても家に戻ることが難しい子どもは、「児童養護施設」や「里親」のもとへ移ります。

2016年の児童福祉法の改正以降、厚生労働省は里親の推進を試みていますが、その数は思ったように増えておらず、首都圏では児童養護施設が不足。“一時”であるはずの一時保護所の生活は長期化し、こちらも慢性的に定員オーバーになっていました。

埼玉県101.8%、千葉県125%、東京都122.5%、神奈川県114.8%。全国平均67.7%の図

一時保護所では本来、1人あたり生活に必要な面積や設備などが定められています。しかし、保護が必要な子どもたちは定員を大きく超えているため、例えば「定員の倍の人数が一部屋で寝る」といったケースもあり得ます。

人と人との距離が近いと人間関係のトラブルが発生しやすく、行動を制限されることもあります。また支援者も大人数を管理するためにひとりひとりの子どもと向き合う余裕がなく、疲弊してしまうことも。「子どもたちの安全を確保するための一時保護所が、生活や支援の場として適切な場所になっていない」という課題がありました。

施設長・藤堂智典さんと〈福祉楽団〉の出会い

この状況に立ち上がったのが、児童相談所に勤める公務員だった藤堂智典さんです。一時保護所の子どもが不安を抱えながら生活する姿を見てきた藤堂さんは、「子どもたちが安心して生活できる場所をつくりたい」という思いから、新しい児童養護施設のあり方を〈福祉楽団〉理事長の飯田大輔さんへ相談に行きます。

〈福祉楽団〉は千葉県と埼玉県で、特別養護老人ホームや訪問介護事業、放課後等デイサービスなどを展開する社会福祉法人。解剖生理学に基づいた科学的な視点で、その人にとって最善な生活の暮らしを考え、複数の福祉分野を横断しながら事業を展開しています。

折しも藤堂さんがたずねたタイミングは、〈福祉楽団〉も子どもの福祉や社会的養育の新しい実践を考えていたところでした。飯田さんと意気投合し、藤田さんは21年間勤めた公務員を辞めて〈福祉楽団〉へ転職。社会的養護の子どもがスマートフォンを持てるよう、環境づくりに取り組む〈NPO法人スマホ里親ドットネット〉の活動などと並行して、〈福祉楽団〉の新しい児童養護施設の施設長として、開設へ向けて歩みを進めることになりました。

地域に開かれた、社会的養護の複合施設

現在建設中の「実籾パークサイドハウス」は、児童養護施設に加え、一時保護所、子どもショートステイ、高齢者のグループホーム、障害のある子どもの放課後等デイサービスなどがある、複合的な施設です。

6人が1つの家に住むことを想定した児童養護施設など、生活単位は少人数に設定。また、施設敷地に塀やフェンスは作らず、隣接する公園の利用者や、近くの高校に通う高校生、高齢者グループホームの入居者家族などが自由に行き交えるつくりになっています。

施設と施設の間を様々な行き交っている様子が描かれたイラスト
その人らしい暮らしを実現できるよう、小規模の施設が連なる「実籾パークサイドハウス」
バスケットボールコートに様々な人が集っている様子が描かれたイラスト
誰でも使えるバスケットボールコートも併設。近所の子どもたちも多く集まるはずです

外に開かれた施設とすることで、様々な人と子どもが混じり合い、地域とゆるやかにつながっていく。その中で、子どもたちが当たり前に安心して生活できる場所、そして大人になっても帰ってこられるような家を作りたいと〈福祉楽団〉は考えています。

建設・運営費用を、クラウドファンディングとOUR KIDS基金で募集中

子どもたちがのびのびと生活できる、規模の大きな複合型施設の建設にあたって、子ども関連の施設整備のみで15.4億円の費用が発生します。国庫補助金2.8億円の残りの費用は、借り入れと寄付によって工面することになり、一部費用を今回クラウドファンディングで募集することにしました。

建設中の建物の基礎部分を撮影した写真
2023年秋に着工。「新しい我が家」をイメージした建物が少しずつでき上がってきています

クラウドファンディングで募る費用は、児童養護施設6棟の、施設玄関部分の建築(1棟あたり500万円)に使う予定です。これは、帰ってくる子どもへの「おかえり」の気持ちが、玄関という子どもを迎える場所にあったらいいなとの思いからだそう。今回の挑戦が、子どもの「ただいま」を迎える取り組みになれば、と実施しています。

さらに、実籾パークサイドハウス設立を当初からサポートしてきた「OUR KIDS 基金」も引き続き運営されており、建設費用を賄う「建設サポート寄附」の他に、子どもたちの暮らしを支える「ライフサポート寄附」も募集しています。いずれも、個人や法人、団体を問わず寄付することができます。

中学生・高校生のスマホ所持100%など、「実籾パークサイドハウス」で実現したいことが書かれている
実籾パークサイドハウスでは、家というハード面留まらない、子どもたちがより良い未来を選んでいけるような環境を整えていきたいと考えています

藤堂さんがこれまで関わってきた子どもたちの中にも、一時保護所で落ち着かない日々を過ごしていた子どもがいると言います。虐待を受け、家族のもとに帰ることに不安を抱えていたある子は、毎日施設のガラスを割っていましたが、児童養護施設に入所して安全な居場所が見つかると落ち着きを取り戻したそうです。

“当たり前の生活の積み重ねこそが回復となります。味噌汁の煮立つ音とにおいが漂う夕暮れ、一人で泣ける個室、気持ちのいいベッド、そういう当たり前を取り戻す支援をしていきます。”

(OUR KIDS 基金 Webサイトより)

施設は2024年11月開業予定。実籾パークサイドハウスの取り組みを応援することは、そこに集う子どもたちはもちろん、すべての子どもたちの「当たり前」の権利や生活を尊重することにもつながるはずです。気になった方はぜひ、クラウドファンディングページや寄附サイトをご覧ください。

(写真提供:社会福祉法人 福祉楽団