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紙とペンで「音声のないコミュニケーション」を楽しむ。筆談を広める〈mojicca〉クラファン挑戦中
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ひつだんのようす
筆談を広める活動に取り組む〈合同会社mojicca(モジッカ)〉

筆談でのコミュニケーションを日常にする〈mojicca〉

突然ですが、あなたは「筆談」をしたことはありますか? 筆談とは、書き文字によってお互いの意思を伝え合うコミュニケーション手法です。

音声言語に頼らないことから、「聴覚に障害のある人のためのもの」と思うかもしれません。でも、実は表情や身振り、手振りなどと並んで「手書き文字」による情報のやり取りも、人の会話を支えてくれる大切な手段の一つ。

筆談の中にある、日々のコミュニケーションを豊かにする可能性を、もっと広げたい。そんな想いで2021年6月に立ち上がったのが、三重県いなべ市の〈合同会社mojicca(モジッカ)〉です。

その主な事業は、音声のない「筆談カフェ」の運営や筆談を通じた研修・ワークショップ、筆談グッズの企画・販売。筆談を「気軽にアクセスできる手段」として普及させるべく、2021年10月24日までクラウドファンディングも実施し、資金を募っています。

聴覚障害の当事者・支援者から生まれた〈mojicca〉

〈mojicca〉は、3人のメンバーの偶然の出会いから生まれました。カフェ〈桐林館喫茶室〉のオーナーの金子文絵さん、イラストレーター・デザイナーであるカトウシンヤさん、そしてバリスタ・焙煎士の柴田恭兵さん。

金子さんは看護師・手話通訳者でもあり、カトウさんと柴田さんは聴覚に障害を持っています。

3人はSNSを通じて出会い、人と人が行うコミュニケーションの難しさや可能性について共有しました。それぞれ活動領域は異なるものの、「手話」「聴覚障害」など聞こえに関する共通点があったことから意気投合し、2021年3月に「筆談」に着目したユニットを結成。後に〈mojicca〉を設立します。

もじっかのさんにん
左から金子文絵さん、カトウシンヤさん、柴田恭兵さん

音声のない世界を楽しむ「筆談カフェ」

〈mojicca〉の活動の一つが、各地に出張して行う「筆談カフェ」です。筆談カフェは、筆談や手話、ボディランゲージによってのみ会話ができるカフェ。訪れた人はテーブルの上に置かれたノートや、身振り手振りなどを用いて互いにコミュニケーションをします。

この取り組みは、〈桐林館喫茶室〉での金子さんのアイデアが元になっています。同店はもともと珈琲やカレーが好評のカフェでしたが、2020年4月、新型コロナウイルス感染症によって休業を余儀なくされました。そのタイミングで店舗を引き継いだ金子さんがコンセプトを見直し、2020年8月から、音声のない筆談カフェとして運営しています。

オープンすぐの頃は、「筆談」「音声なし」と聞いて帰ってしまう人も多かったそうですが、今ではろう者や難聴者といった聴覚に障害のある方も増え、お客さまのおよそ3割が手話を使います。また地域にお住まいの方に加え、コンセプトに興味を持って遠方から足を運ぶお客さまも現れるなど、筆談によって広がる出会いや学びの可能性を感じています。

かいわがかきこまれたのーと
筆談カフェでお客さまが会話をしたノート

〈桐林館喫茶室〉で金子さんが得た経験をベースに、現在は〈mojicca〉として「出張筆談カフェ」を不定期で開催。さまざまな場所で筆談を体験できる機会を設けています。

訪れた方からは、​「すぐに伝えられないもどかしさと伝わったときの嬉しさを感じた」「鉛筆のこすれる音や車の音がいつもより響いていた」​など、筆談のおもしろさや楽しさを伺わせる感想が届いています。

筆談でコミュニケーションを豊かに

筆談カフェを運営しながら、「ただ書いてしゃべるだけ」ではない筆談の魅力に、3人は改めて気づいたそうです。

例えば、コロナ禍では会話をせずに食べる「黙食」が推奨されています。しかし、「黙食」はコミュニケーション機会を減少させ、人の孤立化を進めてしまう懸念もある。一方、筆談であれば、「黙食」でありながら目の前にいる人とのコミュニケーションを図ることができるメリットがあります。

ひつだんかふぇのふうけい

また、「授業中の秘密の手紙のようなワクワク感」「相手の言葉を受け止め、自分の言葉を分かりやすく伝える楽しさと難しさ」などを体験できることも、筆談ならでは。そうした魅力や、新しい価値観に気づける可能性を広く社会に伝えたいと考え、〈mojicca〉は「筆談を楽しく、面白く、世の中へ」をミッションに掲げて活動を進めています。

「筆談カフェ」以外の事業としては、企業などを対象にした筆談・手話の研修やワークショップを提供する「筆談ラボ」を展開。また、オリジナルグッズを開発・販売する「筆談ストア」を通じて、文字を活かしたアイテムも届けています。

うちあわせのようす
〈mojicca〉では、手話や筆談で打ち合わせをすることもあります

筆談を世の中に広めるため、〈mojicca〉は10月24日までクラウドファンディングにも挑戦中。目標金額の130万円を達成し、現在はネクストゴールである230万円に挑戦中です。

「筆談には、障害や福祉という枠にはまらない、新しい発見や体験価値があります。その面白さや可能性を広めるべく、私たちの活動にご支援いただけると幸いです」(金子さん)

筆談できる場所を求めている方はもちろん、そこに新しいコミュニケーションの可能性を少しでも感じた方は、ぜひ〈mojicca〉のサイトをご覧ください。