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誰もが楽しめる美術館の取り組みとは。東京都庭園美術館、東京都美術館、国立国際美術館のアクセスプログラム
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【画像】赤ちゃんを抱いている人と、隣でベビーカーを押す人
東京都庭園美術館での「フラットデー」実施の様子

誰もが安心して鑑賞できることを目指した取り組みが、全国の美術館で展開

美術館に行きたいけれど、実際行くことを考えると気が引けてしまう──。美術館へのアクセスに距離を感じる人がいるとしたら、どんな理由があるでしょうか。混雑している場所が苦手、静かにしないといけない空気感が息苦しい、赤ちゃん連れなので周りに気を遣ってしまう、足腰が弱いので段差があるか心配……。他にもさまざまな理由が、美術館から足を遠ざけてしまっているかもしれません。

近年ではアクセシビリティの向上を意識した、さまざまな取り組みが全国の美術館で行われています。〈こここ〉でも、これまでそうした活動を紹介してきました。本ニュース記事では、2025年7月以降に実施される、東京都庭園美術館、東京都美術館、国立国際美術館、3つの美術館での取り組みをご紹介します。

東京都庭園美術館|障害のある人も赤ちゃん連れの人も安心して来館できる「フラットデー」

東京都庭園美術館(東京都港区)は、朝香宮家の邸宅として1933年に竣工し、1983年に美術館として開館しました。アール・デコ様式の建物や当時の内装を残した空間の中で、展覧会が開催されています。また、日本庭園・西洋庭園・芝庭を備えた広い庭園も魅力のひとつ。庭園内には椅子やベンチが設置されていて、子ども連れでものびのびと過ごすことができます。

【画像】美術館の外観写真
東京都庭園美術館

そんな東京都庭園美術館では、バリアフリー化が難しい歴史的建造物での鑑賞しやすい環境づくりの工夫として、障害のある人も赤ちゃん連れの人も気兼ねなく来館できる「フラットデー」を2023年から設けています。

フラットデーには、「ゆったり鑑賞日」と「ベビーアワー」の2種類があります。「ゆったり鑑賞日」は、車椅子を利用する人や混雑した場所が苦手な人も安心して過ごせるよう、普段よりもゆとりのある環境で鑑賞できる日です。「ベビーアワー」は、赤ちゃんを連れた人が周りに気兼ねなく展覧会を鑑賞できる時間帯。通常はベビーカーが使えない美術館本館にも、ベビーカーのまま入館することができます。

【画像】車椅子を利用する人を案内する人
東京都庭園美術館での「フラットデー」実施の様子
撮影:井手大
【画像】作品を鑑賞する人たち
撮影:井手大

どちらのフラットデーも、入館人数を制限するので、ひろびろした環境で鑑賞できるほか、段差にはスロープを設置するため、車椅子やベビーカーでの移動がスムーズです。また、施設の利用や鑑賞に不安のある人には、サポートスタッフが対応します。

そのほか、フラットデー当日はアート・コミュニケータによる展覧会をめぐるツアーも開催(要申込み)。おしゃべりしながら作品鑑賞をしたい人は、フラットデーを利用してみてはいかがでしょう。

【画像】
「フラットデー」フライヤー2025年度版
グラフィックデザイン:BAUM LTD.

フラットデーに来館するには、事前にオンラインチケットの購入が必要です。詳細は東京都庭園美術館のWebサイトをご確認ください。

また、美術館のバリアフリーに関する情報をまとめた「ユニバーサルガイドブック」も用意されています。敷地内の段差や傾斜が記された地図や多機能トイレなど、館内の設備やサポート内容が載っていますので、気になる方は事前のチェックをおすすめします。

東京都美術館|「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025」

東京都美術館(東京都台東区)では、“すべての人に開かれた「アートへの入口」”を目指した取り組みとして、アート・コミュニケーション事業を2012年にスタートしました。

アート・コミュニケーション事業では、美術館を拠点にアートを介してコミュニティを育む「とびらプロジェクト」、上野公園に集まる9つの文化施設が連携してこどもたちが文化やアートに出会う機会をつくる「Museum Start あいうえの」、シニア世代が主体的で創造的に美術館を楽しめるプログラムを実施する「Creative Ageing ずっとび」、障害のある方のための特別鑑賞会や建築ツアーなど、さまざまなプロジェクトを展開しています。

