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「自分らしい老いって?」を考える。誰にでも訪れる「老い」をテーマにした体験型の常設展示「老いパーク」が〈日本科学未来館〉にオープン!
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展示スペース全景

「老い」がもたらす感覚に、展示を通してポジティブに出会う

歳を重ねるなかで、誰にでも訪れる「老い」。「老い」と聞くと、自身の身体機能の衰えや家族の介護などの印象が先立ち、ネガティブな感情と結びつく人も多いのではないでしょうか。一方で、私たちは誰もが、緩やかな老いのなかで生きています。もしかすると「老い」は、みなで語り合うことのできる「共通項」でもあると、とらえることもできるのではないでしょうか。

〈日本科学未来館〉は2023年11月より常設展示をリニューアルし、そのうちのひとつに、誰にでも訪れる「老い」をテーマにした体験型展示「老いパーク」をオープンしました。

この展示では、科学技術の観点から、老いるなかで身体に起こる変化や、それらを助ける技術などを、6つの体験型展示や映像・パネル展示から学ぶことができます。「老い」とともに起こる現象を、さまざまな角度の展示から学ぶことで、老いに関する考えを深め、自分自身の老いについても見つめなおす機会を創出します。

〈日本科学未来館〉の外観(提供:日本科学未来館)

社会課題を「老い」「地球環境」「ロボット」の切り口から考える

新常設展示(提供:日本科学未来館)

今回のリニューアルでは、「老い」のほかにも、「地球環境」「ロボット」のテーマを切り口に、合計4つの常設展示が公開されています。最新の科学技術にもとづく各展示をつうじて、さまざまな社会課題との向き合い方や、解決に向けたヒントを探っていくための体験を、大人から子どもまで、来館者に広く提供することがねらいです。

館長の浅川智恵子さんは2021年の就任以来、新常設展示の企画開発に取り組んできました。展示の公開に際して、「4つの展示は『展示体験が未来の社会課題を自分ごととして考える第一歩になる』ことを目指しました」とコメントしています。

展示は、いま直面している課題はもとより、将来直面する可能性が高い社会課題を、最新の科学的知見とともに体験できるよう工夫しているそう。展示の最後には、来館者同士で意見を共有するスペースが設けられており、自分とは違った角度の意見や感想に目を向けながら、来館者自身が未来を考えるきっかけづくりを図ります。

身体に巻き起こる変化を学んで「老い」との付き合い方を探る

老いパークの展示風景(提供:日本科学未来館)

「老いパーク」では、多くの方が自覚しやすい目、耳、運動器、脳の老化現象を、6つの体験型展示で疑似的に実感していきます。現在わかっている老化のメカニズムや対処法、研究開発中のサポート技術など、老いを多角的かつ総合的に知ることができます。また、疑似体験や対処法の理解をふまえ、「老い」と向き合う方々の人生の捉え方などを知ることで、一人ひとりにとっての豊かな老いとの付き合い方や生き方のヒントを探ります。

同展示は、3つのSTEPから「老い」について考える構成になっています。STEP1「老いってなんだろう?」では、自然な経年変化である「老い」を、ほかの人々がどう捉えているのか、「老いの始まる年齢」をマッピングしたり、20年前と現代の高齢者の運動機能データを見比べながら、老いの定義について考えます。

STEP2「老いを体験しよう!」では、実際に、脳や目や耳、筋肉や関節などの運動器の老化をそれぞれのゲームやパネル展示で疑似的に体験しながら、それに伴ってくらしがどう変化するのか、老いとの付き合い方を含め考えることができるエリアです。

白内障による変化(二重・三重に見える、まぶしく感じる、黄色みがかかる)を体験できる「3つの○○なテレビゲーム」。視覚変化によってゲームが困難になることが体感できる(提供:日本科学未来館)

白内障による見え方の変化を取り入れたミニゲーム「3つの○○なテレビゲーム」、短期記憶や注意力などが低下し、覚えにくくなる点に着目した「おつかいマスターズ」など「老い」を体感できるユニークな展示6点が並びます。また展示には、「老い」によって起こる変化にどう向き合っているのか現時点での対処法や、今後実現していくであろう未来の技術についても併せて紹介されています。

今後、介護施設などでの運用を目指す、研究開発中のこども型見守り介護ロボット〈HANAMOFLOR(ハナモフロル)〉なども展示されている(提供:日本科学未来館)

STEP3「自分らしい老いって?」 では、STEP2での発見や気づきをふまえて「老い」を自分にひきつけて「自身の望ましい老い」について考えます。すでに老いを感じている方に「将来やりたいこと」を尋ねたインタビュー映像や、来館者自身が70歳になったときにやりたいことなど、「老い」は誰の人生の延長線上にもあり、そのうえで、さまざまな選択があることについて考える場を設けます。

インタビュー映像の展示風景(提供:日本科学未来館)

この展示の総合監修者である荒井秀典さん(国立長寿医療研究センター理事長)は、

老いることはすなわち生きることそのものだと思います。変化を受け入れ、上手に付き合っていくことも人生100年時代には必要かもしれません。(中略)この展示を通して、老いとの付き合い方を想像しましょう。今の生活を振り返ることにもつながるかもしれませんね。

とコメントを寄せています。

私たちの誰にでも訪れる「老い」。大人から子どもまで、体験型の展示のなかからポジティブに「老い」に出会い考えるいい機会になるかもしれません。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。