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「黙る」のコミュニケーションをもっと楽しく。ジェスチャー泥棒ゲーム『MUTERS』誕生
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ボードゲームにつかう、カードなどのキットがならべられている
音の届かない宇宙を舞台に、怪盗ロボット「MUTERS」になりきってお宝を奪い合う『ジェスチャー泥棒ゲーム MUTERS(ミューターズ)』。声を出さず、全身の表現のみでチームメイトにお宝の情報を伝えます

ジェスチャーで伝え合うボードゲーム『MUTERS』販売開始

ろう児・難聴児の教育の選択肢拡大を目指す〈NPO法人 Silent Voice〉が、広告や体験型のイベント企画・制作を行う〈株式会社人間〉と共同で、『ジェスチャー泥棒ゲーム MUTERS(ミューターズ)』を開発。2021年10月12日に販売を開始しました。

本作は、「ミュート(声を発さない)」状態で使うジェスチャーや秘密のサインを通じて、仲間に情報を伝えたり相手チームを騙したりするゲームです。口頭のコミュニケーションが制限され、「黙る」ことが推奨されるコロナ禍の状況でも楽しめるよう、マスクを着用したままや、一切声を出さないルール設定で遊ぶこともできます。

「黙る」という制約の先に広がる、新しいコミュニケーションの形

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなかで、「新しい生活様式」として定着したマスクの着用。聴覚に障害のある方にとっては、口の動きや顔の表情を見ながら相手の言いたいことが読み取りづらく、コミュニケーションの大きな壁となっていました。

一方で、「黙食」など声を出さないことが重視されたため、手話やジェスチャーなどの視覚的・身体的なコミュニケーションの意義が見直される機会にもなっています。

コロナ禍で制約として捉えられてきた「黙る」という行為を、ろう者・難聴者の視点を用いることで、新しいコミュニケーションを広げる一歩にできないか。そうした思いで開発されたのが、今回の『MUTERS』でした。

カードやジェスチャーをかきこむシートがセットされたじょうたい

音声に頼らず、情報を伝え合う

『MUTERS』では、4〜6人が2チームにわかれ、4×4の16マスに置かれた「お宝」(トレジャーカード)を奪うことで得るポイントを競い合います。

お宝の場所を知るために仲間からの情報を頼りますが、情報を伝えあう時間は声で会話をすることはできません。相手チームも同じお宝を狙ってくるため、その情報が示す意味を悟られないよう、ジェスチャーや事前に決めた「シークレットサイン」を駆使します。

6しゅるいのトレジャーカードがならべられている
動物・ごちそう・果物・スポーツ・絵画・名所と6種類ある「トレジャーカード」。参加者の年齢や文化によって使うカードを変えられるので、子どもから外国の方まで楽しむことができます
「つたえるやく」になったプレーヤーが、ジェスチャーをしているばめん
「伝える役」になったプレーヤーは、探すお宝を示した「ターゲットカード」を1枚引きます。その後、ジェスチャーと「シークレットサイン」を使いながら、仲間にだけわかるようお宝の場所を伝えます

『MUTERS』の特徴は、声を出さずにゲームを行うことができること。耳が聞こえる・聞こえないといった違いを持った人とも、筆談やジェスチャーのみでゲームを進めることができます。

また、ゲームで使うツールにはすべて日本語と英語の説明文が併記され、説明動画も視覚的に理解できるよう工夫されています。

伝わらないもどかしさや、歩み寄る大切さをより多くの人に

『MUTERS』を企画した〈Silent Voice〉は、ろう・難聴児専門の総合学習塾「デフアカデミー」などを運営するNPO法人です。メンバーは聴者とDEAF(聴覚に障害のある人)が1:1の割合で構成され、「聞こえる、聞こえない」という違いに向き合いながら、コミュニケーションの壁に向き合う事業を展開しています。

2020年12月には、聴覚障害のある方の日常を疑似体験するイベント「爆音コンビニ」を企画。大きな音の流れる店内で、マスクをして口元や表情が読めないなか買い物をする体験は、伝わらないもどかしさや諦めずに歩み寄る大切さなどを参加者に感じさせる機会になりました。この気づきをより多くの人に体験してほしいという思いが、今回の声を使わずに会話をするボードゲーム『MUTERS』の開発につながっています。

ゲームを開発するために、2021年3〜4月にはクラウドファンディングを実施したSilent Voice。目標金額の200万円を上回る282万円を達成し、151人から支援を得るなかで、音声ではないコミュニケーションへの広がりを期待する声が多く届いたといいます。

また、「大人がコミュニケーションを考え直す手段としても利用したい」という意見が寄せられたことから、プレイする対象を当初想定していた子どもから広げ、カードのテーマに幅を持たせるよう調整も行われました。

ボードゲームをかこむ、ねんれいもせいべつもばらばらの4人
さまざまな違いを超えて、コミュニケーションが生まれるように配慮されています

全身で表現し、じっくり観察するような意思伝達を味わえる『MUTERS』。これから年末に向けて、家族や友人と顔をあわせる機会にもぴったりのボードゲームです。

「黙る」を楽しみ、音声に頼らないことで広がるコミュニケーションの世界を体感してみませんか。