【画像】美術館の展示スペース
東京都美術館「アート・コミュニケーション事業を体験する 2024」2024年
©中島佑輔

そして、アート・コミュニケーション事業の活動について広く発信することを目的に、2023年から夏の特別企画として「アート・コミュニケーション事業を体験する」が開催。今年で3年目の開催となります。

「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること『Museum Start あいうえの』12年と現在地」の開催期間は、2025年7月31日(木)~8月10日(日)。出品作家は、日本画家の森友紀恵さん、がかのか族(幸田千依と加茂昂とその息子によるアーティストユニット)、彫刻家の三輪途道さんの3組です。本展では、視覚に障害のある人も、ない人も、手の感覚を使って鑑賞できる作品があるほか、絵画の作品で触図の用意があるものあります。

【画像】犬の彫刻作品を触っている様子
三輪途道《沈黙の犬》
アーツ前橋「はじまりの感覚」2025 年
©木暮伸也

会場の後半では、上野公園の文化施設が連携し12年にわたって展開してきた「Museum Start あいうえの」のアーカイブ展示や、記録映像の上映、子どもも大人も楽しめる参加型のワークショップなどを実施。「Museum Start あいうえの」では、多様な子どもたちが文化や言語、障害による障壁を超えてミュージアムを楽しめるようなダイバーシティ・プログラムに取り組んできました。

【画像】作品の前で話をする人たち
東京都美術館「アート・コミュニケーション事業を体験する 2024」2024年
手話通訳付きイベントの様子
©中島佑輔

東京都美術館のバリアフリー・アクセシビリティ情報はこちらから。

また、会場では「とびらプロジェクト」で活躍する、アート・コミュニケータの「とびラー」が来館者を迎え、より作品の鑑賞を楽しむためのサポートを行います。〈東京都美術館〉を拠点に活動する「とびラー」の詳しい活動については、こここレポートをご覧ください。

国立国際美術館|「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」

国立国際美術館(大阪府大阪市)は、1977年に国内外の現代美術を中心とした作品を収集・保管・展示・関連する調査研究・事業を目的に吹田市の万博記念公園に開館しました。2004年に大阪市の中心部である中之島に移転。世界的にも珍しい完全地下型の美術館です。

当美術館では、誰もが鑑賞を楽しめる「ユニバーサルプログラム」の一環として、“泣いても、笑っても、お話ししても大丈夫”を合言葉にした、0歳からの美術館体験プログラム「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を2019年度から定期的に開催しています。

【画像】チラシ画像

当日は、講堂に集まって〈美術と絵本を考える会〉のメンバーが選んだ絵本の読み聞かせからスタート。その後は、実際に展示室で作品を見る前の準備運動として、スクリーンに映された作品の写真を見ながら、保護者も一緒に見つけたこと・感じたこと・思ったことなどをお話しします。そして、展示室に移動してから、コレクション展の作品をみんなで鑑賞。〈美術と絵本を考える会〉、〈子どもの手話(ことば)の力を育む「こめっこ」〉、(※注)、そして美術館スタッフが、ナビゲーターとして作品との出会いをサポートします。

2025年度は全8日の開催を予定。次回の開催は、7月30日(水)10:30〜11:50/13:15〜14:35/15:00〜16:20の3回(申し込み締め切りは7月16日)。対象は0歳~未就学の乳幼児とその保護者です。

注:〈NPOこめっこ〉のスタッフがナビゲートする回では、絵本の読み聞かせや作品鑑賞の際など、全ての場面に手話が入ります。きこえない・きこえにくいお子さんだけでなく、きこえるお子さんの参加もできます。〈こめっこ〉の回は美術館のWebサイトをご確認ください。

【画像】床の座布団の上に座って絵本の読み聞かせに参加する子どもと保護者たち
国立国際美術館での「ちっちゃなこどもびじゅつあー」実施の様子
【画像】赤ちゃんを抱っこしながら作品を鑑賞する人たち
コレクション展でスタッフと一緒に自由に鑑賞している様子

国立国際美術館の「ユニバーサルプログラム」では、「ちっちゃなこどもびじゅつあー」以外にも、視覚だけに頼ることなくほかの感覚器官も働かせて鑑賞を楽しむプログラム「みる+(プラス)」の実施や、鑑賞サポートツールの提供などをも行っています。

事前予約が必要なプログラムも。詳細・お申し込みはInfo欄をチェック!

これまでさまざまな理由で美術館に行くことを諦めてしまっていた人も、ぜひこれらのプログラムに参加してみませんか? それぞれの詳細や参加方法は、Information欄のWebサイトから情報をご確認ください。